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耽溺
まゆ
公開日|2023.11.10
更新日|2023.11.12
可愛げも無くなった二人の息子の世話にも、口汚く罵る時だけは饒舌であとは仏頂面の旦那の世話にも、なんの喜びも感じない。旦那の義実家にいる二人の老人はさすが旦那の親、モラハラ気質も仏頂面も何もかもが同じ。家では私を大切にもしない男三人の世話、外では仕事、たまの休みはモラハラ義両親にくだらない用事で呼びつけられ、欲しくもない野菜を受け取った後は耳が腐って落ちそうになる程の近所の悪口や私へのダメ出しを聞かされる。「そんな事より、早く死ぬなり自分らの金で施設に入るなりして下さい」思わず本音が出そうになる口をつぐんで車に戻ると、スマホにメッセージが届いた。
こんな嫌な事ばかりの日常も、彼に会えるから我慢出来る。やす自身も家庭に完全に満足しているわけではなく、家事を何もしない妻や妻の母に代わり仕事の他に育児や家事を請け負っており、時折不満がメッセージから垣間見得たりも。「女房は毎日平日も9時半まで寝てる。今日は俺は5時に起きてコインランドリー行って、帰ったら子供三人の朝飯作って幼稚園に送ってそれから仕事(笑」そんな文面が送られて来て少ししたら「これだけやってるのに、女房からはあんたは何もしないって言われるよ。うんざりする」とも。どんなにうんざりしようが、離婚せずくっついているのだから悪くは思っていないのだろうし、ここで同調すれば返って私の印象が悪くなりかねない。なので「完璧な旦那様がいるから、つい甘えちゃうんだよ」と、本人を誉めつつ女房も悪く言わない返しを送った。「こんな日常だから、まゆに癒して貰えて幸せだよ、いつも」そんな返信に嬉しくもなる。そしてやすには悪いが、どうかあちらの奥方様がこのまま何もしない怠惰であれ、ともつい願ってしまう。あちらが怠ければ怠ける程、育児も仕事も家事も全て一人でこなせる私の株は高いまま保たれ、かつ私に会う事が彼の癒しになるから。
最近ではそんなやりとりの他に、私達の間にはもう一つ話題が増えた。私が先に始め後からやすも買った、Switchのゲームソフトに関する話題だ。Switch本体も私が持っているカラーとお揃いで買い、進行する毎に「洞窟探索中」や「新しい村見つけた」など教えてもくれる。「仕事帰り車ん中で2時間もやっちゃった」と来ると、すっかりハマッているのだと分かり可愛らしいなぁ、という気持ちも沸いたり。
「やっと木曜日休み、まゆが休みなら会いたい。まゆのゲームデータ見せて貰っていい?時間は10時くらいはどう?」やりとりの最後にそう来て、二つ返事で「木曜空いてる、会う時Switch持って行くね」と返した。木曜朝は休みだが仕事に行くのと同じ時間に起き、支度する。カラーリングした髪に丁寧にヘアオイルを付けブローし、衝動買いしたレールデュサボンの限定品のオードトワレを移り香として彼に付けない程度に軽く振り、リップを塗る。支度を終えたらソファーに仕事用のバッグを置き、なに喰わぬ顔で家族に朝食を出し送り出し、自分も駐車場へ。でも車は出さない、程なくして着いたやすの車に乗り込む。いつ見ても、彼は私の好みでかっこいい。車に乗ると夜ならすぐにキス、昼なら周囲を気遣いすぐに車を出すが必ず手を繋いでくれる。そんな所も好きで仕方がない。
「ね、あれから進んだ?」「やっと武器が改造出来るようになったよ」そんな他愛ないゲームの話をしていているだけでも、彼の股関は大きくなっている。ただやりたいだけで私を誘ったのだとしても、私は何も嫌じゃないどころか嬉しい。中年でたいした魅力も無い私を求めてくれているのだから。ホテルに着いてバッグを置いたら、すぐにベッドに押し倒されキスされる。彼の舌が入る時、今日はいつもは感じない伸びた髭が私の肌に当たった。以前にも書いたが、私はこのキス中に髭が当たるチクチクした感触が男らしさが感じられて大好き。興奮まで増して下半身が熱くなる。キスしながら服を脱がされベッドに押し倒されると、今日はいつもと違い私をうつ伏せにし背中の愛撫からセックスが始まった。
首や肩や背中を舐め回され時折軽くキスされ、快感に背を反らせてしまう。その愛撫だけで溢れる程濡らされたら、次は仰向け。丁寧なキスの後は胸を吸われたが、彼がなぜか唇を離しふいに笑った。
「やばい、興奮し過ぎて噛みそうになった」
「噛んでいいよ、噛んでも痕付けても平気、して」
「噛んだら痛いから可哀想だよ、あと痕が残ったらまずくない?」
