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私だって、花束みたいな恋をした
塩すずめちゃん
公開日|2022.09.22
更新日|2022.09.22
『花束みたいな恋をした』を一緒に見に行った友達Aのエピソード。
高校の合格発表で自分の番号を探すその人の横顔に一目惚れをした。
入学してからしばらく経ち、通学バスで再び彼を発見した。
バス停で待ち伏せをして連絡先を聞いた。
こつこつメールでアピールして、夏休みが明けた2学期に告白。晴れて恋人になった。
同じ高校の制服が見えなくなったのを確認して、どちらからともなく手を繋いだ帰り道。
お揃いのマフラーを買いに都心へ出かけたクリスマス。
こっそり部屋を抜け出して、ホテルの周りを散歩した修学旅行。
クラスによって色が違うお互いのハチマキを交換した文化祭。
携帯の電池に貼ったプリクラ、“了解”代わりの顔文字、私だけが知ってるほくろ
全てが輝いて見えた。
高校3年の春、駅のホームで別れ話をした。
家族以外に初めて愛してくれる人ができて、どんどんワガママになっていく自分にビビってしまった。
彼をホームに残して電車に乗り込んだ。
ベンチで下を向いて涙を流す彼の姿が目に飛び込んで、思わず自分も涙が溢れた。
自分から切り出したものの、心のどこかで彼が引き止めてくれることを期待していた。
発射のベルが鳴り、電車の扉が閉まりかけているその瞬間、
誰かが電車の中に飛び込んできた。
ハッと顔を上げると、たまたま急いで乗ってきた、学年主任で保健体育の岡本先生だった。
田舎の急行なのでその後30分電車は止まらず、なぜ泣いているのか聞かれ、
保健体育的知見で慰められ続けたらしい。
Aちゃんの『花束みたいな恋をした』は、岡本先生によってぶち壊された。
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