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あの日、わたしは、着信拒否にした。
あん
公開日|2022.11.16
更新日|2022.11.16
大好きでたまらなかったけど…
あの日、わたしは、着信拒否にした。
*
彼とは、5年前、演劇サークルで出会った。一緒にいると、あまりに楽しくて…わたしたちは、すぐに意気投合した。彼が既婚者だということは知っていたけれど、好きになってしまった。
きっと、多くの人がそうだろうけれど、周りがなんと言おうと、私たちだけは純愛だと思っていた。形は不倫なのかもしれないけれど、不倫だなんて、思ったことは一度もなかった。
*
彼は、これまで誰かに心を開いたことがなかったらしく、わたしのことを「はじめて心を開けた人」だと言っていた。わたしの前ではよく泣いていたので、「わたしの前では無理しなくていいからね…」そんな想いが、わたしの中には芽生えていった。
離婚したいような素振りはしていたけれど、結局、離婚することはなく…今年に入ってから、だんだんと彼からのメールが少なくなっていた。わたしからメールすれば、たまに返信があるけれど、明らかに、前のようなラブラブ感はない…そんな不安もあったけど、それでもわたしは、彼との未来をずっとずっと願っていた。
*
そんなある日、彼との何気ないメールのやりとりの中で、彼からの「心ない一言」を見てしまった。やばい、と思ったのか、彼はすぐに言い訳じみたメールを追加で送ってきたけれど、なんだかわたしの中の何かがプツンと切れてしまって…「やっぱりわたしは、大事にされていないんだ」「なんだかんだいって、離婚しないということは、そういうことなんだ」…急に、彼への想いが、さーっと冷めていくような、そんな感覚を覚えた。
*
それから、少し離れた海へ行き、ぼーっと考えていた頃、彼から着信があった。でも、それを見たわたしは、咄嗟の判断で…少しだけ手が震えながら、着信拒否のボタンを押してしまった。
「もう、これ以上、傷つきたくない」
「どうせ、これからもこの繰り返し」
「けっきょく、離婚なんてしないだろうし、奥さんと笑っているんだ」
「もう、これで、終わりにしよう…」
これまでも、何度となく別れたり戻ったりしているけれど、別れ話になるとどちらかが「嫌だ!!」という思いを爆発させるため、上手に別れることができなかった。
でも、今回ばかりは、彼の本質みたいなものを見てしまった気がして…もしかしたら、彼から何度も着信があるかもしれないけれど……今回のわたしは、拒否したいという気持ちが強かった。
着信拒否されて、彼はどう思っているだろうか?あたふたして、不安がっているのだろうか?心配してくれているのだろうか?
いろいろ思うことはあるけれど、もう、これ以上、傷つきたくない。認めたくないけれど、やっぱりわたしは、大事にされていないんだ…そう、わかってしまったことが、もう一度、わたしの心を苦しめた。
「私たち…、もう、終わりなんだ…」
そう思ったら、溢れる涙が止まらなかった。
*
今でも、着信拒否を解除して、電話したくなる自分もいる。そうしたら、彼は電話に出てくれて「心配していたんだよ。今すぐ会おう」と、言ってくれるかもしれない。そうしたら、また最高に楽しくて、最高に笑い合って、最高にしあわせな時間を過ごせるだろうけど…それでも、やっぱりその時間が終わったら、彼は奥さんの元に帰るんだ。それが、認めたくないけど、現実なんだ。
自分たちだけは純愛だなんて、思っていたけれど、離婚しないということは、けっきょく、そういうこと。どんなに、わたしとの時間がしあわせだとしても、離婚してわたしと一緒になるわけではない。彼にとっては、一時的なしあわせにすぎなくて、未来を期待していたのは、わたしだけなんだ…
*
今回、ここに書こうと思ったのは、自分の恋愛を客観視してみたかったから。書いてよかった。やっぱり、もう続けるべきじゃないよねって、わかったから。
今でも、彼には会いたい。声が聞きたい。演劇の話をしたい。夢を語りたい。一緒に笑いたい。そばにいたい。癒されたい。永遠にとなりにいたい…だけれども、やっぱり終わりにしないといけないんだ。
あの日、わたしは、着信拒否にした。
大好きだったけど、着信拒否にした。
着信拒否というと、大人としてあり得ないと思われそうだけど、そうでもしないと別れられない。また会ってしまったら、また同じ苦しみの中に戻るだけだから。
だから、わたしは、着信拒否にした。
大好きだったけど、着信拒否にした。
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