意外と知らない?ジャニーさんの性的虐待問題への国内と海外の反応の違い

昨今、webやSNS上でちらほら目にするようになってきた、ジャニーズ創業者である

故・ジャニー喜多川氏(ジャニーさん)の性的虐待問題。

3月にはドキュメンタリー番組がBBCから公開され、4月12日には元ジャニーズjr.による顔出し会見が行われました。

しかし、今回のジャニーさんの性的虐待に関連した報道は国内メディアではほとんど報道されていません。

一方で、海外メディアではかなり早い段階から積極的にこの問題について報道されています。

話題としては知っている方も多いとは思いますが、国内と海外の報道熱にここまで大きな差があることを疑問に思う方もいるのではないでしょうか?

政治や外交問題であればここまで国内と海外の報道の差は感じないはずなのですが。。。

そこで、今回は国内外の報道に大きな差が出ている理由と、なぜ国内に比べ海外で性的虐待が苛烈に問題視されるのかを考えてみました。

お断りとして、性的虐待は許されるべきことではないという考えのもと執筆したことを添えさせていただきます。


性的虐待報道の発端は海外メディア作成のあるドキュメンタリー番組



まずは、報道熱の違いを考える前に、報道の一連の流れを整理していきましょう。


BBCが公開したドキュメンタリー番組にて衝撃の事実が発覚

今回の一連の報道はBBC:英国放送協会(イギリス公共放送)が3月に公開したドキュメンタリー番組

『Predator:The Secret Scandal』(プレデター:Jポップの秘密のスキャンダル)が発端でした。


かなりショッキングな内容ではありましたが、インタビューを受けた当事者はジャニーさんに対する感謝も語っており、ファンでもない一般の視聴者には異様な光景にうつるかもしれません。


ジャニーさんの性的虐待に関しての唯一の記者会見

その後、4月12日に日本外国特派員協会にて「カウアン・オカモト氏(ジャニーズJr.時代は岡本カウアン)」による顔出し、質疑応答ありの会見が行われました。


カウアン氏は会見を開いた理由として、

"日本のメディアは、残念ながらこの問題について極めて報じにくい状況にある。BBCが報じたように外国のメディアなら取り上げてくれるのではと言われ、この記者会見を受けることになりました"と発言しています。


引用:【全文】親には「辞めてからもずっと言えていなかった」 元ジャニーズJr.がジャニー喜多川氏からの性被害を語る 


過去にも噂されていた、ジャニーズの性的虐待問題



実はジャニーズでの性的虐待は1960年代から度々報道されていました。

直近の実名での告発は1980年代に元ジャニーズの故・北公次氏が著書『光GENJIへ』にて、中谷良氏が著書『ジャニーズの逆襲』で記しています。


1999年には週刊文春がジャニーさんの性的虐待を報道。

その後裁判まで発展しましたが、最終的には性的虐待が認定される形で結審しました。


週刊文春からすると長い報道がようやく大きく日の目を浴びたとも言えるでしょうか。


ジャニーさんの性的虐待に対する国内メディアと海外メディアの報道の差


つづいて、今回公開されたドキュメンタリー番組と記者会見に対し、国内外メディアの反応の違いをまとめてみました。

まるで自国の問題かのように取り上げる海外メディアのジャーナリズムに感心させられる一方で、国内との報道量の差に驚きを隠せませんでした。


国内メディアの反応

先述の通り週刊文春は1999年からジャニーさんの性的虐待の報道を続けて来ました


その他、ドキュメンタリー番組が公開された時点で反応したメディアは、朝日新聞GLOBE+、PRESIDENT、FRIDAYくらいでしょうか。


その後、会見が開かれた同日(4/12)に共同通信、NHKが、翌日に国内大手新聞社4社が1度、報道しました。(毎日、日本経済新聞は共同通信の記事を朝刊掲載)


