Bubblebath

まゆ

まゆ

公開日|2024.02.29

更新日|2024.02.29

あちらの無神経な発言から一度は別れようとした康弘だけど、結局別れられずに付き合いは続行中。同時にダイキからも連絡が来て、月に一回の休日はダイキと、平日二回はやすと会う日々。何も同時進行が楽しいわけではなくむしろ鬱陶しい。けれどやすにはすでに情が移り、ダイキは何回拒絶しても諦めないのでこんな体たらくになっている。二回目に会う約束も承諾したのでダイキは私が復縁をOKしたのだと取り、朝から「早く会いたい」「愛してる」と盛んにメッセージを送り付けて来る。しまいには「まゆ愛してるよ」というボイスメッセージまで。一時期は好きだったが、これには思わず『気持ち悪い』という感情が先行した。あまりにしつこいから持て余しながらも仕方なく相手しているダイキと、幻滅しながらも切りきれずに付き合っているやす。私は今、どちらも100%好きなわけじゃない。

半減した好意の中二人の男を抱えている自分に呆れるが、元より婚姻を結んだ夫が良い人間ならこんな事になどならなかった。言い訳に過ぎないが、完璧であれとは言っていない。問題があっても穏やかに解決し、普通に生きて欲しいだけ。だが旦那は生ませるだけ生ませた子供二人の育児に明け暮れる私に「お前が子供ばかり見ているから、俺はパチンコに走ったんだ」などと吐く馬鹿。それでもまだ若い頃はギャンブルもやらず見てくれもマシだったが、今となっては身なりは汚く家事は何一つ出来ず気に入らなければ物を投げつけ、魅力という魅力が何も無い男に成り下がった。子供二人の大学の費用を捻出し終えたら離婚を考えているが、異性に触れたい欲求は外で満たせば良いし家事をしない代わりに私のやり方に文句は言わない。手伝いすらしない代わりに黙ってもいるので今やルームシェア相手のような感覚になっても居る。子供二人もある程度大きくなったのであまり不自由は無かったり。

「今日会えない?まゆが言ってた貸切露天あるホテル行ってみようよ」悪びれもせずメッセージを送って来るやすに「人気の部屋だから予約が必要だよ」と返すと「そっか、じゃあいつものホテルの大きいジャグジーバスある部屋行こう」と返る。その日の夜、一度別れると告げ揉めた後なので私は少々の気まずさがあったが、あちらはそんな事など無かったかのように能天気に私を助手席に座らせ「もし狭い浴槽の部屋でも、今日は泡風呂にして一緒に入って楽しもうよ」などと言う。気まずく思うのも馬鹿馬鹿しくなり「そうだね」と返した。本気で悪気は無いのかも知れない、だがこのデリカシーの無さで過去に絶対別れられているはず。そう思ったが行く道すがら話を聞いて納得した。過去の彼女の話で「連絡段々無くなって最後はブロックされた」との事。やっぱり(笑)無神経な言動で呆れさせたな。

部屋に入りバスタブにお湯をためている間は他愛ない話をして、二人でジャグジーバスに入る。浴槽の中で私を立て膝にさせ彼が私の胸に顔を埋めた。しばしバスタブの中で抱き合ったり体を刺激したら、出てベッドで繋がる。乳首が特に感じる彼の乳首を舐めながら片手でペニスを刺激し、我慢出来なくなった彼が私の上に乗る。腹筋のあるやすのピストンは激しく、また的確にこちらの感じる場所を突いて来るのですぐに達してしまう。一度やすが射精したら腕の中に入れられ、私を抱き抱えながら彼はうとうとし始めた。そっとベッドを抜け浴室に行き、冷めたお湯に熱いお湯を足し泡タイプの入浴剤も足して一人で入る。

が二人の男から手放されないのは、どちらも私を好いているからじゃない。私が避妊が要らず中に射精出来るから、それだけの事。だとしても、私は若くもなければ美しくもない。たるんだ中年女をそこそこ良い男二人が必要としてくれるなら、それだけでいい。私が不倫に足を踏み入れたきっかけは、もう一生今後誰にも抱かれる事なく死んでいくのだとしたら、それが嫌だったから。だから必要としてくれればそれで充分。やすは無配慮過ぎるしダイキは自由にならないと暴れるワガママ、どちらも嫌ではあるが贅沢言える程私自身たいした女でも無いのだから、会って貰える間は素直になろう。などと浸かりながら考えた。

ジャグジーの勢いで次々水面に作られる泡、良い香りで可愛い見た目だが指の先で軽く突くだけで壊れる程脆い。不倫における恋愛なんてものも同じ、互いが持つ会いたいという気持ちだけで成り立っている関係に、保証は何も無い。けどそんな不安定だからこそ、今継続しているのはあちらも私も今はお互い必要だからだ。先が無い関係だからこそ、今を大事にしよう。

そんな事を考え、出てタオルで体を拭いていたら起きた彼が私の腕を取った。ベッドに引き入れられ上に乗られ二回目が始まり、せっかく洗い流したのに中から漏れた精液でまた汚れる事に。「ごめん、風呂入ったのにまた汚しちゃって」「いいよ、私も気持ち良かったもん」そんな会話をしながら次はシャワーのみ交互に済ませ、身支度を整える。帰りの車内「今年は暖かいから、開花が早まるよな。早く花見に行く日決めなきゃ」前回の自分の無神経発言など無かったように言う彼に「そうだね、楽しみ」と答えた。駐車場に着いたらいつものようにキスして車を降りる。家に帰り着きほどなくすると、ポケットのスマホにメッセージが来たのを知らせる通知音が二回立て続けに鳴った。ディスプレイをプルダウンすると…

【やすひろ】今日も会ってくれてありがとう、おやすみ

【ダイキ】次の土曜が待ち遠しい、愛してる

全く同じタイミングで送られた二件のメッセージ通知が縦に並び、一番最低で呆れられるべきなのはやすでもダイキでもなく、やっぱり私だと改めて実感し笑ってしまった。

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