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pit stop
まゆ
公開日|2024.11.22
更新日|2024.11.23
すっかり書き記す事も無くなったが、康弘との交際もダイキの執着も、未だに続いている。書かなくなった原因は特には無いが、合間に関係が悪化し別れる寸前にも至った。私は自分が必要とされていないと感じるとすぐに冷め、康弘はそんな私の傾向を一年数ヶ月経過しても覚えない。ADHD故の無神経な発言に何度も嫌な気にさせられ、最終的には別れ話まで出るように。ただどうしても、こんなに見た目が好みで性格も合う人は居ないとも感じ、別れきれずに今に至っている。何もかも完璧に自分の思うままに動いてくれる人間など居ない、どこかで妥協したり良い面に目を向けなくては、という気持ちと、ADHDだからってやりたい放題、私は黙って耐えるしかないなんて冗談じゃない。という気持ちが常に胸には渦巻いていて、現実としては手放しに幸せとは言えない。
そんな中、放置したままのマッチングアプリにメッセージが時折入る。
面白いもので、プロフィールの自己紹介文に
『一般常識の無い方、喫煙する方、割り勘が出来ない方などはお断りしております。他にもこちらのプロフィールをよく読まずに質問する方、こちらの希望の年齢より一歳でも上の方、体重が45kg以上の方などは無視させて頂きます。それから……』
などと女への注文を長々書き連ねている男も多いが、そういう男に限って写真を見ると三段腹の禿げ散らかった見るも無残な容姿だったりが多い。そして逆にシンプルな『仲良くなったらドライブに行きたいです』程度しか書いていないような男性の方が話しやすい人柄だったりする。その日は二通のメッセージが来て、一通目は件のウダウダと文句を付けるプロフィールに豚のような見た目の写真が添付された男から。返答する気すら起きず無視し二通目を開くが、そちらは別の意味で目が点になった。
年齢18~20歳
という部分に目がいく。以前にもそのくらいの年齢からメッセージを貰い、実際に23歳の男とは何度か会った。だが今回はそれより年下、という事もあり物珍しさから返信してみる事に。こちらはプロフィールにしっかり42歳と明記している、その上で接触して来るのは、考えられるのは小遣い欲しさのママ活だろう。そう思い「援助はしません」と言ってみるも「お金目当てじゃありません、年上の女性が好きなんです」と返った。
年齢を聞くと来月に二十歳になる、まだ19歳。思わず笑ってしまうくらい若い。さすがにセックスの相手になったらまずかろうとメッセージのやりとりのみで終わらせようとすると、LINEの交換をしつこく求められた。それから毎日のようにLINEにメッセージが入り、こちらも無視ばかりも悪かろうと思い三回に一回は返信するようになった。
裕太は高卒で働く19歳、車の運転は大好きだから迎えに来るのは問題ないそうで、住んでいる場所もそこまで遠くはない。経験人数は彼女が以前は居てその一人としかなく、年上の女性とはしてみたいが機会が無かったそう。私とLINEするようになった途端にマッチングアプリも削除してしまったと言う。「まだマチアプやってて良かったのに」と私が言うと「まゆさん見つかったから、もう必要無いじゃん?」と返った。素直というかなんと言うか、純粋なのかも知れない。私は私で継続した関係を持つ気はさらさら無いが、何しろ19歳となると自分の経験の中の最年少になる。その頃は康弘と上手くいっておらず別れる寸前だった事もあり、物珍しさから一回遊ぶくらいはしていいか、など過っていた。
見た目は目が大きく鼻が高いハーフっぽい美男子。だが外国の血は入っていない純日本人で、見た目の割に経験が少ないのは男子しか居ない工業高校から男しか居ない工場に就職した為、女性が環境に全く居ないせいもあるという。康弘の無神経な振る舞いに辟易もしており、つい一回だけなら相手してもいいかと思うようになり、会う約束に同意した。トモアキとニアミスして以来、康弘以外ともう寝るまいとは思ったが…。康弘自身と上手くいっていない期間だとそれも揺らぐ。
そしてこの場合の私の動機は、その彼と恋愛がしたいわけでも寂しさを埋めるわけでもなく、完全なる興味本位でしかない。18歳ではなく19歳なのだから法に触れるわけでなし、そう思う一方で息子らとそう変わらない歳の男の子と同衾すると思うと、私も大概節操が無いなと自分で自分に呆れ笑ってしまった。だが私の人生は私のもの、自由にさせて貰おうという気持ちが強いので罪悪感はさして無い。
仕事終わりに待ち合わせて車で迎えに来て貰うと、裕太は写真よりも顔が整っており普通にモテそうな見た目をしていた。受け答えも好感が持てて、悪い印象は無い。中には彼より経験を重ねているであろう中年男の方がよっぽど横柄なのも居た。「まだ車は出さないで。さすがに年齢差があり過ぎるから、実際に会った上でホテル行くか決めて。嫌なら全然断っていいよ?」そう聞いてみると「全然嫌なんかじゃない、行こうよ、ね?」と手を握られた。
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