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これをもし男性が読んでいたら、そして今離したくない女性が居るなら、お相手に好きと言葉で伝える事はたまにでいいから絶対にした方が良い。言うならただでお金が掛かるわけでなし、たったそれだけで女性が自分に対し“安心”しより一層好きになってくれるのだから、日本人は言う習慣が無いとかプライドが邪魔するとかそんなものは捨てて言うべき。

この日は先日不倫を告白して来た女友達に誘われ夕食の約束をし、6時に待ち合わせてバルへ。グラスワインで乾杯した直後「で、この前一線越えた彼とはどうなってるの？」と言うと、女友達の恵美は嬉しそうに笑う。「何、付き合う事にしたの？」私の問いにはにかみながら恵美が頷いた。元々付き合っていた間柄というのは、再会後のハードルが一気に低くなり不倫しやすくなる気がする。同窓会がきっかけになり元彼元彼女と一晩過ごしてしまったり付き合うというケースが多いのも頷ける。恵美と彼もそれで、初めから気心が知れている同士の再会なので進展も早い。

「彼は離婚してるから、あっちの奥さん気にしなくていいのは気楽かな。私は家庭があるからおおっぴらに付き合えないけど」と言う恵美が羨ましい。私だって康弘の女房は鬱陶しいし嫌いで、居なければそれに越した事は無いから。かといって離婚を迫る気までは無いが。ただ恵美達は再婚もあり得るかも、そう思えるくらい見せて貰ったLINEの文面が幸せそう。「まゆはさ、婚外恋愛の経験あったりする？」遠慮がちに聞いて来る恵美の、不倫ではなく婚外恋愛という言い方が私には馴染みが無くて少し照れ臭くなる。そして自分だけ隠しているのも悪い気がして素直に「うん」と答えた。進行形である事も言うと「やだ水臭い、この前言ってくれれば良かったのに！」と笑って返された。そこからはどんな人？いつから付き合ってるの？と質問責めにあう。そして「この歳で既婚で、好きな人出来たなんて誰にも言えないじゃない？まゆに話せて楽になった」そう言う彼女に「これからも聞かせてよね」と私が言い「まゆもだよ？」と笑って返された。

私と恵美は、これで謂わば互いの首にナイフを突き付け合っているような状況になった。自分が相手の不貞をバラせば、自分もまたバラされる。離婚までしてのめり込む気は無い私と、離婚するならもっと不利にならないよう準備をしてから、という彼女は互いの秘密は他者に明かさない。それ已然に私達は何でも話して共有して来た仲だし、互いを好きなのでバラすどころか互いの恋に協力する。私は泊まりは無いけど、もし恵美が彼と泊まるなら私を口実に使ってくれていい。それからもあれやこれやと付き合う楽しさや悩みを打ち明け合い、良い感じに酔ったところでお開きとなった。

そして帰宅し、恵美達にはあって私達には無いものが決定的になり落ち込む。前から分かっていたけど、やすは私に対して滅多に「好き」と言わない。恵美と彼はよくLINEで言い合っているし、ダイキなど好きなんて大安売りのように連呼する。ただやすからは無いし、私からも言わない。一番欲しい相手なのに。いい歳して今更好きと言われないからって何なんだ、自分に会いたくてわざわざ来てくれてるんだから、それで充分だろうに。そう思い込もうとしてみても、やっぱり言葉が無いとどうしても『友達として好きって事なのかな』という思考になる。そんな中やすからメッセージが来た。「最近付き合い始めた友達のLINEが、好きって言葉だらけなの。微笑ましいし少し羨ましい」私も好きの一言が欲しい、そういう思いを込めて送ったが、多分あちらからはスルーされるはず。わざと避けているのか私からの“羨ましい”というワードの意味にも気付かない天然なのかは分からないが。案の定あちらからは「そんなに言い合ってたら共依存になりそうだな(笑」などと返る。はぁ？(笑

言わなすぎるあんたは、依存どころか何度も私から見放されてるじゃん。なんだか付き合い自体もどうでも良くなって、既読スルーでその日は終わった。翌日も私からメッセージは入れないでいたが、やすからは「髪切って来た」という文と写真が送られてきた。悔しいけどツーブロックの髪がよく似合う。でもあまり誉めたくないので「似合ってる」とだけ返すと「体調悪いの？なにかあった？」と来た。一応このそっけなさには何かある、くらいは分かったらしい。言うか迷ったが「昨日の会話から、やすは私には好き、とは言わないなぁって思ってた。でも好きじゃなくても、友達としては楽しいから構ってくれてるんだよね？いずれにしても、いつもありがとう」と言ってみた。すると…

「俺は友達なんて思った事無いよ、大好きだし、付き合ってるって認識なんだけど💦」と来て、その直後間髪置かずに

「たくさん言いたかったんだ、でも言い過ぎたらしつこいと思われて嫌われるかも。そう思って控えてたんだよ」

「改めて大好き💕💕💕いつもありがとう」

と、立て続けに入る。なんというか、分かりやすい。本当に好きだけど言えなかったわけじゃなく、相手がご機嫌を損ねたから並べ立ててるだけだ。いつも彼はそう、こちらが機嫌が悪くなると泣いた子をあやすように畳み掛ける。こんなくだらない事で言い合うのも馬鹿馬鹿しくなり「今日仕事？」と聞くと逆に「まゆ冷たい😭まゆこそ友達と思ってない？俺を」と返り、ああ確かにそう感じるかと苦笑。私も好きだよと慌てて送る。いつもは数時間も空くメッセージが立て続けに入ったので休日かと思い聞いてみると、今日は休みで午前は散髪、午後からは農家を営む実家の両親の手伝いをしに一人で行くそう。「写ってるこのエリア全部田植えするの」という文と共に広い田んぼの写真と「頭の上にさっきからいるよ」と空を飛ぶ鳶の写真も送られて来た。

結局、不満があっても最後は「まあいいか…」と諦めにも似たような感覚で私が全て飲み込んで終わる。これが積もりに積もったらいつか爆発して別れに繋がる気がするが、それまではまだ仲良くしていたい、という気持ちが強いので付き合いはとりあえず続行。