しかし、日本の民放ではこの時点でも報道はありませんでした。

海外メディアでの反応

一方で、海外ではかなり白熱して報道されています。


ざっと調べただけでもドキュメンタリー番組制作元のBBCをはじめ、CNN(アメリカ)、AP通信(アメリカ)など世界中に基地局を多数持つ通信社が即座に反応を見せました。


また、ニューヨーク・タイムズ(アメリカ)、The Guardian(イギリスの大手新聞社)、The Variety(アメリカエンタメ業界雑誌)、Rolling Stoneブラジル版(アメリカ発の音楽カルチャー雑誌ブラジル版)など多数のメディアが繰り返し掲載しました。

ちなみに、会見内容全文は上記の引用元より閲覧可能となっています。


かなりセンシティブに語られているため、苦手な方は少し心構えを整えてから閲覧した方が良いかもしれません。


ジャニーさんの性的虐待問題、日本ではなぜ炎上しないのか、洗脳なのか?

心的状況と脳科学的で考えてみた






これまで何度か明るみに出ているジャニーズにおける性的虐待問題ですが、実は日本ではほとんど報道されないまま終わっています。


それゆえに、炎上らしい炎上もみられず、問題視されることもなく芸能界という狭い世界の話として片づけられてきました。

どうやら、これにはいくつかの理由がありそうです。

ジャニーズという巨大な組織の特性も踏まえながら、ジャニーズタレントに起こっていたと考えられる心理的な状況などを脳科学から考えてみました


また、子どもへの性的虐待において度々使用され、海外で非常に問題視されているグルーミングという手口の特性もご紹介しながらなぜ炎上まで至っていないのかも考えてみたいと思います。


日本のエンタメはテレビが主導してきたという事実

まず、炎上しない1つの大きな理由としてテレビとジャニーズの繋がりが挙げられます。

日本ではごく最近に至るまでエンタメの最前線はテレビでした。

そして、日本のテレビの成長にはジャニーズが大きく関わってきたことは間違いありません。

業界として「ジャニーズ枠」という用語が存在するほどにテレビ業界に影響力があり、ジャニーズが出ると視聴率がとれるというのは事実です。


民放のスポンサーである企業CMにもジャニーズが多く起用されているため、下手に報道するとスポンサー撤退の可能性もあり、民放にとってはまさに死活問題となることは想像に難くないと思います。


ジャニーさんの性的虐待を報道してジャーナリズムを追及するよりも、ジャニーズの出演が減ることを嫌ったという見方をするとテレビというメディアでの報道は必然的に減ることになります。


そのため、炎上していない、またはテレビで報道されないため炎上しているように見えないという現象が起きているのではないでしょうか。

もっとも、SNSやwebメディアが発達した今では海外で大きく報道されていることは国内にいても知ることができるわけですが。。。




ジャニーズのイメージ戦略

また、ジャニーズの所属タレントがメディアにて日常的にジャニーさんへの感謝の言葉を発していたことで、性的虐待など存在しないという世間のイメージが構築され、国内で炎上しづらい状況をつくった理由の1つになると思います。


洗脳なのか?という疑問が出るかもしれませんが、確実に洗脳されているとはいえません。

しかし、洗脳に非常に近い状態であったとは言えるでしょう。


具体的には、脳の認知的な状況としては間違っていることを正当化しようとする、認知的不協和という状況になっている可能性が示唆されます。


心理的に「断らないほうがデビューできる」という思いから「活躍するためにはやって当然」という、ほんとはダメかもしれないけど、やっても悪いことではないというような考えに陥っていた可能性は高いのではないでしょうか。


性的虐待につきまとうグルーミングという手口

また、子どもへの性的虐待を行うための関係性構築の手口として、「グルーミング」というものがあります。


日本ではほとんど馴染みがなく、日本語訳もない言葉ではありますが、海外においては子どもと大人の関係性の構築方法として非常に問題視されており、「チャイルドグルーミング」と呼ばれることもあります。


