幸福

まゆ

まゆ

公開日|2023.09.23

更新日|2023.09.27

よりを戻す事を承知したが、自分の中でどうしても過去に言われた暴言がやっぱり許せず、彼の為にわざわざ遠くまで出向く気ももう起きないので、ダイキには再度「やっぱり無理、戻れない」と送信した。当然、というか予想通りダイキからの返信は「戻る事を承知したのに、嘘つき」「言ってる事が違う」など文句の嵐。いい加減うんざりだもう、そう思い「そういうところ、本当に嫌いだった」とだけ送りブロックした。もう電話も掛けられたくないから着信拒否し、ダイキと知り合って初めて、全ての連絡手段をこちらから絶った。SNSのDMだけはあるといえばあるが、あちらはアカウントは削除済みなのでもう一度作り直さない限り接触出来ない。例え接触されてももう返さない。

付き合う中のほとんどの時間、喧嘩を繰り返しており、大事にもされず感謝もされず気に食わない時には罵詈雑言を山のように浴びせられてきた交際が、やっと終わった。代わりに私の中では、やすの存在がとても大きくなっている。やすに限らず他の男性もだが、誰であれダイキのようにぶつかる事は全く無い。皆、普通に優しさを持って互いの気持ちを読み合えるし、喧嘩になどならない。やっぱりダイキはおかしかったんだと痛感する。そのおかしな男に一年という時間を無駄に捧げたが、だからといって付き合った事を後悔まではしていない。ダイキが私に自信をくれた。彼が大好き、愛してる、美人だという言葉をくれていたから私は辛い中にも幸せも感じていた。だから憎みはしていない、ただもう関わって欲しくないだけ。

やすは毎日朝、昼、夕方、夜と仕事中もメッセージをくれる。障害者グループホームの管理スタッフ、中でも責任者という仕事は想像を絶する大変さというのは、彼が一日に受ける電話の着信の数だけでも物語っていた。「俺が今日受けた電話の数だよ」そう笑いながら見せて来たスマホの画面には、30件以上の表示があった。そんな多忙な中にも必ずメッセージをくれる事も嬉しいし、少なくとも嫌われてはいないのだとも窺える。そんなハードな仕事をしながら三人の子供の育児に料理まで一切を請け負う彼は、どうやら人から料理を作って貰う事を渇望しているらしい。味に自信無いかも、と言うと「簡単なものでいいよ、それを自分の為に作ってくれたって気持ちが嬉しいから」膝枕でそう甘えられたら、作らないわけにはいかない。いつか山か海にドライブに行こうとも約束しているので、その時はお弁当を作る約束をすると、予想以上に喜んでいた。そんな姿を見るとますます可愛くもなる。

セックスばかりじゃなく一緒にどこかに遊びに行きたい。そう彼は望むが、休日は家事と子供達をプールやテーマパークに連れて行くなどで終わってしまい、私も私でコロナの後遺症の咳が治まらないので遠出がしんどく、まだ行けていない。結局会うのは今の所ホテルしか無いが、私はそれでも充分幸せ。ダイキの場合は口ばかりで実行する気がまるで無いのがよく分かったが、やすの場合は本当に行く気があるのに出来ないのがよく分かるから。別にどこかに遊びに行かなくてもいい、私はセックスのみの関係でもいい。彼と一緒に居られるのなら何でもいいとさえ思える。

仕事の大変さも家庭の大変さも充分理解しているので、こちらからは会おうとは言わずあちらから誘って来るのを待つだけ。そして誘われたらいつでも承知する。だが会う約束をしている日、彼の仕事がなかなか終わらず会える時間がかなり遅くなりそうに。仕事で疲れている上30分以上も車を走らせこちらに迎えに来させ、その上セックスまで…となると大変だろう。そう思い「疲れないかな、会うのは後日にする?」とこちらから言ってみた。が「会わないと、逆に疲れが取れないよ」と言う言葉が返った。彼が望むなら、私はいくらでも付き合う。いつもの待ち合わせ場所に車が止まり助手席に乗り彼を見ると、彼は私服ではなく、グループホームのロゴが入った仕事の制服姿だった。着替える間も惜しんで会いに来てくれたのだと思うと、ますます嬉しくなる。例えそれが体が目当てだとしても構わない、彼に必要とされたい私は満足だ。「会いたかった」という言葉とともに手を握られ、気持ちが高揚する。ホテルに着き部屋に入る前、廊下を歩く彼の後ろ姿を見ながら改めて感じる。ダイキもそうだったが、やすも髪型も肌も体型も実年齢よりかなり若く見える。三十前後に見えるくらい見た目が若く眩しいし、今日は仕事場の制服だから「普段どんな服装で働いてるんだろう」と常々思っていたので見る事も叶い嬉しい。

部屋に入るなりベッドに仰向けになった彼が両手を広げ、私はその手の中に倒れ込む。キスしながらブラジャーのホックを外した彼が私の胸に顔を埋め「幸せ」と小さく言った。私が覆い被さるような姿勢で彼に跨がっている為私の下着越し、彼のズボン越しに股関同士が触れ合っている。その彼の股関に血が集まり大きくなったのを感じた。

