失恋同士

職場の先輩、「いつまでメソメソしているんだ」

私は結婚を考えていた彼女にフラレて以降、ずっと落ち込んでいた。

先輩、「新しい彼女を作れよ」

私、「そんな気になりません」

先輩、「今日、仕事が終わったら皆で相席屋へ行くから、お前も付き合え」

私、「相席屋なんてイヤですよ」

先輩、「誘っているんじゃない、これは命令だ」

先輩は上司でもあるため、命令となれば後輩で部下でもある私は従わなくてはならない。

相席屋で知り合ったのが3人組の女性。

先輩、「お前、どの子が良い？」

私、「いません」

先輩、「右の子はお前のタイプじゃないか」

すると、同期入社の同僚Ａ君が、「真ん中の子は、別れた元カノに似てるじゃない」

「似てないよ」とは言ったが、真ん中の女の子を見た時、結婚を考えていた元カノに似ていると思った。

上司、「だったら、お前は真ん中の子な」

私、「えー！！」

上司、「これは命令」

私、「相席屋に来てまで命令は無いですよ」

相席屋に入って30分ほどすると尿意を催したため、トイレへ行くと女の子が泣いていた。

用を足し終えトイレから出ると、女の子はまだ泣いていた。

先輩達がいる席に戻ろうとしたのだが、泣いている子が気になり声を掛けてみた。

私、「どうしたの？」

女の子、「友達が失恋して落ち込んでいる私を励ますために、ここに連れて来てくれたのだけど、皆が盛り上がるほど自分は落ち込んでしまうんです」

その子の言うことがメッチャ分かる。

私、「僕も同じだよ。結婚を考えていた女性にフラレ、落ち込んでいたら職場の先輩に無理やり、ここに連れて来られたから」

先輩達がいる席に戻ると

先輩、「楽しめよ」

私、「はい」

とは言ったものの、先ほど泣いていた女の子ことが気になり、その子を見ると目が合った。

場をシラケさせたら悪いため作り笑顔をすると、その子も作り笑顔をしていた。

先輩、「ライターはある？」

私、「ありません、買って来ます」

ライターを買いに席を外れた私が気になるのは作り笑顔の彼女、ライターを買いに相席屋を出ると雪が降っていた。

ライターを買って相席屋に戻ると、作り笑顔の彼女が外を見ていた。

私、「雪が降って来たね」

女の子、「そうですね」

私、「元カレと雪の思い出はあるの？」

女の子、「思い出そうとしているのだけど・・・」

私、「僕も元カノとは雪の思い出だけが無いんだ」

女の子、「・・・」

私、「良い出会いはあった？」

女の子、「ないです」

私、「だったら、今度、雪を見に行かない？」

女の子、「えっ！？」

私、「失恋同士で雪を見に行かない？」

女の子、「でも・・・」

私、「そんな気にはなれないよね、ごめん、忘れて」

先輩達のいる席に戻ろうとすると

女の子、「行きましょう、雪を見に」

翌日

先輩、「一番可愛い子をお前に譲ってやったのに」

私、「スイマセン、あの後どうなりました？」

先輩、「俺とＡ君は、相席屋で知り合った子と今度ドライブへ行くよ」

私、「良かったじゃないですか」

先輩、「お前もドライブに付いて来るか？」

私、「僕は遠慮しておきます」

先輩、「いつまでもメソメソするなよ」

私、「はい」

メソメソなんてしていない、なぜなら、私も相席屋で知り合った女の子と雪を見にドライブへ行くから。