相性

ダイキとは、何度別れようとしてもどうしても別れられない。私が全ての連絡先からダイキを排除してしまえばそれで済むのに、どうしても出来ないから。これは愛だの恋だのではなく、情。男は全く好きじゃなくても女を抱けるし抱いたとて情も沸かないが、女は抱かれれば情が湧く。前回言ったように、手が掛かる子程可愛いのは子供と同じだとも本当に思う。醜い私に「まゆは顔も綺麗で好み。それに体も声も中も、全てが最高で別れられない」とまで言ってくれるダイキを、切りきる事が出来ないでいる。いつぞや聞いた彼の経験人数は50人以上で、そこからはもう覚えていないという。その少なくとも50人の誰よりも私が最高と言われたら、嬉しいのも事実。ただそれ以上に彼との交際は彼のワガママや無理解に耐えなくてはならないのでやっぱり大変だけど。

ダイキと付き合いながらタカさんとしゅうくんも抱える生活は、やっぱり忙しい。タカさんとは車で40分程の距離だし彼から運転しこちらに来てくれるので、むしろダイキよりも会う頻度が最近多い。ダイキが月二回なら、タカさんは三回程。その上にしゅうくんの相手までするとなるとさすがにキツいし、若いしゅうくんもまた自分本位なので、深夜零時に『今から出てきてよ、外でしよう』などとメッセージが来る。彼の誘いを見ていると、自分はつくづく歳を取ったのだと痛感する。

この歳になると仕事をして家事をして子供二人の世話と旦那の世話をして、やっと寝られるという時間から野外セックスの相手はさすがに出来ない(笑)何度も来る誘いに「家庭があるからいきなりは出られないよ」「しゅうくんも、私一人と長く付き合ったらバレるリスクが上がるから、他にも相手を探してね」と言っているが「まゆエロいから、まゆがいい」などと返り少し辟易もしている。屑と罵られるのを承知で言わせて貰うなら、20も年下の若い男の味見は、一度すれば充分。なのではぐらかしては次に会う約束をなんとか回避していたり。そうするうち、飽きて欲しい。

そんな風に最近では、実質二人の男と継続中。

タカさんとは昼間に会うし車を出してくれるので会う負担が少なく、何よりタカさんも「全部好み」「まゆはずっと俺のものでいて」と大層気に入ってくれているのでなかなか付き合いをやめるのが難しい。ただ、タカさんには好き、という感情は不思議と抱かない。嫌悪する程悪い容姿ではなくむしろ良い方だし、抱かれればダイキ同様情が湧く。でも何度抱かれても好き、とは思わない。自分を気に入り可愛がってくれるその気持ちに感謝し、彼が求める自分の体を“こんな若さを失った体で良ければ”という気持ちで差し出しているような感覚だ。

毎日来る短いメッセージは「おはよう」から始まり寝るまで続く。

「これから会議だよ」と来れば私から「お疲れ様！早く帰れるといいね」と返す。私から「昨日は会えて楽しかった」と送るとあちらからは「大好きだから、また会いたい」と返る。という具合。ダイキのように「毎日通話したい！」などのワガママも無ければ「いいって言った癖に、嘘つき！」などの理解不能な激昂も無いので、私とタカさんの間には付き合い始めてから一度も喧嘩が無い。それを思うと、10月から2月まで何度も喧嘩や別れ話を繰り返しているダイキとの付き合いは、やはりダイキに原因があるのだと確信する。

タカさんは大人で、話が好きな人。セックスはS気味なので、前戯中は乳首を噛むのが好きでよくされる。私は受け身でややMだが痛みに歓びを覚える程じゃない。なので我慢が出来る程度だから黙ってされるがままになっているが、彼からしたら「痛い！」などと言われれば当然萎えるだろうし、逆に自分の激しい愛撫を素直に受ける女には興奮も可愛さも増すはず。私の反応にはいつも大層喜ぶ。

ダイキはたいして喜ばなかったが、タカさんは私の経験人数の少なさにも喜んでくれる。結婚以来15年もモラハラとセックスレスのクズ旦那一人としかせずに来た私が「私は何人もの男性に染まっていません、なのでテクニックというものは無いからつまらないかも。その代わりあなたに染まります、どこまでも」とMな発言をしてみたら凄く喜んでくれた。何も知らない女を自分の手で好みの気質に調教する事にも、甲斐を感じてくれている。まるで紫の上を育てる源氏の君のように。そんな彼もダイキに劣らず経験人数はかなりあるようだけど…

やっぱりセックスとなると、悔しいがダイキとのセックスが今までした中で断トツに気持ち良い。ダイキがどうしても気持ち良すぎて手離せない、と私に言うように、私もまたダイキのモノも、テクニックからも離れがたい。

セックスの相性なんて小さいモノとロクなテクニックも無い旦那一人としかしなかった頃は全くピンと来なかったが、4人の男を知った今なら分かる。私とダイキは、性格は合わないがセックスの相性だけは最高だと。気も合うなら良かったのに…とも思うが、逆に気が合わない部分があるから気持ちまでのめり込まずに済んでいるのかも。丁度良いといえば丁度良い。