紅葉

まゆ

まゆ

公開日|2023.11.17

更新日|2023.11.17

「紅葉の季節になったら、まゆと見に行きたい」ずっとそう言われていたが互いがインフルエンザやコロナに罹り会う日も限られていた。が、やっと16日にはお互い時間が作れそうなのでその日に約束しその日の朝。事前に私から「車出して運転してくれるなら、遠出する時のガソリン代は持たせてね」と言っていたが、時間になって車に乗り込みガソリンメーターを見ると、ほぼ満タンと表示されている。「ガソリン減らしたまま来てって言ったのに」と言うと、彼は笑って「そんなの気にしないで」と返して来た。それ一つ取っても、私に異常なまでに執着する割に私に対して何一つしなかったダイキとは違うと思わされる。ダイキは付き合って二週間でもう、会う日の都合が付かないと「付き合うんじゃなかった」「お前なんか嫌いだ」と罵倒が始まっていた。やすと付き合うようになり三か月、まだ喧嘩は無い。

やすは女房が料理を一切しないので、普段誰かが自分の為に作った料理を食べる機会が無い。私が作ったサンドイッチが食べたいと希望して来たので、この日はサンドイッチやいくつかの簡単な料理を詰めた容器などをエコバッグに入れて持参した。後部座席に置いたら出発。カーステから流れる、二十代はフェスによく行っていた音楽好きの彼のチョイスした曲を聴きつつ話をしながら一時間の道のりを走り、筑波山に到着。彼が駐車場に車を停めエンジンを切ったので私も降りようとシートベルトに手を掛けたら、彼に腕を軽く掴まれキスされた。奥まった場所に停めてはいるが、紅葉の季節の観光地だから少し先には人が行き交っている。そんな場所で舌まで入れられる長いキスをされ見られないかヒヤヒヤしたが、同時に嬉しくもなった。

降りてケーブルカーに乗り、山頂にある神社を通り過ぎて展望台へ行き持ってきた昼食を出す。内容は卵とハムのサンド、ジャムとクリームチーズのクロワッサンサンド、カボチャのサラダや動物に見立てたウインナーやもみじの葉の形に飾り切りした人参などを入れた容器、カットしたフルーツ。普通の主婦なら作るのはどれも造作もないものばかりだが、彼は喜んでくれて全て完食し誉めてくれた。何を作って出そうが感想など一言も無い旦那や息子二人と暮らして来てそれが普通になっていた私には、作った料理を誉められるというのが新鮮。女房が料理しない彼からしたら、誰かが自分の為に料理してくれた事が新鮮。私達は互いに、されたかった事を自然にお互いにしている。だから好き合う気持ちも強まるのだろう。あちらもそうだと思いたいし、少なくとも私はそう。旦那では得られなかった誉められる事、優しくされる事、セックスの喜び、全てくれる彼を好きで仕方がない。

食後は二種類のおみくじを二人で引いた。一つは恋占い。これから来る恋ではなく、自分達の行く末を見る。彼は中吉で私は大大大吉が出た。もう一つは勾玉占い。お揃いの指輪やストラップなどが身に付けられない関係だが、小さな勾玉くらいなら互いに贈り合えると思い私から提案したら彼も快く承知してくれた。私は彼が引いた紫色の勾玉を、彼は私が引いた白色の勾玉を贈り合った。二時間ほど筑波山で過ごした帰りは、彼の提案で行列の出来ていた饅頭屋さんに寄るなどして、帰る為に車に乗る。走り出してしばらくすると、彼が運転しながら握っていた私の手を持ち上げた。この前もそうしたように、私の手の甲に彼がキスする。少し照れ笑いしながらされるがままになっていたが…今日はどちらも遊びに行くだけと思っていたのに、彼は私の手の甲にキスした事で、私はされた事で気持ちの収まりが付かなくなった。どちらからともなくホテルに行く雰囲気になり、まっすぐ帰らずホテルに寄り激しく抱き合う。

愛撫され濡れて来た所に彼の太いものを入れられ、歓喜に泣くような声が出た。髪の一本まで愛してる男に抱かれる喜びは、何にも替えがたいといつも思う。一緒に同じ景色を見て同じものを食べ最後に抱かれたこの日は、誇張ではなく私が生きていて一番幸せと感じた日だった。その代わり、帰りは離れたくない気持ちが強まる。それはあちらも同じなようで、日が落ちるのが早くなり暗くなった駐車場で車を停めると同時に、また長いキスをされた。「今日は本当に凄く楽しかった、次はイルミネーション見に行こう」そう言う彼に「私も、一緒に紅葉見られて幸せだった」と私も返した。別れを惜しみ車を降り、走る車を見送ったらまた退屈で面白みも嬉しさも何も無い日常に戻されてしまった。けれどそれでいい、私に必要なのは彼を家族と引き離し自分のものにする事じゃない。互いに伴侶に愛情を持てなくなった私達は、互いの家庭を壊さず月に一回か二回数時間、こうして会うその時間をこそ求めている。それが生きる希望になるから。

翌日、展望台で撮影した紅葉を待ち受けにした後眺めながら前日を思い出していたら、仲の良い同僚が私に声を掛けてきた。「紅葉見に行ったの?スマホの待ち受けにして眺める程好きなら、今度一緒に見に行かない?」そう提案して来た同僚に紅葉好きと勘違いされたまま「いいね、行こうか」と返答してしまい後から苦笑いした。

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