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【ポリアモリー】彼氏の彼女に感じた、嫉妬とは真逆の気持ち
きのコ
公開日|2022.09.21
更新日|2022.09.21
ポリアモリーを実践する上で、嫉妬心は大きな課題のひとつであり、時に過酷な試練をももたらすもの。けれど、ポリアモリー当事者がメタモア(恋人の恋人)に対して感じる気持ちは、嫉妬心ばかりとは限らない。
ケイちゃんと知り合ったのは、Twitterがきっかけだった。
私と同じく、ケイちゃんもポリアモリーであることをネットでオープンにしていて、複数の人を同時に愛するという性質や、複数の人と同時に交際するというライフスタイルについて、悩みながらも真剣に向き合っている人だった。自分自身に対しても愛する人たちに対しても常に前向きなケイちゃんとネット上で語り合うのは、私にとって刺激的で実り多い経験だった。
そんな中、私がときどき開催していたTwitterのオフ会に、ある時ケイちゃんが恋人と一緒に参加してくれたのだ。
初めて実際に会ったケイちゃんは、周りの人たちまでハッピーな気持ちにしてくれる、はじけるような笑顔の持ち主だった。私もマサも、明るくて屈託のない彼女と夜遅くまで語り合い、楽しい時間を過ごした。
その後、ケイちゃんは私とマサの家に遊びに来るようになり、私も彼も、彼女と会うのをいつも楽しみにしていた。そのうちにケイちゃんとマサとは時折デートに出かけるようになり、2人の仲は次第に深まっていった。
しばらくして私はマサから、ケイちゃんとお付き合いを始めることになったと聞いた。その頃の私とマサは、付き合い始めてから数年が経っていた。
マサからの報告を、不安も嫉妬も感じることなく、私は落ち着いて受け止めることができた。それはマサと私の関係性がすでにかなり安定していて、しかもマサの新しい恋人となったケイちゃんのことをよく知っていたから、というのが大きいと思う。
そして何よりも、
「マサが他の誰を好きになっても、それ自体が原因でマサが私を好きでなくなることはない。私も、他の誰を好きになっても、それ自体が原因でマサを好きでなくなることはない」
という信頼がお互いに築けていたから。
東北地方に住んでいたケイちゃんはあまり頻繁にマサと会う機会こそないものの、通話したり、お互いを訪ねたりと、遠距離ながら楽しくお付き合いしていた。
ポリアモリー当事者であるケイちゃんには、マサ以外にも数人の恋人がいて、その中には私の知り合いもいた。時には私とマサの家にケイちゃんとその恋人たちが集まり、皆でにぎやかに過ごすこともあった。
そういったケイちゃん・マサとの関わりの中で、最も印象に残っている出来事がある。
ある時、マサの仕事がなかなかうまくいかずに、精神的に不安定になったことがあった。
悩んだ末にマサは数ヶ月間休職することを選択し、それを知って心配したケイちゃんが、彼に宛てて手紙を送ってきてくれたのだ。
マサが見せてくれたケイちゃんからの手紙には、彼に対するケイちゃんの温かい愛情あふれる言葉が詰まっていた。
その手紙を読んで、私は思わず涙がこぼれた。ケイちゃんがマサを心から思いやってくれているということが、とても嬉しかったのだ。マサを大切に想ってくれるケイちゃんに対する感謝や、マサがケイちゃんにこんなにも愛されていることに対する喜びも感じていた。
後日、私がケイちゃんからの手紙を読んで泣いた話をマサがしたら、彼女もそのことに感動して泣いていた、と彼が教えてくれた。
こんなふうに、ケイちゃんとマサと私の間には、あたたかで和やかな信頼と愛情の交歓があった。
私がケイちゃんに対して感じていたこの気持ちは、「コンパージョン」と呼ばれるらしい。これは「愛する者が、自分以外のパートナーを愛していることを感じるときに生じるハッピーな感情」のことで、「嫉妬」の対義語と位置づけられるそうだ。
「恋人の新しい彼女との、ドロドロの日々」で書いたユリちゃんに対する嫉妬と、今回のケイちゃんに対するコンパージョン。「メタモア=恋人の恋人」というそれぞれ同じ立場の相手に対する感情なのに、なぜユリちゃんとケイちゃんに対してこのように相反する気持ちをもったのか、不思議に思われるかもしれない。
私は、ユリちゃんのエピソードとケイちゃんのエピソードにおける自分の心の動きを見つめなおしてみて、この嫉妬とコンパージョンの間には、恋人やメタモアに対する信頼の有無が関わっているのだと思った。
ユリちゃんに対して嫉妬してしまったのは、ユウヤと私との信頼関係がまだ希薄だったうえに、ユリちゃんのこともよく知らなくて不安だったから。逆に、マサとの信頼関係が強固で、ケイちゃんとの間にもすでに良い関係性が築かれていたからこそ、ケイちゃんに対してコンパージョンを感じられたのだ。
ケイちゃんとマサは、それから数年経ってから恋人関係を解消することになった。けれどそこに争いやいがみ合いは全くなく、マサ・ケイちゃん・私は今も良い友達関係を築いている。
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