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ただ傷つけるだけの初恋でした。
耽溺
公開日|2022.09.04
更新日|2022.09.04
※失恋でも復縁でも無い、なんとも言えない話です。思いの丈をあるがまま綴りました。
ハッピーでもバッドでもありません。強いていえばメリバかビターか....そんな感じの話です。
スカッとする話や幸せな恋愛話が読みたい方は、ブラウザバックをオススメします。
僕があの人と出会い、愛を育んだのはインターネットだった。
ただ寂しかった。そんな僕とあの人は、まるで惹かれ合う様に出会い、そして直ぐに恋をした。
いつも通りの日、だったはずだった。
僕は、たまたま出会ったあの人の不思議な魅力に誘われるが儘、「友達になって」と伝えて。
息が合うのか、僕らは何度も取り留めもない話をする夜を重ねた。
お互い、あまり良い環境で生きてきた訳じゃなかったから。
今思えば、一種の傷の舐め合いに過ぎなかったのかもしれないけど。
それでも、正直でいられる時間がどうしようもなく大切だった。幸せだった。
出会ってから少し経ったある日。
あの人から「好きだ」と伝えられた。僕はどう答えていいのか分からなかった。
だって僕は「好き」を知らなかったから。初恋すら未だの、おこちゃまだったから。
どう返していいか分からなかった。
それを言い訳にするつもりでは無いけれど、僕はあの人の好意に上手く答えられなかった。
不用意にあの人を傷つけた。この時からもう既に、僕はあの人と居ちゃいけなかったんだと今は思う。
外面だけは良い子にしていた。だから好意を伝えられる事自体は特段珍しい事でもなかった。
でも、ホントの僕を知って尚、想いを伝えられたのは初めてだった。
どこかエスパーみたいに鋭いあの人。誰にも見せなかった僕のホントをいとも容易く見つけた人。
下手に断ったらもう会えない。でも、好きも愛も知らない僕が、あの人を受け入れてもいいのか。
そんな事ばかりが頭の中を渦巻いて、最も大事なあの人を蔑ろにしてしまった。
この事は、今でも悔いても悔やみきれない。
僕は伝えた。好きも愛も知らないんだと。でもあなたと会えなくなるのは嫌なんだと。
凄く我儘を言った。千年の恋も冷めるような、愛想を尽かしてしまうような事を。
でもあの人は、そんな僕を受け入れた。
「どんなに時間がかかってもいい。自分を好きになって欲しい。」と。
そうして僕はあの人と付き合う事になった。
妥協を重ねた始まり。思えば、こんな恋が上手くいく訳もなかったんだ。
あの人と過ごす時間は、まるで夢みたいだった。
とてもあたたかくて、甘くて、キラキラとしていて。
言葉を重ねるだけで、嫌いだった夜がずっと前から愛おしかったモノの様に思えて。
ふわふわと宙に浮かぶような心地だった。ある種の盲目。僕は本当に愚かだった。
僕はあの人を好きになるまで、そう時間はかからなかった。
多分、声をかけたあの時から、僕はあの人に惹かれていたんだろう。
でも僕の好きが芽吹くのはあまりに早かったから。
伝えた好きは「信じられない」と跳ね除けられた。
あの人には、本当に好きな人がいた。
それは、僕に対する好意とは比べ物にならないぐらいに。
話に聞くその人は、僕なんかとは全く違う。凄く出来た人だった。
元恋人さんの話を聞く度、僕は胸がぎゅっと締め付けられるみたいに苦しかった。
でも、話をするあの人はとても幸せそうだったから。
止めろだなんて言えなかった。あの人が幸せならそれで良かった。
敵わない事を実感する度、心は傷ついてどんどん膿んでいった。
それを見かねた友人が、僕を心配してくれて。眠れない夜は友人と色んな話をして過ごした。
あの人と話したいな、とも思ったけれど。
真夜中に呼び出すなんて我儘が出来るほど、僕には愛されている自信が無かった。
自分のせいであの人の健康を害するような真似は、絶対したくなかった。
夜は友人とふたりきりで話をする。それがあの人を不安にさせてしまったようだった。
「あなたは自分の恋人なのに」
「どうして二人きりで話をしたりするの」
「やっぱり好きなんて嘘だったんだ」
そう、あの人に言わせてしまった。あの人を傷つけてしまった。
僕は何度も謝って、「好きだよ」と伝えたけど。
傷ついたあの人はすっかり心を閉ざしてしまって。
これ以上傷つけられたくないと、あの人から言葉のナイフを向けられる事も徐々に増えてった。
罵倒される度、昔あの人に肯定してもらった自分の全てが崩れていくような感覚がした。
元々、自信なんてなかった。低い自己肯定感の塊のような存在が、ホントの僕だった。
それを良い外面で覆い隠して、寂しい気持ちを誤魔化し続けて。そうやって生きてきた。
そんなホントを肯定して、愛してくれたのがあの人だったから。
僕の一番柔くて弱いところ。あの人はそこを暴言という武器でずたずたに引き裂いた。
嫌い。そのたった一言が、僕の根深いトラウマを掘り起こしてしまった。
「やっぱり僕じゃダメだったんだ、誰かを不幸にすることしか脳が無いんだ」
改めてそう認識して、僕は自分が更に嫌いになった。愛するあの人を、苦しめてばかりの自分が。
嗚呼、これじゃもっとあの人を傷つけてしまう。僕の所為で、あの人は本当に好きな人と添い遂げられない。
幸せになって欲しかった。大嫌いな自分と、愛するあの人が一緒に居て欲しくなかった。
僕はあの人に向けてボイスメッセージを送った。
別れて欲しいという、今までで一番の我儘をしたためたメッセージを。
今、僕はまだあの人と付き合ったまま。
メッセージを送った後、「誤解があった。怖がらずに、もう一度だけ会って欲しい。」と言われて。
あの人を愛しているから、断れずに僕はあの人と話す事を決めた。
結局、絆されて何もかもはうやむやになった。
でも、話し合いの中で1度も、「罵倒の全ては勢いのまま口をついて出た嘘」だとは言われなかった。
これからも、僕はあの人からの「嫌い」に脅えていかなきゃいけない。
もう、あの頃の幸せな気持ちは一切無くて。
身を焦がすような罪悪感と劣等感に苛まれながら、僕はこれからもあの人と寄り添うのだろう。
ある意味では、「自分の感じた苦痛を味わわせてやる」と言っていた、あの人への償いになるのだろうか。
死んで欲しいと思うほど嫌いな馬鹿な子供には、丁度いい罰なのだろうか。
傷つけるだけの僕には、もう分かりはしない。
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