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作家に恋した姉の話
塩すずめちゃん
公開日｜2022.06.06
更新日｜2022.06.06
高校2年の姉は、友達の付き添いで毎週月曜の放課後、ローカルアイドルのラジオの公開収録 に通っていた。
申し訳程度にメンバーのブロマイドを持っていたけど、
姉はそのアイドルよ りもGLAYが好きだった。
ブロマイドはGLAYのベーシストの下敷きになっていた。
あるときお姉ちゃんは、その番組の構成作家に恋をした。
GLAYのベーシストに顔が似ていた らしい。
番組のブログから引っ張ってきた、その人がアイドルの後ろで見切れる写真を見せてもらっ た。
GLAYのベーシストより唇が薄くて、ちょっとぽっちゃりしていた。
それから姉は毎週、ラジオそっちのけでラブレターを渡しに通った。
月曜の夜は一緒にお風呂に入って、「今日の作家さん」の話を聞くのが定番になった。
ある時、姉が手紙に書いたアドレスに作家さんからメールが届いた。
姉はGLAYが使ってるという噂の香水をつけて、目一杯おしゃれして出かけていった。
それ以降、月1回気まぐれに作家さんからメールが来るようになった。
月の大半、姉は渋い顔 をしていたけど、
作家さんから連絡が来た日は目がキラキラしていて 2、3日もするとまた シリアスな顔に戻った。
毎日寝る前のおしゃべりが、作家さんの話ばかりになって退屈だっ た。
ある時、作家さんからの連絡が途絶えた。
アイドルのブログに、作家さんの結婚を祝う記事が上がった。
姉は布団にくるまって電気もつけず、1週間1歩も外に出なかった。
私の携帯電話から作家さ んのメールアドレスに「女が泣いてる」とメールした。
返事はなかった。
1週間後、布団から脱出した姉は別の人みたいになっていた。
あれから20年、バラエティ番組のスタッフロールに作家さんの名前を見つけるたびに、思い出話に花が咲く。
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