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Ungratified
まゆ
公開日|2024.01.14
更新日|2024.01.14
「一回やらせて!それで諦めるから!」
最低な言葉だが、これはある意味真理だとも思う。男性の射精は排泄と同じ、出せばすっきりして途端に落ち着く。トモアキはその良い例で、溜まっている時はしつこいが一度体を使わせて射精したら一気に落ち着きうるさくなくなる。また溜まりだすと他を探すより一度許した手短な女で済ませよう、となり連絡して来るようになるので、関係を切りたい時は射精した直後~数日のうちに切る方がいい。
男性とはつくづく、射精に支配されているとも思う。だからある意味扱いやすくもあり、また厄介でもある。性欲が犯罪にも直結しているが、出す前、出した後の状態を女性側が把握し上手くコントロールする事も可能。そんな男性ならではの言い分が「一回やらせて!それで諦めるから!」なのだろう。
だがこれが、射精という行為が出来ない、精神は男で体は女というトランスジェンダーの場合…非常に厄介とも知る。
私は以前、インスタで好きなゲームを通じて知り合ったトランスジェンダーのMさんにあまりにしつこく口説かれ一度だけ体を許した。その経験は今思い出しても身震いする程おぞましいが、人生経験の一つとして積み重ねたもの、と自分を納得させていた。その時の私の感覚は今までの男性と同じ、一度抱けば大人しくなるだろうという安易なものだった。だが実際はそんな甘いものではなかったと後から嫌という程思い知らされる事になる。
完全なるヘテロセクシャリティー、異性愛者の私には、90kg以上の巨漢で容姿もはっきり言って良くなく、注射も手術もしていないMさんは頑張って男装している太ったおばさんにしか見えない。それをどう恋愛対象に見ろというのだ…とうんざりするが、本人はどうやら世間を騙せる程男に近いナリだと思っているらしく、またノンケの女にであれしつこく自分勝手だった。
これは偏見ではなく、実際に接したから言える事。LGBTの彼らは傲慢な部分がある。自分達の権利を主張するのは良い、だが抱きたい相手は本来は相容れないのだ。ゲイが異性愛者の男性に交際を強要したところで相手の男は興奮もしなければ、まして愛する対象になど出来ない。女もまた同じだが、彼らは自分の欲の為なら相手はお構い無し、俺達マイノリティは機会も少なく恵まれない、だからノンケのお前らが従え!という考えがうっすらと見える。
まして精神は男性でありながら、体が射精という満足を得たいのに得られない女の体の場合、そのアンバランスは狂喜にも近くなる。一度抱けば満足するだろうは私の誤算で、それは射精がある男にのみ通用するもの。射精出来ない女の体は何百回私を抱こうが永久に満たされるはずがなく、どこまでも身勝手に、どこまでも貪欲に私を欲しがった。
飛行機の距離だが「年一回会いたい」と勝手に決められ、今年も催促が来る。息の荒い巨漢の中年女にキスを繰り返され体を好き放題されるまたあのおぞましい時間を耐えなくてはならないなど、もう御免だ。一度はっきり「もう出来ない」と断ったのに、また私を脱がす気満々で会う約束をしようとするMに辟易しつつ、仕事などを理由に先延ばしにしている。
嫌なら切ればいいとは思うが、インスタの中のコミュニティは出来上がっており、Mはその中心にいる。ブロックすれば影響が大きく、またMは精神不安で私に依存もしており切れば自殺しかねないという部分も気に掛かり、なかなか切れないでいる。
そんなMは、そこらの男よりも獣。私を好きでも射精どころか、ペニスを挿入して支配する事が出来ないのでどんなに体をまさぐろうが満たされない。満たされない分何度も欲しがるので、その様は冬眠しきれず空腹で人を襲う熊のよう。
そんなMが自分に向ける相手を考えない身勝手な欲望を見ていると、宦官にも通じると感じる。
ペニスは無いが性的欲求はあり続ける為に、寝たところで満たされない。満たされない欲求は後宮でいかにのし上がり出世するか、いかに金銭を得るかに向き、彼らの出世争いは激しく、また好いた稚児の取り合いもすさまじかったという。ペニスが必要でありながら始めから持たされないMと、切り取られた宦官は出したくても出せないジレンマが身勝手な振る舞いに表れる。
仕方ないだろうこんな体なのだから!だから従え!
