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「奇跡」の「軌跡」
はっちとぽっち 男性
公開日|2023.03.02
更新日|2023.03.02
約20年前、忘れることのない今は遠い過去の「悲劇」と、そしてその後訪れる「奇跡」。
そんな私の恋愛における「軌跡」を、当時を思い返しながら今回お伝えしようと思います。
学生時代から飲食店でのアルバイトに就いていた私は、「人と接する」ということに幸せを感じていたことも相まって、大学卒業後の進路として大手不動産会社を選択。
一度は就職したもののやはり営業と接客との違いにズレを感じ、先に入社していた友人の紹介を通じ再び飲食業界へと転職。
好きな仕事で働ける喜びはもちろん、職場の雰囲気や人にも恵まれ充実した時間を過ごしていました。
そして、そんな日々を送っていたある日、私が働く職場に一人のアルバイトスタッフが入社し数ヶ月後その女性と交際がスタート。
初めて出会った日から私の一目惚れでした。
当時高校3年生であった彼女はやがて短大へと進学。
親元を離れ沖縄の短大へと進学した彼女とは俗に言う「遠距離恋愛」となり、そのような障害がありがらも順調に交際を進める中、短大1年目の夏過ぎに妊娠が発覚します。
いずれは結婚も視野に入れていた私は子供に対しては賛成の立場ではありましたが彼女の希望としては退学し産み育てて行くとのこと。
そこには順序や立場、相手方ご両親の想いなど、二人の考えの中で大きな隔たりがありました。
そして事情を伝えたご両親は案の定猛反発。
ただそれでも一歩も引かない彼女。
数日の間を置いてご両親がある提案をします。
「結婚に関しては口を挟まない」
「ただし短大に関しては絶対に卒業してもらう」
しっかり卒業した後、それでも二人の想いが変わらないのならその時点で認めるとのことでした。
子供を諦めるという決断はしましたが、ただその日を堺にお互いの両親とも家族ぐるみでの交際へと発展。
また、二人で話し合った結果、卒業後直ぐに訪れる彼女の誕生日に籍を入れることを約束しました。
その後も私の有給や彼女の休み期間などを利用し順調に交際を続け、やがて春が訪れ彼女も2年生へと進級。
そして二人にとって2度目の夏休み期間中に相手方のご両親の元へ訪れ意思を伝え、双方の顔合わせを年末年始のどこかで日程を調整し行なうことを約束し彼女はまた沖縄へと帰って行きました。
それが彼女と過ごした最後でした。
秋も深まるある日の早朝に彼女のご両親から交通事故にあったとの知らせを受けました。
ご両親の後を追い直ぐに現地へと向かいましたが遺体の損傷が激しく私は対面してませんでしたが、その代わり、何かに引き寄せられるようにその足は気付けば病院から事故現場へと向かっていました。
片側2車線の見通しの良い直線道路の交差点。
南国らしく秋でも生暖かな海風が運ぶその香りと、脇へと少し逸れればあたり一面に広がる真っ青な絶景。
絶望と疑問に押しつぶされる中見た景色はとても綺麗で、数十年経った今でも決して忘れることはありません。
それから数年、職場も変わり夜間帯の飲食業界へと転身していた私は職業柄もありますが毎日のように酒を浴び、やがてあの日以来通い続けていた心療内科からも遠ざかり、砂時計のようにただ流れる時間を好みそれを自己防衛としていました。
そうしてただひたすら感情を殺して生きていくのが日々の日課となっていたそんなある日、私はタイムスリップを体験します。
1.000人規模収容の大型店舗の週末の店内はそれでも人で溢れ、暗闇の中一部の照明やレーザーが辺りを照らし、酒を片手に大音量のリズムに合わせて上下左右に揺らぎ合います。
いつものルーティンである接客を進める中で1人の女性客と接触(会話)する機会がありました。
「何か飲む?」
「おごってくれるの?」
きっかけはそんないつもの接客のルーティンです。
やがて会話は進み年齢へと発展していきます。それもいつものルーティンです。
ただ、なんとなくではありますが、その女性に関しては最初から変な違和感を感じていたのは今だからというわけではありません。
年齢を聞いた時、同い年であった当時の彼女が目に浮かびながら心がざわつきますが、そんなの毎週末1.000人規模のお客様でごった返す上では特別珍しいことでもありません。
ただ、誕生日が近いという事を聞いた後、生年月日を知らされた私は最初から感じた不思議なインスピレーションと奇跡に言葉を失いました。
「4月20日」
生まれた場所は違えど当時の彼女と今の妻は、この日本で同じ時としてこの世に生を授かりました。
また、一度は子供を諦めながら、それでもまた再びその子に会うために、結婚を約束した日でもあります。
昨年17回忌を家族で参列し、今回で一応一区切りを迎えました。
これが私の「奇跡」の「軌跡」です。
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