見たかった花火とはスケールが違う

kiyomi

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公開日|2022.06.29

更新日|2022.06.29

私と彼が通っていたのは、学業もスポーツも手を抜かない文武両道の進学校、そのため、大学受験を控えた3年生は勉強と部活動の両立が大変。


彼は9ヶ月後に大学受験を控えているのに、夏には部活の大会があり、学年が1つ下の私とはデートをしてくれない。


私、「今日もデート出来ないの?」
彼、「一緒にいるじゃない」
彼と一緒にいられるのは通学のバスの中だけ、しかも、たった20分。
私、「お祭りには一緒に行くって約束したじゃない」
彼、「ごめんな」


彼が所属する部活は大会の予選を勝ち続けていたため、受験勉強の時間すら取れないため、私とデートする余裕はない。
そんなことは1年付き合って分かってはいたのだが、私の友達は彼氏と旅行へ行くなど青春を楽しんでいる、私だけ彼との思い出が作れてない。


私、「花火は夏しか見れないのよ」
彼、「分かった、花火だけは絶対に見に行こう」
私、「本当?」
彼、「ああ」


しかし、花火を見に行くには彼の所属する部活が予選で負けなくてはならない。
私は何を願っているのだろう?彼や部活のメンバーは勝ち残るために頑張っているのに。
花火大会の当日、彼は待ち合わせ場所に遅れてやって来た、なぜなら、予選に勝ち残ったから。


彼、「ごめん、遅くなって」
私、「花火、終わっちゃたじゃない」
彼、「ごめん」


彼に無理を言ってることは分かっている、でも、花火だけは絶対に見に行こうって約束したじゃない。
女友達から「今年の花火はキレイだったね、今、彼と一緒?」とメールが届いたため、花火を見られなかった寂しさで泣いてしまった。


彼は「ごめん」としか言ってくれない、大学受験を控えた彼にとっては私と会っている時間も惜しいことは私は分かっている、でも、17歳だった私は彼と一緒に花火が見たかった。
彼の手を繋ぐ力が私にはない、二人で歩いていても会話はない。
このまま続けて辛い思いをするなら、彼と別れたほうが・・・。
と考えていると、彼が私の手を握る力が強くなった。


彼、「見てごらん、花火だよ」
見えたのは誰かがあげている打ち上げ花火、しかし、私が彼と見たかったのは、もっと大きな花火。
彼、「花火を見るのは何年ぶりだろう」

私、「女の子と花火を見たことはないの?」

彼、「ないよ、勉強と部活ばかりの人生だから」
誰かがあげている打ち上げ花火を見る彼の目に、偽りはない。
それにしても、誰が花火をあげているのだろう?


私と彼が歩くと、花火を打ち上げている人達は私達に付いて来るように動く、しかし、悪そうな人達ではない。
誰があげているのか分からない打ち上げ花火は、5分ほど続いた。


それから半年後、彼は希望の大学に合格、その1年後、私は彼が通う大学に合格、それから8年後、私と彼は結婚をした。
結婚式のスピーチで、彼は「私にとって妻同様に大切なのは高校時代の部活のメンバーです。


高校3年の夏、彼らが打ち上げ花火をあげてくれたお陰で、高校生だった私と妻は別れずに済みました」


現在、私は40歳、夏になると夫婦だけで打ち上げ花火を必ずする。

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