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サヤちゃんの話
塩すずめちゃん
公開日|2022.06.04
更新日|2022.06.04
2000年、小学5年生の春。
弁護士のお母さんに女手一つで厳しく育てられたクラスメートのサヤちゃんは、
お受験で塾通いのためにクラスで唯一自分の携帯電話を持っていた。
携帯電話そのものが普及したばかりの時代、多感な小学生が健全な目的だけに利用するはずが なく
サヤちゃんは何かのサイトで知り合った”ゴードン”というハンドルネームの男性とメル友にな っていた。
ある日の休み時間、アヤ、ユッキ、ミク、そして私を集めたサヤちゃんは
「子供ってどうやって作るか知ってる?」と誇らしげに聞いてきた。
5つ上の兄がいるミクだけが気まずそうに「知ってる」と言った。
好奇心旺盛なユッキに教えて教えてとせがまれたサヤちゃんは「中出しすんねん」と言った。
ゼロ知識の私たちに『セックス』を飛び越えて『中出し』を持ち出したのは
今思えばサヤちゃんなりの背伸びだったかもしれない。
「中出しってどういう意味?」とみんなが聞くと、
「私の口からは言えない。みんな自分で調べて」と言い出した。
自分から振っといてなんやそれと思いながら全員で図書室に移動し、辞書で”中出し”を調べ た。
もちろん載っていなかった。各自家に持ち帰って調べることになった。
「親に聞いてもいいけどくれぐれも私の名前は出すな」とサヤちゃんは言った。
家に帰って、姉の電子辞書でこっそり調べたけどやっぱりわからなかった。
後日検索履歴でバレてすごく怒られた。
家族が集まる晩御飯の席で「中出しって何?」と問いかけた。
全員私から目をそらした。
食後、母に「ぼくどこからきたの?」という絵本を渡された。
中出しの意味はのっていなかったけど、ニュアンスで理解した。
翌朝、ユッキは教室に入って開口一番「私、セックスしてみたい!」と叫んだ。
全員ユッキから目をそらした。
中学に進学して、ミクは真っ先に彼氏ができた。
筋トレにハマったアヤはシックスパックになった。
ユッキはたばこを吸い出して、
私は毎月買う雑誌がりぼんからピチレモンになった。
サヤちゃんはお受験に合格して、それから会っていない。
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