特性上、芸能界はその温床となりやすく、海外における子どもへの性的虐待においては常に意識され、危険視されてるワードです。


グルーミングとは「ターゲットを絞り込んで接近手段を確保し、被害者を孤立させ、被害者からの信頼を得てからその関係性をコントロールし、2人の秘密として隠蔽する」ということになります。


子どもから信頼を得てから実行に移すため、悪いことをしていても子どもには悪いと映らないことが多く、我慢すれば認めて貰えるなど精神的優位性を常に保つことができるという非常に危険な側面が存在します。


当たり前ですが、ジャニーズはジャニーさんの会社です。(経営的な意味でも)


誰をメディアに出演させるのかはジャニーさんの一声で変わるとも言われており、所属したタレントはジャニーさんから信頼を得ることが活躍する近道になります。


結果として活躍すると過去の出来事として完結してしまい、売れるための必要悪だったと納得してしまってもおかしくありません。

むしろ、プロデューサーでもあるジャニーさんに対して活躍の場を与えてくれたこと、自分たちにスタイルを確立してくれたことを感謝することで性的虐待のような出来事も含めてを正当化している様にも思えてなりません。


なぜ、海外では著名人の性的虐待は報道が過熱するのか




海外では日本よりマイノリティに対しての理解度が高い

結論としては同性愛やLGBTQ+に関しては日本より明らかに理解され、許容されているということが大きいと考えられます。


海外では性的嗜好は尊重されるべきものとされる一方で、未成年、特に知識の少ない年代に対して同性愛を強要することは全くの別物であり、許されるものではないとの意見が強いです。


具体例としては過去にマイケル・ジャクソンやジミー・サビルなど、どんな大物であっても告発の元に報道されてきました。

性的マイノリティに寛容であるからこそ、グレーゾーンはなく権力に屈しないというジャーナリズムの規模の違いが1つの大きな理由であると言えます。


報道の自由

もう1つの大きな違いとして、国内メディアと比べて圧倒的にしがらみが少ないということも理由となってくるでしょう。


特に今回ドキュメンタリー番組を発表したBBCは過去に多くの性的虐待問題に対して報道しており、国際的なジャーナリズムが浸透しているメディアです。


他にもCNN、AP通信などは世界中に情報網が張り巡らされており、どこかの国に依存するというスタイルをとっていないことも海外での報道が過熱しやすい理由と言えます。


海外の反応からみる日本のメディア




日本は性的虐待問題に対して後進国なのかもしれません


海外メディアからは繰り返し報道しない国内メディアや全く報道しない民放に対して首をかしげる意見も少なくありません

次の被害を出さないために、数多く報道し、社会の問題として認識することが報道の本質であり、重要であるという海外メディアの声は受け入れる必要は十分にあるでしょう。

日本には性的な問題を人前で話すことはタブーであるとされている側面があります。

また、被害者にも原因があると叩く、性被害は恥ずべきことだという風潮がまだ存在していることは事実であり、大きな問題です。


性的虐待を増やさないためにも気をもって声を挙げた当事者を社会全体で救うべきであり、被害者中心の取り組みがなされるべきという海外の声を国内にも広めていく必要があるのかもしれません。


まとめ

今回はジャニーさんの性的虐待報道に対して、国内外での報道の違いについて考えてみました。

国内での報道に関しては一定の事情はあるにせよ、マスメディアのあり方としては考えさせられるものがあったかもしれません。


数年前に日本でも聞かれたMe Too運動を覚えていますか?
国内ではあまり聞かれなくなりましたが、海外ではいまも続いています。
というより、性犯罪に対してもっと声を上げやすくなり、性犯罪がなくなるまで永遠に続く運動です。

性的虐待のような非常に繊細な問題に対し、声を上げやすい社会と被害者を中心とした救援活動こそが日本が性的問題に対して初めて向き合えたといえるのかもしれませんね。

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