flower viewing

康弘の子供はまだ小さく、一人がインフルエンザに罹れば芋づる式に他の家族に感染する。本来子育てに時間を取られる期間は不倫どころではなく、一段落し子供が12歳以上になったら余裕が出来た時間を不倫に充てるものだと思っていた。が、やすはまだ子供が2歳くらいの最も手が掛かる時から不倫していたという。私にしても、正直小さい子を抱えた男とは付き合いにくい。感染症などの突発的なハプニングが多く、ドタキャンされやすいから。事実やすとの付き合いも病気で会う日を延期する事が多い。「花見行かない？花見の時は弁当作ってよ」という希望に応じ忙しい中材料を買ったのに、前日になり「ごめん下のチビがインフルになった、俺も喉痛い」などと夜に連絡が来ると「誰かと付き合うのは無理じゃない？今の状態は」と返したくなる。言わずにいるが、逆を言えば今の仕事も家族も手一杯抱えた状態だからこそ、息抜きに会う相手が必要なのかな…と理解する事に。ただその時はついこちらも機嫌が悪くなり「また前日にキャンセルされたら材料無駄になるから、作るのは無しでいい？」と返してしまった。家族の病気はやす本人のせいでは無いのに、謝らせてしまいその後ちょっと自己嫌悪したりも。

延期になった花見の当日、会ったのは一ヶ月ぶり。助手席に乗るなり「遅くなってごめん」という言葉と共に包装紙が掛けられた箱を渡された。「ホワイトデーも会えなかったから、渡せなかったんだ」だそうで、箱はホワイトデーのプレゼントらしい。忘れていると思っていたので不意打ちされ嬉しい。「覚えていてくれたんだね、嬉しい、ありがとう！」と素直に気持ちを伝えた。今日は彼が調べて場所を決めており、車で30分程のワイナリーへ行く。庭園がありこの季節は桜が綺麗に咲くそう。彼はセックス以外にも紅葉、クリスマスイルミネーション、花見などただのレジャーのみの外出にも私を誘う。体ばかりでなくただ一緒に居るのも楽しいから誘ってくれるのだろうから、そこは嬉しい。

明治時代に建てられた洋館のあるワイナリーは、雰囲気も良いが庭園に連なって植えられた桜が見事に咲き誇り、散歩するだけでも気分が良い。桜を見た後は運転手の彼は飲めないが、私だけ桜の香りが付けられたワインを試飲したり、桜あんのデザートを一緒に食べたりも。ワイナリーは貯蔵庫の見学も出来たので行ってみたが、ワインの特性上暗く湿度のある造りになっており、ほとんど灯りが無い地下を歩く。平日で人が居ない事もあり自分達の足音しか響かない真っ暗な空間は、少し怖い。手を繋いで歩いていると、やがて突き当たりの物置のような空間に行き着いた。そこは今までポツポツ設置されていた剥き出しの小電球すら無く文字通り真っ暗。スマホで照らすと、当時のまま酒樽が積まれた三畳ほどの空間だった。スマホを私が仕舞うと、彼が突然私を掴みキスして来た。相手の顔すら認識出来ない程暗いが、背の高低差の感覚で私の顔の位置を捉え彼の唇が上手く当たる。

ワイナリーの暗闇でのキスも思い出になるな…などと思っていると、彼の手が胸にいきやがて下着の中に。人が少ないとはいえ客はまばらながら居て、当然ここにも他の客は来る。暗いと言っても突き当たりの暗闇に男女が留まっていたら察しは付くだろうし、こんな場面人に見られたくない。「誰か来たらまずくない？」と聞いたが「ごめん、久しぶりに会ったから興奮しちゃった」などと返り苦笑した。静かなので他の客の足音もよく聞こえるから、来たらやめればいいかと私の気も少し緩む。暗がりで指を挿入され、そのうちあちらがズボンをおろししゃがんだ私が咥える。ただ射精まではさすがにある程度時間が掛かるので、長くはせずに少し舐めたくらいで二人とも衣服を直した。物置空間を出た直後、通路の向こうから足音がして老人がこちらに歩いてきた。あと少し出るのが遅かったらとんでもない場面に出くわされていた所。思わず小声で「あとちょっと出るの遅かったらヤバかったじゃん」と言い肘で軽く突くと、彼が楽しそうに笑った。

その後は資料館を回ってもう一度桜の植えられた庭園を歩きながら駐車場へ向かう。その途中桜の形の絵馬を書いて提げられるイベントをやっていたが、雨脚が強くなってきたので書くのは諦める事に。私が何気なく「書けたとしたら、どんなお願い書いた？」と聞くと「まゆとずっと一緒に居られますようにって書きたかった」と彼が答えた。「優等生の答え」と返し笑ったが、実は素直に嬉しかった。

