南青山の小さなバーからはじまった、二人の運命

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行きつけの青山のバーで4回見かけたカップルの妄想。

(フィクションです)



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南青山の落ち着いた裏通りに、ひっそりと存在するバー「夜影」。

その店主でありバーテンダーの村上さんは50代半ば、グレーがちな髪に穏やかな笑顔を持つ男性。




元々は経済関係の仕事をしていたが、カクテル作りが趣味で、その腕前が評判になり転職。彼の作るカクテルは単なるドリンク以上に、人々の心を癒す魔法とも言える。


木製のカウンターに座っているのは佐藤という男性。40代後半で、スマートなスーツと疲れ知らずの表情が彼の職業を物語っている。しかし、その瞳には久しく心からリラックスしたという表情が見えない。


「村上さん、今日はもう少し甘めの何かを。」

村上さんは微笑んで、手際よくカクテルを作り始める。



ドアが軽く開き、店内に新しい顔が現れる。美容師のアスカ、30代後半。

彼女は明るい笑顔と人懐っこい性格で、美容室での人気も高い。しかし、彼女自身は密かに自分の美容室を持つという夢を抱いていた。

「こんばんは、村上さん。今夜はどのカクテルがおすすめですか?」



「それならば、この『青山の夜』を。」村上さんは二杯のカクテルを前に置く。暗赤色の美しい液体に、炭酸の細かい泡が浮かんでいる。

「これは美味しい…何か懐かしい気持ちになりますね。」佐藤が言う。

「私もそう感じました。」アスカは佐藤に向かって微笑む。

村上さんは二人の交流を静かに眺め、心の中で何かを感じ取る。

「お二人にはこれから何が起こるのでしょうか…」と、村上さんは独り言のように呟く。


数週間後、アスカと佐藤は再び「夜影」で顔を合わせる。この時は偶然ではなく、前回の会話がきっかけで予定を合わせていた。




「こんばんは、アスカさん。また会えて嬉しいです。」佐藤が挨拶する。

「佐藤さん、私も楽しみにしていました。」アスカが応える。




村上さんは二人の会話を耳にし、カクテルを作りながら提案する。

「お二人、もし興味があれば特製のペアカクテルを作りましょうか。」

「それは面白そうですね。」アスカが興味津々で答える。


ペアカクテルを前に、アスカは自分の夢について話し始める。

「実は自分の美容室を持つのが夢なんです。」

佐藤は感心しながら聞き、「それは素晴らしい夢ですね。私はIT企業を経営していますが、新しい事業で美容やファッションにも進出したいと考えていました。」

「本当ですか?それなら、何か協力できるかもしれませんね。」


数日後、二人は正式にビジネスの話を始める。




美容室のオープンが近づく一週間前、アスカと佐藤は重要な話題に突入した。それは美容室の名前について。

「ルナっていう名前、どうですか?」佐藤が提案する。


「ルナ... それは素敵な響きですね。でも、何か特別な意味がありますか?」


「実は、"Luna" はラテン語で"月"を意味します。月は新しいサイクルや変化、成長の象徴ですよね。これから始まる新事業として、それらの意味がぴったりだと思いました。」





「それは素敵ですね。月は女性にもよく関連づけられるし、美容室はそういった場所でありたい。ルナ、いいと思います!」


この命名のエピソードも、後日「夜影」で村上さんに語られた。村上さんは微笑みながら言う。

「月にも様々なフェーズがありますが、お二人のビジネスもまた新しいフェーズへと移行しているのですね。おめでとうございます。」



佐藤の会社が出資し、アスカが経営と技術面で主導する形で、美容室「ルナ」が誕生することになった。

「これからが本当のスタートですね。」

「そうです、佐藤さん。これからよろしくお願いします。」

村上さんは遠くで二人の成功を心から祝福し、「お二人の未来がどうなるのか、とても楽しみです」と心の中で微笑む。



8年後…


「ルナ」が閉店時間を迎え、アスカは店内の照明を落とした。ちょうどその時、スマホが振動する。佐藤からのLINEメッセージだ。

「今夜、"夜影"で祝杯をあげませんか?」

アスカは溜息をつきながら微笑む。「行きましょう」と返信する。





村上さんが作るカクテル「青山の夜」を前に、佐藤が話を切り出す。

「ルナが成功して、本当に嬉しいです。この8年間、多くのことを学びました。」

「私もです、佐藤さん。あなたがいなかったら、ここまで来られなかったでしょう。」


佐藤はアスカに目を向け、深く吸い込む。「アスカさん、いつもビジネスの話ばかりで申し訳ないのですが、もしよろしければ、個人的な食事にでも行かないですか?」

アスカは少し驚くが、その瞳は微笑んでいる。


「それは嬉しいお誘いです。でも、お互いに大事な人がいますよね?」

「確かに、それはあります。でも、ビジネスとは別に、人としての関係も深めていけたらと思っています。」




数週間後、二人は高級なイタリアンレストランで晩餐を共にする。テーブルには美しい料理とワインが並び、ロマンティックな照明が二人を照らす。

「このレストラン、素敵ですね。」アスカが言う。

「アスカさんが喜んでくれるといいなと思って選びました。」佐藤は答える。

食事を進めながら、二人は家族のことや趣味、未来の夢について語り合う。その瞬間、佐藤とアスカの間には新しい気持ちが生まれ、しかし、その気持ちはまだ言葉にできない何かだった。


レストランを出た後、二人はタクシーで家路につく。席に座りながら、アスカが低く呟く。

「今日は素敵な時間でした、佐藤さん。」

「私も、アスカさん。ありがとうございました。」



その後の沈黙は、言葉にできない新しい感情で満たされていた。

全ては、あの青山の小さなバーで交わった一杯のカクテルから始まった。

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