heated cigarette

まゆ

まゆ

公開日|2024.03.02

更新日|2024.03.03

「土曜は午前中仕事なんだ、でも午後は空くから」ダイキのメッセージに「二時間くらいしか会えないよ?慌ただしいから後日どっちも休みの日に会えば?」と返すが「お願い、どうしても会いたい。頼むよ」と押され土曜に会う事を承知した。こちらから一方的に切って6か月、ダイキは何がなんでも諦めずに私に連絡をして来た。根負けするような形で一度再会してからは、5分通話しただけでも「会えないけど、まゆの声が聞けたから今日はいい日」「またまゆに会える、幸せで仕方ない」というメッセージもよく入るように。「愛してる」「結婚して」なども通話中もよく言うし、時には普通に会話しているのに「まゆの声聞いてたら勃った」と言いながら触りだしそのまま果てたりも。さすがに声を聞いただけで自慰が始まった時は気持ち悪いと感じたが、はっきりも言えず苦笑しているうちにあちらが果てて満足していた。

再会後にした先日のセックスの最中も「愛してるってまゆも言って」「一生俺だけって言ってよ」としきりに言っていた。これは以前にもあったが、最近ではその言動がより激しさを増している。こちらが同意するまで繰り返すのだ。その上しがみつくように私を抱えながら

「誰にも触らせないからな」

低い声で耳元で囁かれた時には恐怖と、恐怖とは違う別の感情がない交ぜになり…はっきり言ってこれ以上無いくらい感じてしまったのも事実。ダイキはどんなに突き放しても私を絶対離さない。それは愛情ではなくサイコパスが捕食者に対して行う支配なのだろうけれど、そこまでの執念を向けられた時、私のようなM傾向のある人間は恐怖と同時にある種“悦び”も感じてしまうのだ。

土曜は一足先に私がホテルの部屋に入って仕事を終えた足で来るダイキを待つ。「あと5分で着く、脱いで待ってて」というメッセージの通りに脱いでバスタオルだけを巻いて待っていると、やがて部屋のドアがノックされた。入るなりダイキは「ああ嬉しい、まだ夢みたい。半年も離れてたまゆがまた目の前にいる」と熱っぽく言うと、私を横抱きしてベッドに投げた。そしてスーツのまま私の足を開かせ舌を這わせ始めた。

東京都内の古く狭いラブホテル、どんなに酷い設備でも一日中客が途絶えない為、リフォームする気も無ければサービスする気も無い。平成を通り越して昭和を思わせる部屋には壁の一面に鏡が貼ってあり、行為が映る。ダイキは康弘同様、歳より若く見えるしスタイルが良いのでスーツ姿もよく似合う。その姿のダイキがネクタイも解かないまま私の足の間に押し入って挿入する姿は、まるでダイキの勤務中抜け出させて禁を犯しているような背徳的な気持ちになった。「ダメ、気持ち良すぎる、まゆ最高過ぎるよ…今まで付き合った中でもこんなに良い女居なかった、離せない、体だけじゃない、全部愛してる」そううわ言のように繰り返しキスするダイキに乗られながら、私はやはり恐怖と同じくらい欲情も覚えながら絶頂した。

ダイキの言葉や執着ぶりを見るだけなら、男がそれ程離したがらないとは私は一体どれ程良い女なのかと思うはず。そうではなく、私はどちらかというと醜女。身なりはそれなりに気遣っているが、およそ男に追われるとは思えぬ容姿だ。にも関わらずここまでダイキが追うのは、何もかもがダイキ個人の好みに合致しているから。ダイキの言葉を借りれば、愛撫に良く濡れ良い反応をし中が締まり最高の膣、体つきも顔つきも、アクセサリーの使い方もネイルも髪色も従順な性格も全てが自分の好みなのだそう。膣こそ自分でコントロールするのは不可能なものの、私もまた付き合う中で「明るい髪色好きだよ、似合ってる」「そのピアス可愛い」「そういうファッションかっこいい、凄く好き」という言葉に無意識のうちに感化されている部分も大きく、性格も結局彼を切りきれなかった。結果自然により彼の好む人間に、更にこの一年でなったのだろう。

スーツを脱いだダイキが、シャワーから出た私を再び寝かせ何度も執拗に指と舌で愛撫する。やすもセックスはむしろ上手い方だが、やはり相性はダイキの方が良いと感じる。ダイキは必ず私に潮吹きさせるし、舌使いもダイキの方が感じるから。何度も潮を吹かせベッドシーツの半分の面積が濡れる頃、連続してイカされ息も絶え絶えになり「お願い休ませて…」と頼んだが、無視したダイキに体を反転させられバックで挿入された。長いペニスが奥を抉るように刺激するので、私は挿入でもイク。ただダイキは最後は必ず正常位を求める。「感じてる顔を見ながら、キスしながら、抱き締めながらイキたいんだ」そういうダイキは舌を深く入れるキスをしながら2度目の射精をした。まだ動けずぐったりする私を満足げに見つめると、ダイキは一服しにソファーへ。

「あれ、この香り」覚えのある香りを感知し思わず声が出る。「ああ、タバコの銘柄変えたの。よく分かったね」「嗅いだ覚えがあったから」そんな会話をしていたら「なに、俺と会わない間に会ってた男が吸ってたの?」とダイキが眉尻を上げた。「違う、女友達。でも誰だっけ…」そう返すと、タバコを消したダイキがこちらに向かって来て私を抱き締め「他の男なんか作るなよ?」と言った。カップル間でよく交わされる言葉だが、ダイキのその言葉の後には

「発覚したら殺すからな」

と続くような気がして、思わず背筋がひやりとなる。安易に再会すべきじゃなかったのかも、でももう遅い。身支度を整えホテルを出て、駅構内で別れる。するとホームに降りる頃「もう会いたくなる」などとダイキからメッセージが来た。

そして、ダイキが替えたメビウスメンソールパープルと同じタバコを吸っている女友達は同僚だった。私も喫煙者なので休み時間は揃って必ず喫煙所に行く。その時いつも嗅いでいるから馴染みがあったわけで。後日同僚から漂い始めた香りに「このタバコ、ハルちゃんだったんだ!」とすっとんきょうな声を出してしまい、同僚を困惑させてしまった。ただ、いつも本当の顛末は彼女に言えない。その日も「地元の友達が同じタバコ吸っててね、香りに覚えがあったの」と言い訳する羽目に。

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