その横柄で勝手な言い分が、偏見の無かった私に逆にLGBTへの苦手意識を植え付けた。全てのLGBTの人間がMと同じではないだろうし、彼らとて可哀想でもある。精神と体は一致しなくてはならないものなのだ。受け身の女は雄々しい男を欲しがり受け入れ、責める男は足を開き待つ女をペニスで征服する。これが、受け入れたいのにペニスが生えている、責めたいのにペニスが無い、となればピースの合わないパズルのようになすすべが無い。
そのMは、私を褒め称える。「まゆの顔は彫りが深く、化粧が映える美人だ。全体の雰囲気も色気があるから男は放っておかないよ」と。これは惚れているから欲目がそう見せているだけ。実際の私は中年の醜女でしかない。ただ、元の容姿のレベルの低さを補うだけ私に自信がついたから、確かに色気は若い頃より増したのだとは思う。マッチングアプリで誘えば簡単に相手が見つかり、どの男も自分に激しく勃起し抱きたがる。中には真剣に交際して欲しいとの申し出も。私が後天的に身につけた色気は、その男性らが自分にくれたものだ。
けれどその色気をMには向けたくない。私はマゾの気質があるので、男性に強引にされるのは嫌いじゃない。だから半ばレイプまがいの行為であれむしろ興奮材料になり受け入れてしまう。車内でトモアキに迫られた時などがそれ。だがそれは対象があくまで男性だから。私を突く立派な剣があり、突きたがるから受け入れる。
同じ事をMにされた時、私は初めて嫌悪に泣き叫び拒絶する。嫌々ながらも承知して受け入れた一度目はなんとか我慢出来たが、もう無理だ。あの巨体がのし掛かる重さや、口内に這い回る舌を思い出すだけで鳥肌が立つ。
また会おうよという言葉を気が進まないまでも了解出来る男相手と違い、Mに言われると本気で気が重い。一度許した女だからとまた触れて来られたら…。
自分は男なのだから、付き合う相手は女が好きなレズビアンでは満足しない、男を好む女がいい。でも抱いたところでペニスが無いから満足出来ない、だから何百回でも好きにさせろ。
そう欲望を向けるMと
悪いがただでさえ注射も手術もしておらず男性化していない、どころか醜い太った中年女でしかない奴に体をいじくられキスをされるのは、吐き気がする。一度応じたのが精一杯だ、もう勘弁してくれ。
という私は、Mには悪いが何がどうなろうが相容れない。だが友人、という一面もあるので切りきれず、会う約束を曖昧にしながら、また本命で付き合っている男や遊びで寝る男の存在を隠しながら、奇妙な関係を終わらせられずにまだ体の関係なしの交流は続けている。
旦那がある身で本命の男がいて、なお誘われれば断りきれずに他の男と寝て、その上男のみならず女まで。自分でも自分の貞操観念の無さに呆れるが、お陰で人生は楽しい。Mとの一夜は思い出すのもおぞましいが、それさえ“経験”の一つ。一生を欲という欲を断ち暮らす仏門の僧もいれば、セックスレスだからといって安易に浮気に走らない貞淑な妻もいる。だがどう過ごそうが、人生は一回きり。輪廻はあっても記憶は継承されない。ならば自由にやる、自分の人生だから。それが私の主義。だから男を好きになってしまい悩み苦しむ事も、誘われて寝て僅かな後悔をしながら切り時を探る事も、女に頼み込まれ寝て最悪な時間を過ごした事さえ全てをある意味楽しんでいる。
そんな事をしながらも、家では粛々と家事をして会社では粛々と仕事をし、不倫など程遠いような人間を装う自分が、たまに可笑しくなったりも。
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