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【ポリアモリー】私の恋人達の、初めての顔合わせ
きのコ
公開日|2022.10.19
更新日|2022.10.19
今回は、以前からの私の恋人であるマサに、新しい恋人であるミツルを引き合わせた時のことについて書いてみたい。
その日、私は朝からそわそわと落ち着かなかった。
私が幹事会の一人として開催している、ポリアモリーに興味がある人たちのオフ会の日だ。
ミツルとのお付き合いを始めて間もなく、私は彼をこのオフ会に誘うことにした。その会には、マサも参加することになっていた。
ポリアモリーである私にとって、新しい恋人ができた時にいちばんドキドキするイベントが、なんといってもこの「恋人同士の顔合わせ」。モノガミーのお付き合いであれば、恋人を自分の両親に紹介する時のようなドキドキ感、といったところだろうか。
自分と関わりが深い、いわゆる「身内」の人間同士の顔合わせ。お互いのことを気に入ってくれるだろうか、どんな話をすれば場が和むかな、共通の話題はあるだろうか……。ポリアモリーなお付き合いを始めて数年になるけど、何度経験しても、こればかりはなかなか慣れない。
じつは、ミツルをオフ会に誘うことについては、若干の不安も感じていた。
私というポリアモリー当事者とお付き合いすることになった彼に、ポリアモリーについてもっと知ってほしい。彼がポリアモリーについてどう考えているのかを知りたい。でも、私自身との恋人としての関係がまだ短いのに、ポリアモリーについてさまざまな意見が交わされるオフ会という場に彼を連れてくるのは、時期尚早だったりしないだろうか。彼が混乱したり、私と付き合うことにプレッシャーを感じたりしないといいのだけれど……。
それに、いち個人でありポリアモリー当事者の一人である私と、オフ会の幹事会の一人である私とでは、同じ人間であっても、微妙にその顔は異なる。
恋人といるときの私は、プライベートな私。オフ会にいるときの私は、幹事という立場もあって、どちらかというとパブリックな私。プライベートな関係である恋人に、パブリックな顔を見せることには、ちょっとくすぐったさもある。
そんなこんなで私の中には、いろんな緊張や不安がまぜこぜに渦巻いていた。
ミツルは少し早めの時間に、差し入れのクッキーの箱を抱えて来てくれた。
彼がマサとにこやかに挨拶をしている様子を見て、まずはちょっと安心。他の参加者もぞくぞくと到着し、いつものようにオフ会が始まった。
ポリアモリー当事者の人も非当事者の人も分け隔てなく、皆にぎやかにトークを繰り広げる。「ポリアモリーは、地方より都会での方が実践しやすいのでは?」という意見に頷いたり「彼女が一人いるけど、ポリアモリーを始めたい」というお悩み相談について皆で考えたり。マサもミツルも、同じテーブルで熱心に皆と語り合っている。
正直、私自身はあまりにも緊張しすぎて、司会としてどうイベントを進行したかあんまりよく覚えていないけど、それでも皆のあいだでそれからそれと話が尽きることはなく、今回のオフ会も盛況のうちに終わることができた。
オフ会のあと、居酒屋に場所を移しての懇親会も大いに盛り上がり、やっと解散した頃にはすっかり夜も遅い時間になっていた。
私とマサが帰り支度をしていると、ミツルが「送るよ」と声をかけてくれた。ドライブ好きな私とマサにとっては、願ってもない申し出だった。
走り出した車の中で、彼らの共通の趣味である車の話に花が咲いているのを聞きながら、私は言いようのない安心感をおぼえた。
今まで、複数の恋人がいたことは何度もあったけれど、その恋人たちの間につながりができたことは、意外なことに今までなかった。
以前の恋人も、もちろんマサと私の恋人関係は知っていたものの、私抜きで彼らが親しく友情をはぐくむといったような距離感ではなかった。それを特に寂しいとか悲しいとか思っていたわけではなかったものの「もっと皆でわいわい過ごせればいいな」という気持ちは、当時も私の中にあったような気がする。
「自分の恋人たちが仲良くしていると嬉しい」というのは、ポリアモリーならではのシチュエーションかもしれない。しかし「自分の友人たちや親たちが仲良くしていると嬉しい(逆に、仲が悪いと板挟みになって苦しい)」というのは、ポリアモリーやモノガミーに関係なく、多くの人がもつ感覚なのではないかと思う。
夜の高速道路を車窓から眺めながら「マサとミツルが仲良くしてくれてよかった。もしかしたら、ポリアモリーとして今がいちばん幸せかもしれない」と、私は胸の中にあたたかいものを感じていた。
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