彼が予め傘を用意してくれていたので、相合傘で歩く。彼がスマホをバッグに仕舞う時に傘を持つのを私が一瞬請け負ったが、彼の方が背が高い為彼に差す時は私はかなり腕を上げる必要がある。身長差を改めて感じて、それも少しときめいた。ただ、イルミネーションを見た時と今は少し気持ちが違う。彼は私だけのものじゃなく奥さんのもの。と意識させるような彼の言葉のせいで、私もそれを意識してしまっているから。それでも、ホワイトデーのプレゼントを用意してくれるのも紅葉や桜を見る日をわざわざあちらから作って提案してくれるのも、雨の中ほとんど私にしか傘を差さず彼の肩が全く傘に入らず濡れているのも…多少は好きだからなのだろう。だから今はその気持ちだけで充分。失言をいつまでも引きずるより、今私に時間を割いてくれる事に感謝して私も彼を大切にしよう。そう思っている。

100％ではないけど99％は幸せ。そんな気持ちで手を繋ぎ歩きながら桜を見た。

車に戻り時刻を確認するとまだ昼の1時半、外は雨で屋外では過ごしにくい、けれどまだ帰りたくはない。なんて考えていたら彼が私の手を取り股関に誘導した。すでにガチガチになったモノを触らせ「部屋でゆっくりしない？」と言う彼に、笑って「いいね」と返した。帰り道にある初めて入ったホテルは、相当古い建物を申し訳程度にリフォームしただけ、浴槽も小さく使い勝手が悪い。でも人目に付かず二人きりになれる場所があるなら、私達はどんな施設だって構わない。部屋に入りシャワーを使い、一ヶ月ぶりの合瀬を楽しむ。丁寧に愛撫され挿入され、途中腰の下に枕を入れられ再び挿入されると私はすぐにイッた。上部にあるGスポットに彼の先端が当たる位置で挿入されると即絶頂する。そのリアクションが分かりやすいようで、事後「角度変えるとイキやすくなるよね」と彼からも言われた。彼も40に近い年齢だけど三時間で三回、最後は私の口に射精。途中、いつも私は後ろの穴を舐められ時には指まで挿入されるが今日はあちらから「俺にも指入れてみて、嫌ならしなくていいよ」と言われた。私は余程じゃない限り拒否はしないので、この日も素直に四つん這いの彼の後ろの穴を舐め、指先を挿入した。が、彼は毎回遠慮なしに奥まで差し込むのに対し、私は痛かったらと考えてしまい、深くは入れられず。少しに留めたが男性の中に指を入れたのは初めての経験なので、それなりに私も高揚した。そんな少しアブノーマルな事もしつつ、互いに会えなかった期間を埋めるように気が済むまで貪り合いホテルを出る。

ホテルでコンタクトを外した彼が車内に戻りメガネを掛けた時、普段と違う姿に私は思わずニヤけてしまった。ラフだけどよく似合う清潔感のある服装と髪に、メガネは新鮮な感覚。視線に気付いた彼に「ダサい？」と聞かれ「違う逆、かっこ良くてニヤニヤしちゃった」と口に手を充て照れながら言うと彼は「かっこよくはないよ」と笑って返した。

引き締まった体もシンプルだけどセンスの良い服も髪型もメガネも、全てかっこいい。それに優しいし会話も楽しい。

やっぱりこの人を離したくない、そう改めて強く思う。

いつも降ろして貰う駐車場に着き、雨で車内が見えないからいつもよりおおっぴらにキスを交わし、楽しかったと礼をして別れる。別れ際はいつも寂しい。帰宅後はホワイトデーのプレゼントを開ける。箱の中にはディフューザーが入っていた。ガラスボトルにオイルが入っていて、蓋を取り造花とスティックを差し込んで使う。香水が好きな私の好みを分かった上でのプレゼントが殊更嬉しい。

「プレゼントありがとう！好みの香りだし可愛い、オイル無くなってもボトルずっと飾る。それと今日はお花見連れて行ってくれてありがとう、楽しかった。幸せ」

そうお礼のメッセージを送ると、ほどなくして

「お返し渡すの遅くなってごめん、気に入って貰えて良かった。まゆと桜見るの夢だったの、だから俺も凄く幸せ！」

と返る。世間ではタブーだろうがなんだろうが関係ない、私は彼が大好きでこれからも一緒に居たい。地獄に堕ちても構わないから。