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瞭然
まゆ
公開日|2024.01.08
更新日|2024.01.09
正月をとうに過ぎても会う予定を立てないやすに、そろそろ関係も終わりかなぁ…などと思いながら過ごす一方で、会社に出入りするトラックドライバーのトモアキからは「今日は他県まで運んでいます」「朝は冷えますね」などとマメにLINEが入る。一行簡単に返信すると、またしばらくして返信が来て、会話のピンポンはいつしか一日中される事も。やすからのメッセージがおはようの一回きりなど減っているのに対し、トモアキからのメッセージは増え、相手にしてくれないやすに代わりトモアキは私の子守りをしてくれているような状態。
「明日はそちらに伺う日です、顔を見られたら嬉しいです」そんな文面から、隙あらば欲求不満の人妻を狩りたいという彼の思惑がよく伝わる。遊び慣れているのだろうし、私もまた「仕事以外の余計な事入れて来ないで下さい」などと突っぱねたりせずに会話に乗っているから。
熟した果実は、そっと触れればすぐに枝から落ちる。トモアキはそれをよく知っており、利用したい男。世の中にはパパ活をする男もいるが、枯れた魅力に乏しい中年男が若さに満ちた女性を買うなら、ある程度財力が必要になる。射精するなら年増でも同じと思い、かつ財力がさほど無い男達は私達のような既婚の中年女を狙う。私達は自分にも家庭があるから結婚を迫る事もないし経済的にも安定しているから金を貰う必要もない。若い時に散々しているので毎回高いレストランやデートスポットに連れていく必要もない。ついでに言えばそれなりの年齢な分、それなりのテクニックも身に付いている。
遊ぶには恰好の私を狙うトモアキが、実際に狩りに乗り出すのにそう時間は掛からなかった。私はそれだけ、落ち易い女と思われたのだろう。終業時間になり帰り支度を終え会社を出るとトモアキから「そろそろ帰りですか?俺はそちらの会社の近くのdocomoショップに来ててそろそろ帰るところです。まゆさんは今日車ですか?」というLINEが来た。以前に、会社には車で行く時と電車で行く時がある。車は行きも帰りも混む時間に差し掛かってしまう、電車は駅から自宅まで歩くので、どちらで通うのも面倒だと漏らした事があった。今日は電車だった。その旨を書き送ると「会社のちょっと先にあるドラッグストアの駐車場まで行きますよ、駅かご自宅近くまで送ります」と来た。会社の敷地まで来ない、自宅前ではなく自宅近く、という部分に気遣いは見えるがようは「乗れよ、そろそろ誘ったら違う意味でも乗るだろ?」という事だ。スマホは前日夜からやすからのメッセージは届かないまま。私は「助かります、ありがとう御座います」と返した。
冬の日の入りは早く、もう外は暗い。車を発進させしばらくするとトモアキが「いつもLINEでしか話せないから、直接会えた今日は帰り道の時間の他にもちょっと長く話せると嬉しいです。10分だけでも。いいですか?だめなら言って下さい」と言い出した。「大丈夫ですよ」と答えてしばらくすると、車が人気の無い何かの施設の駐車場に入った。日が暮れたら車内の灯りを消せば、中にいる私達はおろか黒いトモアキの車そのものも闇に紛れる。車を停めると「さっき買っておいたんです、コーヒー大丈夫ですよね?」と言いながら缶を差し出してきた。礼を言って受け取る。
ここに停まったのは、缶が冷める前に中身を飲む為と世間話をする為。
どちらもその建前のもと、奇妙な空気の中コーヒーを飲みながら他愛ない話をした。会話はトモアキの誘導で互いの夫婦の事に及び、お決まりのような「うちも関係が冷えきっていてセックスもない」という告白のし合いとなった。「まゆさん綺麗なのに、旦那さんがしないなら他の男が狙っちゃうよ」四十に差し掛かる女が綺麗なわけがないが、私の足を開かせるにはそれくらいの世辞が要る。私もまた、さすがに今日そこまではするつもりはない。ただ、相手をしてくれないやすの代わりに彼が今側に居たから相手して貰っているだけの事。などと思ううち、トモアキは缶をホルダーに置くなり私に手を伸ばした。
