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『100年の恋も冷める』に直面した瞬間
塩すずめちゃん
公開日|2022.07.20
更新日|2022.07.20
さえちゃんは背が高くてベリーショートで、バレー部のエースだった。
「さえちゃん!」と声をかけられると欽ちゃん走りで駆け寄ってくる。
お調子者ゆえにあまり着目されることがなかったけど、
色白で肌がきめ細かくて、メガネの奥は美人だった。
どの揉め事にも参加しない、誰の悪口も言わない、女子全員さえちゃんが大好きだった。
男兄弟に挟まれていることもあって、恋愛ごとに疎く、
「興味はあるけど、人を好きになる感覚があんまりよくわからない」
と言ってたさえちゃん。ある日、学校帰りの電車で大学生に告白されることになる。
さえちゃんは、その人と1回、2回と食事デートを重ねて、徐々に表情が変わってきた。
「紳士的だったよ」「すきになれるかも」「会うの楽しみになってきた」
みんなが、さえちゃんの変化を喜んでいる中、ある日突然ぱったりその話をしなくなった。
「さえちゃん、あの人どうしたの?」と聞くと、さえちゃんは歪んだ表情で
「無理、考えたくもない、生理的に無理、もう着信拒否しちゃった」と答えた。
「何かされたの?」と聞くと、「こないだ会った時、鼻毛でてた」と全身かきむしった。
「え、そんなことで?」
「好きになりかけてたのに?」
「鼻毛一撃で?」逆に全員さえちゃんに引いていた。
「無理、あの人のこと思い出そうとしたらもう鼻毛しか浮かばない。」
以降、さえちゃんは 「鼻毛がいるかも」と言ってバスで20分の距離を徒歩1時間で通うようになった。
鼻毛と行った場所の近隣を歩く時は、友達を盾にして視界を遮った。
鼻毛はその後、立ち直れただろうか、
さえちゃんはその後誰かを好きになれたのだろうか。
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