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交際
まゆ
公開日|2022.11.15
更新日|2022.11.15
ダイキから「付き合おう」と言われ了承はしたが、帰りの電車の中考え直してLINEに『凄く幸せな時間を過ごせました、ありがとう。ただ継続して会うつもりは無かったので、やっぱり今回限りで』と送信した。するとすぐ『電話で話したい』と返る。まだ帰宅途中の電車内だったので慌てて降りて人から離れたホームの端に移動し電話をする。
「俺は好きだからずっと付き合いたい、今回限りなんて絶対嫌だ。代わりに困らせる程しょっちゅう会いたいとかはワガママ言わないから、付き合おう?月一回とかなら会えるしリスクも無いよね?」
「確かにリスクはそれ程無いけど…」
「あとね、俺が言う付き合うって言うのは体だけの関係だけじゃなく心も伴う交際。俺は元から妻とは夫婦生活はもう無いけど、妻も他の女の人も一切抱かない、この先はまゆしか抱かない。まゆが心から好きなの」
そんな事を言われれば嬉しくないはずがない、けれど婚外の付き合いで心が伴うのはそれこそタブーなのでは?本気になんてなったら面倒なだけだ。私は家庭を壊す気は無い、ダイキも同じく家庭は壊すつもりは無いようだけど。こちらが断ろうとしても「お願い」「どうしても」と押し切られてしまい、交際の継続に結局OKをしてしまった。ダイキは不倫は初めてではなく、三人と交際経験があり最後の交際は二年前だそう。慣れているなら尚更、心を伴う交際など厄介になるだけと分かっているはず。そう考えるとあくまで「心を伴う交際」という言葉も不倫におけるただのスパイスのようなものなのかも。
帰宅してメイクを落としコンタクトを外し、いつもの自分に戻る。冷蔵庫を開けて食材を出して夕食を作り、今日着た服を洗濯して室内に干すなどするうち子供達が帰り、やがて旦那も帰った。旦那は私に興味が無く、短気ですぐ声を荒らげたり皮肉を言う。私も実はそんなに大人しい性格でもないので言い返しはするが、今日は「脱いだらカゴに入れるくらいしてよ」という私の小言にまた「あぁ?いちいちうるせえな!」と返してきた。
でも今日は腹が立たない、ついさっきした情事の感覚がまだ体に残っているから。私を虐げて馬鹿にしているこの旦那は、以前旦那の母親が作った借金をどうにも返しきれず私に泣き付き、私は自身の結婚前の貯蓄からお金を出し返済した。その恩は三日で忘れ、家事も育児も何一つ手伝わず常にふてぶてしい態度。離婚も何度も考えたが子供は父親に懐いているので、私だけが我慢すればいいのかな、と思い生きて来た。そんな旦那は私の裏切りなど知る由も無い。腹の中で『あんたの女房は、今日別の男に寝取られたのよ?』とあざ笑った。
旦那には罪悪感が薄くても、子供達には…と思ってみても、やはり罪悪感は湧かない。私って最低だったんだ、とも思う。だが旦那の母親には借金問題を持ち込まれ旦那自身にはモラハラされ、自分の親の介護もする中二人の子を一人で育てても来た。私も一人の人間だから自由くらい欲しい。そんな言い訳を頭に並べると罪悪感より肯定の方が強まる。
家庭を壊さなかったらいいじゃない
自分がまさか、この考えを持つようになるとはよもや思いもしなかった。今日の朝まで地味で不美人な中年女だった私だが、その日の夜は二十代に戻ったような若々しい気持ちで眠りについた。
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