彼のズボンをおろす私に彼が「軽くシャワー浴びるよ、仕事で汗かいてるから」と言うが「やすが良ければ、このままして」と私からねだった。もちろん私は会う前に入念にシャワーを浴びボディーローションでケアまでしているから言える事で、私も仕事帰りなら絶対触らせないが。。。互いに服を脱がせ合いそっと先端を口に含むが、大きい彼のモノは私の口にはいつも半分も入らない。苦しくなりながらも丁寧に舐めていると、彼が体勢を変え私を仰向けにし自分が上に乗った。男性上位のシックスナインの体勢になると、彼が私に舌と指の愛撫を施す。経験人数は6~7人程度だというが、その割に彼はセックスが上手い。こちらの感じる場所を時間をかけ刺激してくれるし、後ろの穴まで舌が這う。我慢出来ずに彼のペニスから口を離し「イク…」と言う私に「凄い濡れまくってるし、ずっと中が締まってる」と返して来た。そしてやっぱり一回イッただけでは許されず、何度も絶頂させられた。

散々イカされ息も絶え絶えになる私にのし掛かると、太い彼のモノが挿入される。いつも最初に入れる時は裂けるような感覚がして少し痛い。セックスに慣れた私も毎回挿入し始めは難儀する程、彼のペニスは大きいのだ。が、入ってしまえばすぐに慣れピストンされ快感を覚える。散々正常位で突かれ絶頂させられたが、今度は体勢を変えバックでも突かれる。私はバックが感じるので、シーツを掴んであられもない声で喘いでしまう。太い彼のモノで突き上げられる快感に、溺れるような感覚を覚えた。

やがて彼は膣内に射精したが一度目の逢瀬から変わらず、イッた直後も彼は私を離さない。抱き締めながら他愛ない話をする。ただ今日は仕事終わりだし特に忙しかったらしい、眠そうな素振りだったので「寝ていいよ、適当な時間に起こすから」と言ってみた。が「寝ないよ」と返りまた彼が私の上に乗る。ついさっき射精したばかりの巨根はもう勃起しており、私の中に入れられた。正常位でもう一度繋がり、二度目の射精をしたらさすがに持たなかったらしく、寝息を立て始めた。抱いている腕を起こさないようにそっと外し、私だけが浴室へ。ある程度まとまった時間寝かせてあげたいが、私はやる事が無いので暇潰しも兼ねジャグジーバスに入る事に。バスライトとジャグジー機能を付け、たまったお湯に入浴剤を入れゆっくり身を浸す。

好きな人がいる生活は、やっぱり幸せだ。丁寧な愛撫や力強い挿入も、終わった後のキスも、会えない時のメッセージのやりとりも、全てが私の生活の潤いになっている。お陰で最低なモラハラ野郎の旦那にも腹が立たなくなり、家族の世話、家事、仕事全てに意欲的になれている。やっている事は『不倫』という倫理に外れた行為であれ、そこには私なりにルールを課している。当たり前だが誰も泣かせない事、望まぬ妊娠を避ける事。そのルールの上での逢瀬に、私は微塵の罪悪感も無い。ジャグジーバスから出て身支度を整えながら、そろそろ起こさないと…と思っていたら彼が自然に目覚め、気だるそうに半身を起こした。

「やべ、ごめん寝ちゃった」と謝る彼に「全然ごめんじゃないよ、疲れてるのに来てくれてありがとう」と返す。彼が身支度を終えるのを待ち、ホテルを出て車に乗る。外は小雨、毎日暑くて辟易していたが、雨がちらつく夜は涼しさを感じた。いつの間にか秋になっていたんだ…そんな事を思いながら発進した車の窓から外を見ていたら、彼が私の手を取った。運転中も必ず私と手を繋いでくれるのも嬉しい。そんな彼がポツリポツリと話し出す。「今日は仕事の終わり際、利用者に椅子を投げ付けられたよ。当たらなかったから良かったけど、こんなの日常茶飯事。昨日は薬を飲むのを拒否した利用者が、窓から飛び降りようとするのを体当たりで止めた。窓は転落防止に全開にならない仕様だから、渾身の力で割ろうとしてね。そういう時の力ってのは凄くて、初老の女性だけど俺一人では止めきれないくらい」そこまで言った彼は、言葉を止め「この信号、右だよね?」と私に問う。壮絶な仕事内容を聞き何ともいえない気持ちになっていたが、私も慌てて「あ、うん、そう」と答えた。

「俺の仕事は、人間の死がとにかく身近なんだ。死が身近な仕事は病院勤務も同じだけど、病院での死は比較的静かだと思う。でも障害者施設の死は暴れて叫んで自分を刺したり首を絞めたり…計り知れない。好きで選んだ仕事だから頑張るつもり、でもね、たまにこっちもおかしくなりそうになる…」実感の籠った言葉を聞くうち、車が私のいつも降りる待ち合わせ場所に着いた。

なぜだか涙が出そうになり、堪えた。それを気取られ「どうしたの?」と聞かれたので素直に「聞いてるうちに、泣きそうになっちゃって」と返した。優しい彼の顔が、更に優しく笑む。「泣かないで、でも俺の為に泣いてくれて嬉しい」そう言う彼にキスをされ、髪を撫でられ思わず照れた。「だからね、まゆに会ったり会えない時メッセージで話聞いて貰ったりする時間に、凄く救われて癒されてるんだよ。これからもずっとずっとよろしくね」その言葉に短く小さく、けれど心を込めて「こちらこそ」と返した。彼の何もかもが好き、どうかずっと一緒に居られますように。そう願いながら車を見送った。

今ある家族から奪うつもりなど毛頭無いし、私も自分の家庭を壊すつもりも無い。隠れてでいい、たまにでいい、多くは何も望まない。ただ、時折私達が会う数時間の幸福だけ許して欲しい。発覚などせず見逃され続けて欲しい。そう強く願う。

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