彼から届いた合鍵

梢っこ

梢っこ

公開日|2022.12.22

更新日|2022.12.22

大学生の頃、バイト先の社員の方と付き合っていました。

彼は2歳年上で社会人ということもあり、自分にとってはとても大人に見えました。


彼の仕事が休みの日は必ずと言ってよいほど一緒に過ごし、ドライブや旅行などにもたくさん行きました。

彼の実家に泊まりに行くことも多く、ご家族とも仲良くしていただいていて、私が大学を卒業する前には彼のお母さんと一緒に指輪を買いに行ったり、互いの両親と食事にも行ったりと、私も彼もお互いの家族もこのまま結婚すると誰もが思っていたと思います。


彼とは喧嘩もそこそこありましたが、言いたいことを言い合えるし、信頼できる。

本当に彼のことが大好きでした。


けれど、就職とともに私が他県に引っ越すことになり、遠距離恋愛に。

新幹線を乗り継いでも4時間以上かかる距離。


電話は毎日していてもなかなか会うことができず、久しぶりに会えたときの別れ際は涙が止まらない、そんな日々でした。


それでも彼と結婚して地元に戻ることを励みに、見知らぬ土地での一人暮らしも、社会人1年目での慣れない仕事も遠距離恋愛も、とにかく必死で頑張っていました。

遠距離になって半年過ぎたころ、彼が「一緒に過ごす時間が持てるように」と転職すると言い出しました。


まだ社会人になって半年の私には転職することの社会的な意味やハードルの高さなどは全く考えられず、彼が転職しさえすれば地元に戻って結婚できるとだけ思って、安易に賛成してしまいました。


彼もすぐに転職できると思っていたのか、転職先を決めないまま前職を退職し、退職後は1か月ほど私の家で一緒に暮らしていました。

けれど、それから半年たっても1年たっても彼の再就職先は決まらず、だんだんと不安要素が大きくなってきました。


電話の際に「今日は何をしていたの?」と聞くのがつらくなる一方で、自分は必死に仕事をしているのに実家でのんびりと過ごしている彼のことを信頼できなくなってしまいました。


そして付き合ってちょうど4年目を迎えたころ。

これ以上は無理だと思い、彼との別れを決心しました。


つらいけれどこれ以上惰性で付き合っても仕方ないと決心して自分で別れを告げたものの、自分は何で彼と別れてまで縁もゆかりもない土地で仕事を頑張っているのかがわからなくなり、当時は精神的にも本当につらかったです。


別れてから約1年後に彼から届いたのは、私が一人暮らしをしていた部屋の合鍵でした。

手紙も何もなく、ただ合鍵だけが入った真っ白い封筒。


その鍵を見た瞬間にそれまでの気持ちがあふれ出して、一人部屋で号泣したこととその時の気持ちはきっとずっと忘れられないと思います。


人生で一番幸せで一番いろんな気持ちを知った恋愛でした。

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