「全然まずくないよ、旦那とはセックスレスだし目の前で着替える事も無いもん」
「じゃあ、していい?」
そう言った彼が再び私の胸に顔を埋めた直後、肌に小さく痛みが走る。噛んだのではなく強く吸ったらしい。二ヶ所強めに吸われた後は乳首を優しく吸われ、同時に彼の手が私の剃ってつるんとなった丘を撫でた。足を開かされ興奮して充血しているクリトリスを舐められ、やがて愛液を啜られる。そして啜られても尚中から溢れ出る愛液を彼が指で掬い、私の口に差し入れた。この行為はダイキにもたまにされた。私はセックスのプレイなら余程過激でない限り大体素直に受け入れる。ダイキは私がMである事を知り、かつ自身はSと公言していたからこんな行為も支配の一環としてしたがった。やすも噛みそうになったり、愛液をわざと舐めさせるのはやはり多少はSの気もあるのだろう。舐めさせた指は膣内に挿入され、激しく音を立て刺激された。あられもない声を上げ腰を浮かせる私にやすがのし掛かり、挿入されると私の声は一層大きくなった。正常位で激しく突かれ、何度もキスされ力強く抱き締められる。ふいに一度体を離した彼が「綺麗な体だ」と私を誉めた。綺麗なはずがない40に近い体だが、誉められた事が嬉しくて思わず小さく微笑んだ。嘘でも嬉しい褒め言葉、溺れるような快感、彼への愛情に脳内が支配され私も彼を強く抱き締めた。
耽溺(たんでき)という言葉は、こんな状態を表すのだろう。私は彼にベッドの上で毎回、息も出来ない程溺れさせられている。
やがて痛いくらい強く体を掴まれ、彼が私の中に放った。イク前に彼が「そろそろイキそう…」と告げる時、私は「中に頂戴」「欲しい」とねだるように言う。ただでさえピルで避妊が完璧な上に、自分の出す精液を女側が欲しがりねだる。これは多分、男性にはこの上もなく嬉しいはず。私もそんな気持ちを読んでの発言だし、中に放たれる事は私自身も事実嬉しい。射精のぜん動運動を中で感じながら、私に覆い被さる彼の髪を優しく撫でた。事が済んでも放されずベッドの中で抱き締められ、話をしているうちにまた彼のペニスが勃起して来る。いくら強いとは言え彼も三十代後半…すぐには出来まいと思ったが、もう上に乗る。ピストンされ二度軽くこちらもイッたが、さすがに途中で一度固さが弱まり彼がペニスを引き抜いた。そして少しの間自分の手で刺激していたが「あ、イキそう」と言うと彼がまた私に覆い被さり、今度はピストンする事なく奥に挿入しただけで射精した。『いくら妊娠しないとはいえ、そのままイカずにわざわざ射精の為だけに挿入したの??』と不思議だったが、彼はフェラチオで絶頂しそうになっても必ず「中に出したい」と言い射精は膣内でする。無論ピルがあるから双方安心して出来る事なのだが、これも私は嬉しい。私の中で放ちたいという気持ちは支配欲の表れだろうから。私は支配に喜びを感じるM気質なのだと、つくづく思う。
散々淫らな姿を晒し繋がった後はシャワーを浴び、互いが持参したSwitchを出して子供のように遊ぶ。ふと私のSwitchを見たやすが「あ、お揃いにしたくてまゆと同じカラー買っちゃったけど、間違えて持ち帰ったりしそうだな」と言った。小さく笑い「私もそう思ったから、間違えないように私のSwitchは裏に小さいラインストーン貼ったよ」と言い裏面を見せると「あ、可愛い」と彼も微笑んだ。残りの時間をそんな風に遊んだら、現実に戻る為に身支度を整える。約束してから会うまでの間は長くてたまらないのに、会ってから別れるまでの間は瞬きしたくらいの短い一瞬に感じる。幸せなのは彼に出された精液が体内に残り、体温も声も記憶に新しい今日の夜まで。次に会うまでにはまだ間が空くし、その間はまた空虚な気持ちで待たねばならない。「次会うのは紅葉見に行く16日だね」車を発信させた彼が私の手を握りながら言った。私もそれに「楽しみ」と短く答える。昼なので人目がある為駐車場でキス出来ない分、家に着くかなり手前の信号が赤になった瞬間にキス。車を降りて手を振りながら駐車場を出る彼に私も手を振ると、待ちに待った、そしてあっという間の逢瀬は終わり。
翌朝、またやすに会わない日常が始まりやや憂鬱な気分で起床し着替える。と、胸元が内出血していて驚いた。だが思い出してフフ、と笑いが漏れる。私の胸に紫色の紋を付けたのは、彼の唇だと思い出したから。その痕すらも、彼が私を抱いた証だから愛おしい。
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