キーワードで探す
蜜月
まゆ
公開日|2023.09.27
更新日|2023.09.27
私は若い頃、良い恋愛をあまりして来なかった。好きでも上手く行かずに短期間で別れてしまったり、私はたいして好きになれないのに相手だけが熱を上げたり。自分も愛して相手からも愛される相思相愛で、幸せだった交際というのがあまり無い。旦那との結婚も何となく三年交際し、適齢期だったからそのまま籍を入れただけ。まだ若い頃はそれなりにマシだった旦那も、今ではモラハラばかりで良い所が一つとしてない中年に成り下がった。旦那が私と結婚を決めたのは、恐らく私が従順だったから。その通りに私は、家事育児もやる気が全く無い旦那に何も期待せず一人でこなし、あれが欲しいこれをしたいというワガママも言わず欲しいものは自分で稼いで買い、従順に暮らした。旦那の思い通りに。
どんなに完璧にこなそうが旦那に文句を言われ、息子二人は幼い頃は怪獣で育てば母に塩対応。何の楽しみも無い結婚生活の中、時折自分の若い頃を振り返り「もっとちゃんと恋愛しておけば良かったな。良い恋愛をした思い出でもあれば今に諦めもつくけど、若い頃も今もトキメキも何も無いなんて、寂しい」などと過ったりもした。ただ過った所で時計の針は戻せず、若い頃には戻れない。中年になった今振り向いてくれるような人も居ないし出会う手段も無いし、何より結婚した身では何も行動出来ない。
つい一年前まではそう思っていたが、気付いてしまった。この歳になっても同年代からはそれなりに需要はあり、出会う手段も昔と違いたくさんあり、結婚した身であれ発覚しなければ行動が出来る事に。
今日は私は仕事が休み。渡した所でさして感謝もされない弁当を息子二人と旦那に渡し送り出したら、今日はどこにも出かける予定は無いので家でのんびりしようと思いドリップコーヒーを淹れた。本当はやすに会いたい、今日は確か休みだと言っていたし。ただ彼は子育ても家事も仕事も抱える身、女房も子供達も仕事や学校に行き一人になれる時間は貴重なはず。なので休みが分かっていてもこちらから「なら会おうよ」などと持ちかける事は無い。一人ゆっくり休息して欲しい。また彼はスノーボード、パラグライダー、キャンプ、釣りと多趣味でもあるので、余暇があるなら自分の時間に優先的に休みを使って欲しい。私の休みもあちらから聞かれない限り伝えないので、彼は私も今日休みであるとは知らない。
会わない今日は、彼は何をして過ごすのだろう。そう思いながらコーヒーを啜っているとスマホにメッセージが入った。「おはよう、今日は休みだから釣りに行こうかなと思ってるよ」という文面に「おはよう、私も今日は休み。出掛ける予定は無いから家で過ごす」と返した。すると「まゆも休みなの?だったら会いたい、短時間ドライブしたりカフェ行ったりだけでいいから」と来た。セックスありきではなく、しなくても会いたいと言ってくれる事が嬉しい。なので「いいよ、でもせっかく釣りに行こうとしてたのに何だかごめんね」と言うと「釣りはいつでも出来るからいいよ、まゆに会えると思うと嬉しい!すぐ出るね!」とも返る。…ちょっと待って、男のあなたはさして支度に時間は掛からないだろうけど私は時間が必要、シャワーを浴びてボディーローションを塗り髪にヘアオイルを付けブローし化粧もするから。今から始めたらどんなに少なく見積もっても40分は掛かる。慌てて「支度するのに少し時間が要るよ?」と送信したが、それには既読が付かない。自分も軽くシャワーを浴びているか、下手したらもう車に乗ってこちらに向かっているのかも。来るだけでも40分は掛かるから、その間に支度をしなくては。焦りながら髪を乾かしたりメイクをしたが、しながら「会いたい!」にいいよと返したらすぐに家を飛び出す所が可愛くも思える。私に会いたい気持ちが素直に分かるから。
いつもなら少し女性らしさを意識した服を着るが、今日は支度の時間があまり無かったのでクローゼットに仕舞った良い服ではなく、普段友達と会ったり一人で買い物する時のようなファッションになってしまった。ちょっと派手めなプリントの黒いTシャツにレギンスにリュック、ピアスは前日から替えていないカットガラスの飾りが垂れるフックタイプ。そんな格好を見た彼は「そういうラフな服も凄く似合うね」と言ってくれた。「俺は直前まで釣りに行こうと思ってたから、こんな格好でごめん」と謝るが、ハーフパンツにシャツにスニーカーというスタイルはシンプルだけどとても良く似合っている。「かっこいいよ」と素直に返すと「まゆは俺を誉めてくれるよね、そんな所も大好き」と言って車を発進させた。大好きと言う言葉に少し照れて、窓の外に目をやる。彼は休みとはいえ、自由になる時間は子供達を幼稚園に迎えに行く3時まで。その前に帰っていなければならないので、1時半には帰らねばならない。「3時間か、まあまあ遊べるよね。どこに行こう?行きたい場所ある?何か食べに行ってもいいし海まで走ってもいいよ」と提案してくる彼の方を振り返ると、彼のハーフパンツ越しに勃起しているのが見えた。通常時でさえ他の男の倍の大きさなので、勃てば服の下であれかなり目立つ。笑いながら手を伸ばして触ると「あー…ごめん、まゆと会ったら大きくなっちゃった」と向こうも笑った。
「したいなら、ホテル行こう?」
「俺は嬉しいけど、毎回ホテルばかりで会うのは嫌じゃない?今日は普通に遊ぼうよ」
「嫌じゃないよ、やすとならどこに行っても何してても楽しいから」
そんな会話を経て、行き先はホテルになった。会えない時には何をしているか気になり、メッセージが来れば嬉しくて、会いたいと言われたら歓喜しすぐに支度して、会えばかっこいい姿に見惚れる。私は若い頃にして来なかった恋愛を今頃になって楽しんでいる。ダイキとの交際のような自分の思い通りにならないと罵詈雑言浴びせられる事も、彼からは全く無い。
ホテルの部屋に入れば優しいキスから始まり、服を脱がされ身体中を唇、舌、指で愛撫され何度も絶頂させられる。我慢出来なくなってねだる私に「まだダメ」とお預けを散々した末に激しく挿入する彼に組み敷かれ、抱き合っている最中は何も考えられなくなる。筋肉の付いた逞しい腕に抱えられながら、この瞬間がずっと続けばいいのに。とも。
彼も私の胸に顔をうずめる時や挿入中、たまに小さく「幸せ」と呟く。それを聞いた私も「私も幸せ」と返す。そんな蜜月を私は今、精一杯楽しんでいる最中。発覚したら慰謝料を払うし死んだ後姦淫の罪で地獄に落とされても構わない。元よりそれも覚悟の上で、私は彼を受け入れているから。
もっと読みたい!あなたにおすすめの記事はこちら
ログインをすると利用出来ます
コメントを書く