節操

マッチング1件目の47歳、某大企業勤めのタカシさん。マッチング2件目の23歳、運送業のシュウくん。交際希望のメッセージをくれた中でも、特にこの二人はメッセージ交換のみの時点でも私を気に入り熱心にメッセージをくれたので、課金制の手前申し訳ないという気持ちにもなり、押されてついLINEIDを教えてしまった。どちらも私の見た目もだし、タカシさんは私が従順な所が特に気に入ったそう。「俺以外とやりとりしないでよ、アプリも退会して」と何度も言われる。

シュウくんは付き合う相手は望んでおらず、ただ気が合えばセックスしたい。というだけらしいが「まゆ可愛いから、したい。近いから俺から車出すから会おうよ。明後日は？ダメなら15日は？」と展開が早い。正直、ダイキと交際した事で私の旦那以外知らずに来た貞淑な妻の“タガ”は外れている。そして熱心に求められたら悪い気はしない。二人からあまりにも会いたいと言われ、一回きりならと会うアポイントをそれぞれ取ってしまった。

つい半年前まで旦那以外に抱かれるなんて発想すら無く、結婚以来旦那一人の経験しか無かった私が、こんなに節操なしになるとは。ただ、男性から熱心に求められるのは素直に嬉しい。相手は体目当てなだけだ、安売りするな、そんな声も聞こえそうだがもう私は腐る寸前の、今にも木から落ちそうな熟しきった果実だ。まだ果汁がたっぷりで皮にも張りがある20代の果実とは違う。今更高価な贈り物もデートも要らない、腐って木から落ちてしまう前に、自分が女であった証が欲しいだけ。だから足掻いているのだ。体目当てというなら私も同じだし、こんな体で良いと相手が言うなら安売りしても構わない。

会う気などなかったのに、気付けば自分も会う気にすっかりなっていた。

タカシさんは身長180㎝、短髪のやせ形で少し気難しそうな見た目。セックスもややSだそうで、だからこそ従順な性格の私を気に入ったそう。でも見た目に反して人柄は優しく、車で近くまで迎えに来てくれて車内での話も面白かった。「寿司は好き？いいお店があるからご馳走させてよ」というタカシさんに「凄く嬉しいです、ありがとう。私にお金使って下さるって言ってくれるなんて光栄。でも使わなくて大丈夫」安い店でも良いし割り勘でも良い、そのつもりで言った言葉にタカシさんは「そういう控えめな所がますます可愛いね、食事を辞退するなら、行き先はホテルに変更してすぐにでも抱きたくなるけど」と笑った。少し戸惑うも、どうせ車に乗った時点でそれも込みだとこちらも承知だ。黙って頷くと「なあ、俺のものになってよ。まゆは本当に可愛いからもう手離したくない」と言われ手を握られた。

ダイキとはもう終わってるし、タカシさんと付き合っても支障は無い。でもダイキとの交際にうんざりしてもいたので、もうダイキと別れたら二度と不倫交際はしないと思っていたんだけど…。一回で終わらせるか続行か、迷ううち車がホテルの駐車場に着いた。

ダイキ同様、タカシさんも二年前まで長く付き合った不倫相手が居たらしいが振られたそうで、ずっと寂しかったそう。経験はそれなりにあるのでリードも上手く、キスもベッドへの誘導も自然だった。乳首を軽く噛まれ痛みを覚えるが、嫌とまでは思わなかったので黙っていると「ごめん、平気だった？」と言われた。そして「Mかな、と思ってしてみたの」とも。「あまりハードなのは経験無いし無理だけど、多分ちょっとMかも」と答えると、タカシさんは嬉しそうに笑った。指での刺激はダイキより上手く、一発でGスポットに当たり軽く潮吹きしてしまった。ダイキが誉めてくれたように「感じやすいね、濡れやすいしイキやすいし潮まで吹くなんて最高な体じゃん。あー離したくないな。な、付き合おうよ」と言ってくれて覆い被さって来た。

旦那がさして興味も示さず喜びもせず、出産後は捨て置かれるばかりだったこの体をダイキもタカシさんも誉めてくれて、獣のように求めてくれて、手離したくないとまで言ってくれる。自信はついた。タカシさんには車内でピルの服用を伝えていたので、一回目からコンドーム無しで生の挿入だった。さすがに膣内射精は避けて外に出して貰ったが「ゴムなしで挿入まで出来るなんて本当に最高過ぎる体じゃん。ダメ、もうまゆは俺のもの」と大いに喜ばれた。

一回した後は、ダイキは毎回気だるそうにそっぽを向き寝てしまう。でもタカシさんは腕枕でずっと話をしていた。普通なら男の比較などもっと若いうちにするものだが、私は若い頃に旦那に出会い、当時はマッチングアプリなんてものも無かったのでこんな歳で男の違いを実感している。ダイキは自分の家庭の事はほとんど話さないのに対し、タカシさんは奥さんの愚痴も素直に言う。私はどちらかと言うと全てにおいて『必要とされたい』と思うので、女房じゃ勃起しないけど、君にはギンギンになる。などと言われれば嬉しい。それが嘘であれ実際に奥さんとまだ夫婦生活があったとて、若い子のように「私だけって言ったのに！」とは言わない。それが分かったとしても指摘はしないし、君には興奮すると言われればただ微笑み「嬉しい」とだけ返す。強い態度になれないのは自分に自信が無いだけなのだが、そういう言動が結果としてダイキやタカシさんのような性的嗜好がSの男性には、素直で可愛いと映るらしい。

ただ、今後はどうしようか…。とりあえず後から「一回きりの冒険がしたかっただけなので」と断ろうと思いながら帰る前に身支度を整える。けれどタカシさんから「これっきりは嫌だ、また会おうよ。好きになっちゃった。お願い！俺だけのものになって！」と言われ抱きつかれた。無論お互い家庭があり、家庭を壊さないのが前提。それでも気に入られれば悪い気はしない。しないけれど…。ダイキで懲りてもいる。だからその場ではなんとか濁し、帰路に着いた。