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Amrita
まゆ
公開日|2024.02.08
更新日|2024.02.08
最後に会ったのは去年の7月、こちらから別れを告げてからも、ダイキは定期的に私にDMやLINEで接触して来た。けれどいくら復縁を望まれても、私は戻る気にはならない。行きたがるのはホテルだけ、事が済んだら帰るだけ、誕生日もホワイトデーも何一つ寄越さない、会いたがる日に私の都合がつかなかったら罵倒、何ひとつ良い所の無い男に魅力はもう感じない。康弘はセックスの相性はもちろん、セックスの無いデートも提案してくれるしプレゼントもくれる、何より性格が穏やかで優しく付き合って半年になるが喧嘩は一度も無い。ダイキとの交際中は半年の間に、何回罵倒され喧嘩になったか分からないくらい。「まだ忘れられない」「一生好きだ」「セックスしなくていいから、会って欲しい」思い出したように送られてくる文に「ごめんなさい、無理」と返すと「このクソアマ、何が無理なんだよふざけるな」と来る。呆れながら「そういう所が無理なの」とだけ返し、以降は未読スルーのまま。
自由にならないと罵詈雑言浴びせるダイキと天と地程も違うやすは、自ら志願して能登の避難所で難儀する障害者を手助けに行く事になった。24時間人の手が無くては生きられない人を介護する傍ら、地震被害の無いケア施設に振り分けて入所が叶うよう手配したり、障害者の家族の相談を受けたりなどを5日間程するそう。初日は新幹線の車窓から見える浅間山や避難所の入り口、仕事が終わって銭湯に向かう道、寝る前には持参した寝袋など行動ごとの写真と「雪景色になってきた」「銭湯は温泉だったよ」「体育館に寝袋、背中痛くなりそう」と様子を記した文が一日中に渡り送られて来た。女房でもない私に細かに行動や景色を送り様子を知らせてくれる、その気持ちが嬉しい。
能登から帰ってきて5日目「お土産買ってきた、渡したいから今日か明日会えるかな。時間あったらまだ一回も行ってないから、カラオケも行こうよ」と誘うメッセージが来た。彼の住む場所と私の住む場所は少し遠く、また彼は何もしない女房に代わって子供達の学校行事参加やPTA役員までやっており時間が無い。そんな忙しい中月に一回でも会いに来る時間を作ってくれる事も、仕事で行った場所のお土産を買って来てくれた事も、好きなら当たり前なれどやっぱり有り難いし嬉しい。すぐに了解の返事をして、その日の夜に会う事になった。一旦帰宅し鼻歌まじりで化粧を直す。が、トイレに入り愕然となる。やすに会える日だというのに月経が来てしまった。
彼の車に乗りお土産を渡された後「ごめん、せっかく来てくれたのについさっきから生理が始まっちゃって」と告げると、彼が小さく笑う。「今日はお土産渡したかったのと、カラオケ一緒に行きたかっただけだよ。そりゃまゆとはいつもしたい、けどそれだけを求めてるわけじゃないから」彼はそう言うと私にキスして「ただ会いたかったんだよ」と言った。セックスが無くても会ってくれる人、というのは前から分かっていた。紅葉を見に行くのもクリスマスイルミネーションを見に行くのも彼から誘ってくれたから。けれど改めて言葉にして貰えると凄く嬉しい。彼は好きや愛してるという言葉はあまり出さない。でも私を好きでいてくれているという事は行動や他の言葉で示してくれる。だから不満は無いどころか、ますます好きになる。会えない日があまりに長くなり一時は別れも過ったけど、やっぱり別れられない。今まで付き合った中で一番好きな男だから。
車で10分ほど走りカラオケ店に入り、ドリンクを持ち部屋に入り彼から歌い始める。私は普段から話す時の彼の声も大好きだが、歌う声も好きになった。古い曲からボーカロイドまでジャンルも幅広い。私も歌声は自信があるので、彼も私も好きなKing Gnuを歌う。二時間程歌い帰る時には、彼は子供のような笑顔で「凄い楽しかった!久々に歌えてストレス解消になったし、まゆと初めてカラオケで遊んだのも嬉しかった」と言ってきた。「私も同じ、凄く楽しかったよ、やす歌上手いね」など会話しながら車で帰路に着く。いつも待ち合わせる駐車場に着き、降りようとすると「まだ」と制されキスされた。肩に回した手が降り、ブラジャーをずらすと乳首に触れる。「最後まではしないけど、ちょっとだけ。いい?」乳房を掴まれながら言われ無言で頷く、と、彼はシートを倒して私の乳首に吸い付いた。そして首筋にも吸い付きキスマークを付ける。その後は抱き締められもう一度唇にキスされた。舌を絡めている最中、私の手が彼の太ももに触れると、指先に硬いものが当たる。はち切れそうな程勃起している彼のペニスを服越しに触りながら「口でしてあげたい」と私から言った。「俺だけ気持ちよくなるの、いつも悪いよ」「いいの、してあげたいから。それに私もキスやおっぱい吸われて凄く気持ちいいよ?」そう話しながら彼がジッパーをおろしペニスを出し、私が先端に舌を這わせる。ゆっくり咥え頭を上下させると、彼が「あーやばい、すぐ出そう」と小さく言った。
しばし口で愛撫し、口内に射精された精液を飲み下す。愛している男の精液は、私にとってはアムリタにも等しい。アムリタとはインド神話に出てくる、飲んだ者の様々な苦痛を癒し活力を与える甘い霊液。彼が私の口内に放つアムリタは甘くはなく舌にビリビリした刺激が来るが、効力は同じ。嫌な日常を忘れさせ私に女性に生まれた喜びをくれる。飲み干してシートを戻し、互いに衣服を整えたらペットボトルの飲料を飲み口内の精液を流し、別れ際にもう一度舌を絡めたキスをした。名残惜しい気持ちを抑え、車を降りて見送る瞬間はいつも会えた幸せと別れる寂しさがない交ぜになる。
またしばらくは、私の首筋に彼の唇の痕があるから消えるまでの数日は幸せ。消えた後も数日は余韻があるので我慢出来る。でも会って二週間も経過すると、もう寂しくてたまらなくなる。だからどうか、それ以上経たずにまた会えますように。
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