【ポリアモリー】恋人の新しい彼女との、ドロドロの日々

きのコ

きのコ

公開日|2022.09.16

更新日|2022.09.16

今回はユウヤとの交際の中で、私が嫉妬心を抱いた時のことについて書こうと思う。

ライブバーのイベントで出会い、付き合うことになったユウヤと私。

ユウヤと付き合い始めるにあたって、私はもちろん自分がポリアモリーであること、既にマサという恋人がいることをカミングアウトし、そのことについて彼の合意を得ていたけれど、彼もまた、自分がポリアモラスであるという自認をもった人だった。

「それなら、モノガミー(お付き合いは1対1でするもの、という考え方にもとづいたライフスタイル)だったマサと違って、お付き合いは楽そう」と思う人もいるかもしれない。

けれど実際には、マサの時とはまた違った難しさが、私たちを待ち受けていた。

ユウヤと付き合い始めて数週間後。ある日突然、私は彼から、
「実は、恋人ができました。もちろん、きのコさんという恋人がいることは伝えてあります」
と打ち明けられた。
(えっ…私たちまだ付き合って1ヶ月も経たないのに、もう別の恋人ができたの? もしかしてユウヤ、私に飽きちゃったのかなぁ。これからもどんどん恋人が増えていくのかも…寂しい…)

ユウヤ曰く、新しい恋人はTwitterで昔からつながりのあるユリちゃんという人だそう。
(私より昔からの知り合いなんだ…きっとユウヤのことを、私よりよく知ってる人だよね。どんな人なんだろう、もっと詳しく知りたい。見た目は? 年齢は? 職業は?)
その日のデートの帰り道、私は今まで感じたことのない不安に襲われていた。

そうして、ユリちゃん・ユウヤ・私での交際が始まった。

ユリちゃんと私とは、ユウヤを介した「恋人の恋人」、つまりメタモア同士という関係になる。「メタモアができる・メタモアになる」ということ自体は、私は既にマサとのお付き合いの中で何度か経験していた。けれども、今回は「付き合い始めてすぐメタモアができたこと」「ユリちゃんと私に面識がないこと」「ユリちゃんが強いモノガミーであること」が、今までとは大きく違っていて、私を不安にしていた。

ユウヤによれば、ユリちゃんはモノガミーの中でも特に嫉妬心が強い人だとのことだった。ユリちゃんはお付き合いの当初からユウヤと私との関係にヤキモキしていたらしく、私が彼と過ごしていると彼女から彼に何度も電話がかかってきたり、いくつもLINEが送られてくることもしばしばだった。

その度に私は、彼女に責められているような苦しさを感じた。

私が会社の休暇中、数日間ずっとユウヤの家に滞在していた時のこと。

ある日、彼が言いにくそうに「きのコさん、ユリが寝るまで俺とビデオ通話したいって言ってるんだけど…」と切り出した。

申し訳なさそうなユウヤの顔を見て、私は精一杯の笑顔で「じゃあ、どこかで時間を潰して、終電で戻って来るね。それまでいっぱい話すといいよ!」と明るく返すと、彼の家を出た。

その日はたまたま別の予定があったものの、意外に早く用事が済んで戻ってきてしまった私は、終電がなくなるまで1時間ほど、ユウヤの家の前の駐車場でぼんやりしていた。

月のない肌寒い夜で、ユウヤの部屋の灯りを見上げながら、「今頃、どんな話をしているのかなぁ…」「もう、チャイムを鳴らしてもいいかしら…」と、心細い気持ちでベンチに腰掛けていた。

私は、自分の存在がユリちゃんを嫉妬させているということ、自分もユリちゃんに嫉妬しているということに苦しんだ。

嫉妬と一言でいっても、「独占欲からの嫉妬」「疎外感からの嫉妬」「ライバル意識からの嫉妬」「エゴからの嫉妬」「不安からの嫉妬」など、その原因にはいくつかの種類がある。嫉妬という反応自体は結果的に同じでも、私が感じていたのは「不安からの嫉妬」だったが、ユリちゃんが感じていたのは「独占欲からの嫉妬」だったのではないかと思う。

ユリちゃんのことを、私はよく知らない。知らない物事に対しては、人間は不安を感じたり、その不安のためについ否定的な見方をしたりしてしまいがちなものだ。

私は、自分がユリちゃんに嫉妬を感じるのは、彼女のことを知らなくて不安だからだと考え、「あなたとユリちゃんの信頼関係が安定するのを待つ。でも、できれば1年以内に、ユリちゃんに会わせてほしい」とユウヤに訴え、彼も「ユリに話してみます」と言ってくれた。

そんな矢先、ユリちゃんからFacebookメッセージが届いた。ユウヤと私がFacebookでつながっていたことから、彼女は私のアカウントを知ったのだろう。

「私はあなたとはお会いするつもりはありませんし、あなたとお会いしてもあなたのことを理解、もしくは好意を抱く事は決してありません。今後、私と分かり合おうとしないで下さい」

強い拒絶の言葉に、私は大きなショックを受けた。
(ユリちゃんと分かり合うことなしに、私は自分の不安や嫉妬を鎮めることなんてできるんだろうか。もしできなかったら、ずっとこの嫉妬に苦しみながらユウヤと過ごすことになるのかな…)

ユリちゃんからは、その後も何度もFacebookメッセージが届き、その内容は次第に刺々しく、激しいものになっていった。
(嫉妬されるって、こんなにつらいんだ。それよりも、嫉妬するってこんなに苦しいんだ。嫉妬してしまう自分が嫌だ、私がユリちゃんと仲良くしないと、ユウヤが困るのに…)

私はユリちゃんに嫉妬しつつもそんな自分を責め、心が次第に削れていくのを感じていた。

ユウヤから別れ話をもちだされたのは、そうやって私の心が限界に達しかけていた時だった。

「2人の板挟みになっている今、俺にはポリアモリーを続けていくことは無理です。今は、まずユリを落ち着かせる時間が欲しい。だから、きのコさんとの恋人関係を解消して、友達に戻りたいんです」

お互いの嫉妬で疲れ果てたユリちゃんと私との間で、ユウヤも同じように消耗しきっていることは、2人とも分かっていた。

こうして、ユウヤと私は、恋人関係を解消して友達に戻ることになったのだった。

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