「前から好きでした」の言葉を言い終えるや否や、彼のキスが私の口を塞ぐ。抵抗しない私に対し彼の行動は驚く程早かった。キスしたまま服の下に手を入れ、胸をまさぐる。その手が太股に下り、思わず「ここでそんな事する?」と言ってしまった。彼は「ごめん、止まらない」と言うとスカートの中に手を入れた。お誂え向きに私が愛用しているのはパンティストッキングではなくタイハイストッキング、スカートに手を入れればあとはショーツをずらすだけで秘部に触れられる。
足を開かされ敏感な突起に触れられている間も、口はキスで塞がれたまま。指を挿入される頃には私もすっかり反応している。「凄い濡れてる、こんなエロい体してたんだ」と言う彼はどこか嬉しそうだ。今日はさすがにしたとしてもキスまで、日を改めてホテルで会って最後までするか辞めるかは、考えてからにしよう。と思っていたが、止める間もなくズボンを下ろしたトモアキが私の上に乗った。「待って!さすがにこんな所で」と言いかける私をよそに彼は「ごめん、我慢出来ない」と言い先端を挿入した。同意も聞かぬまま押さえ付けられ挿入とは、パトロール中の警官が懐中電灯で車内を照らせば婦女暴行でトモアキが捕まりかねないような光景だ。けれど私はそれ以上抵抗はせず、のし掛かるトモアキの背中に手を回す。積極的にするつもりは無かったが、相手の車に乗るというのはこうなるのも承知したも同然の行為だ。今さら純ぶって泣きなどしない。衝動的に挿入しはしたが怖くなったか「ごめん、ゴム付けるから…」と言い引き抜こうとするトモアキに「生理痛治療にピル飲んでるから、このままで平気」と伝えた。伝えられた彼はハッと笑うと「最高じゃん」と言い再び私に覆い被さり膣内に射精した。
「今度はちゃんと、ホテルでしようよ」身なりを整えながら言う彼に「…ちょっと考えさせて」と煮えきらぬ返答をすると「いいじゃんお願い付き合って!まゆ最高!」と言いながら抱きついてきた。寝た男はみな同じ事を言う。避妊が要らないどころか射精まで膣内で出来る女はそれだけで離したくなくなるものらしい。私はトモアキと関係を続ける気はほとんど無い。ただ寂しかった時に、側に居ただけの人だから。これまでもさほど好きでない男は義理で一度か二度寝てこちらから適当に理由を付けて切ってきた。彼も多分そうなる。ただ今まではマッチングアプリなどを介して会っていて、アプリのブロックだけで簡単に切れた。会社で顔を合わせる間柄の男と寝たのはまずかった。別れるのが困難になるから避けていたのに。
なんとか次会う約束をするのを有耶無耶にしながら自宅近くまで送って貰い、夜道を歩いているとバッグの中に入れたスマホからメッセージ着信音が鳴った。「ショッピングモールに家族で行ってた、高いポップコーン買っちゃった」という能天気な文面に苦笑しながら「お疲れ様」とだけ返す。普段なら「お疲れ様、ポップコーンてギャレットの?美味しいよね」とでも送っている所。私が素っ気ない文を送る事は滅多に無いのであちらはさすがに何か思うはず。思わないようなら、やすとももう終わりでもいい。そんな事を考えながら自宅に入ると、いつもなら次の返信は数時間後か無いかなのに、即座に返信が来てつい笑ってしまった。
「今日は子供らの為に仕方なく出掛けたんだ、本当はまゆと会いたかった、大好きだよ、来週中会いたい、都合付きそう?」
言い訳と好意を表す言葉と会う誘い、欲しかったが貰えなかった言葉が雪崩のように一気に来てこれにも笑う。
彼は非常に分かりやすい、この瞭然とした文面に全てが表れている。こちらが平常なら安心しほったらかすが、ひとたび不機嫌になると慌てて繕う。まるで泣き出した赤ん坊をあやすように。ただそれでも機嫌を治す気になれず「26は会社の人達と集まり、あとはわからない」と、またも回答のみを送ると、いつもは朝まで無視の返信はまた即返る。私は今まで彼から会いたいと言われれば必ず都合を付けてきた。わからない、と言い承知しなかったのは今回が初めて。「26日以外だね、OK。その週のどこかに会おう」という返信にすら「了解」としか送らなかった。
まだ私に嫌気がさしてはいないのかも知れないが、それも時間の問題。いずれあちらが嫌になりこの交際も終わるだろう。それならそれで構わない。待つ辛さはもうたくさんだ。かといってトモアキとも付き合わない。もういい加減落ち着き一人になろう、以降老齢になって死ぬまでセックスが無かったとしても、充分満足なくらい遊んだから。
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