鬼は

たかさんに会う前日、「会う時間、もう少し早くならないかな」とLINEが来た。平日なので息子達の送り出しがあるからあまり早める事は出来ないが、30分くらいなら。と返すと「ごめん、そうだよね。無理はさせられないからいいよ、いつも通りの時間で」と来た。都合でも悪いのかと思ったが「早く会いたくてさ」と後から一言送られて来て、ついこちらも支度の時間が減るのに「嬉しい、だったら30分早めよう。私も会いたい」と送ってしまった。

彼を好きかと言われたら、そこまで入れあげてはいない。ダイキと別れた寂しさに居たたまれなくなり、ついマッチングアプリを使いマッチし、一度会ったら思いの外気に入られてしまいなかなか別れられないではいるが。別れられない理由は、断る理由も無いからだ。顔も嫌いじゃない、セックスもそこそこ上手い、優しいし喧嘩も無い、自分を気に入ってくれている。となると恋愛感情まではいかなくとも、断りにくいし情も沸く。「ノーパンノーブラで来いよ」セックスに関してはSのたかさんが口調を変えて来る。私もそれに「何も付けずに行きます」と敬語で答えた。

翌日は息子達を送り出したら急いでシャワーを浴び、髪を整えメイクして、身なりを整え家を出る。ダイキと会う時はかなり遠出する事になるが、たかさんとはマッチングアプリで『近場で探す』条件の元マッチしているので会いやすい。車の助手席に乗るや否や、左手が伸びて服の上から胸を触られる。「従順だな、嬉しいよ。ちゃんと言う事聞いて下着付けて無いんだな」と喜ぶたかさんに「はい」と頷く。

ホテルに入るとキスから始まり、すぐに脱がされベッドに押し倒される。ダイキは舌での愛撫は上手いがGスポットを当てられないし指での愛撫は力が弱い、対してたかさんはGスポットを見つけるのが上手く、宛がった指先で強く刺激してくれるのでこちらもすぐ絶頂するし濡れる。この日はホテルで買ったオモチャも使われ、念入りな前戯を施された末挿入された。嬉しい事に、皆どの男も挿入すると5分も持たない。ダイキもたかさんも「気持ちいい、我慢出来ない、すぐ出そう」と覆い被さって耳元で囁き膣内に射精する。挿入が短めでもたかさんは前戯でも一回目のピストンでもイカせてくれるし、ダイキは二度目の挿入時のピストンが長くかなり強い。なのでこちらは満足。

相変わらずしたらすぐ寝るし奥さんの話は絶対しないダイキと違い、たかさんは私を腕枕で抱きながら会社の話や家族の話をよくする。面白かった話から愚痴まで色々。彼はきっと、私がこのピロートークをよく聞きたかさんに寄り添う返答をする事を含めて、気に入ってくれているのだと思う。精液も愚痴も出させてすっきりさせて、元気を与えてあげられる事は私も嬉しい。三時間はすぐ経過してしまい、名残惜しいが帰宅の時間。家に帰り着くとほどなくしてたかさんから「また会いたい」とLINEが来る。

正直、私は見た目はかなり劣っている。体型も酷いし容姿は良くない。自分に自信など皆無。なのに気に入って貰ったから一度の関係で良かったのに申し訳なくてなかなか断れない。ダイキとの付き合いもたかさんとの付き合いもしゅうくんとの付き合いも、全てそれ。つい私も「次も楽しみ」と返してしまう。

その数日後には、音信不通に近かったダイキからも電話が。この所は本当に忙しかったようだが「かなり溜まってる、まゆを抱きたい。抱きたいより会いたい、触れたい」と言われ、ダイキにもまた「私も」と返す。さすがにこの時は罪悪感を感じた。旦那には微塵の罪悪感も無いが、ダイキにはある。出来るものなら他二人とちゃんとケジメを付けてダイキ一人に戻りたい、とも。

「2月の一週目はなんとか会えるかも。最近バックでしてないから、次はバックで入れようか。俺正常位で抱き合って突くの大好きだから、いつも正常位が多くなっちゃうけど。飽きるだろ？」というダイキに「飽きないよ、いつも気持ちいいし幸せ。でも顔を間近で見られるのは恥ずかしいかな。最中の顔って、繕えないし…幻滅されそうで気になる」と返す。すると「まゆは美人だよ、してる最中のまゆの顔見るのも大好きなんだ、俺」と返り、つい照れてしまった。「よく萎えないね、有り難いなぁ」と言うと「まゆは美人だし気持ちいいし、最高なの。俺は一生まゆしか抱かない。まゆの事愛してるから離さないよ」とも。旦那は悪態を付き、迷惑しか掛けず、性生活は努力して保たせる気も無く、ただ捨て置くだけ。こんな扱いの中

まゆは美人だし気持ちいいし、最高なの。俺は一生まゆしか抱かない。まゆの事愛してるから離さないよ

例えやりたいだけにしても、こんな言葉を掛けられたら嬉しくならないはずがなく、離れがたくもなる。「俺、まゆの愛液の味も大好き。ずっと吸ってたい」とも興奮気味に言われ、感化された私も少し興奮して疼いた。

とある漫画の台詞。久しぶりに会った友人がマッチングアプリを使い浮気していると言う。それを聞き驚きながらもちょっと羨ましくなる主人公(どちらも主婦)に

「だってさ、旦那は自分を“鬼”にするけど、外の男は自分を“お姫様”にしてくれるよ？」

と言う。そのシーンを読み「本当そう」と笑っていたら旦那が帰宅した。私を鬼にする男が。彼は年齢や体質もあり、最近はもう勃起自体なかなかしなくなっている。たまに朝、布団をめくってみても朝勃ちすらしていない。男性機能さえ衰えていなかったら、きっと彼も外で他の女をお姫様にしていたかも知れない。その甲斐性があるのなら、お互い様だからご自由に。とは思うが、清潔感は皆無で女性から好印象を持たれようという気も無く、口を開けばモラハラ発言、相手を思いやれないのは若い頃からだから無理かな。

逆に、急に身なりを整えはじめたり帰りがパチンコ以外で遅くなったり出張が増えたら「やるじゃん」と思ってあげよう。但し発覚した時お互い様でしょ、とも言えるよう、証拠だけは集めておいて。

やっぱり旦那は、色んな意味で私を鬼にする。