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unsavory ties
まゆ
公開日|2024.05.14
更新日|2024.05.15
植物園に行ったり、会えない日はSwitchのゲームでオンラインプレイをしたりメッセージで会話したり、やすとの交際が順調な中GWから音沙汰が無くなったダイキの事はほぼ忘れかけていた。思い出しても、連絡が無いという事はさすがに新しい女を探す気になったかと思い、こちらからも特に返信せず。もう面倒だからこのまま音信不通で終わりたい、そうも思っていたが…。DMに連絡が来た。時刻は夜の1時を回っている。『上司が異動になって俺が受け持つ仕事の量が増えて、毎日凄いストレスだった、連絡も出来ないくらい。今も寝付けないから飲んでる』そう書かれた文面に、自分に飽きてくれたからでは無かったのかとうんざりした気持ちになる。既読を付けてしまった以上無視も出来ないと思い「明日も仕事なら、もう寝ないとまずくない?」と返してみた。
「眠れないし、毎日本当に嫌になるくらい仕事量多くて、おかしくなりそう」
「まゆとLINEしたりたまに会ったりは、俺には本当に癒しになってたんだよ、居ないとだめだ」
「まゆは優しかったから」
並べ立てられた言葉はこちらが復縁を望んでいるなら嬉しいが、そうでないならただひたすらに重荷なだけ。なら優しくしていた時に罵倒したり気分で冷たくしたりしなきゃ良かったろうが。そうも返したくなるが、喧嘩すら面倒なので黙っていた。ただもう本当に、ダイキとの交際は私にとっては負担にしかならない。年明けから何度か会っているが会う度に思う、顔を見ても声を聞いても高鳴らない、ほぼ他人に対する感情と同じで胸が湧かないのだ。以前は好きだったはずなのに。セックスの相性は良くても会いたいとも、会えて嬉しいとも思わない。
もう一度会えない理由を伝えよう。そう思い、会いに行く時は私の方が都内に行く事になり、距離があるから負担になっていた事。会っていた曜日も仕事が入るようになり、これからはダイキの望むような頻度では希望の曜日に会えない事。それらを説明するも「なら俺からそっちに行くよ」「今までみたいな頻度で会わなくてもいいから」と食い下がる。あまりにもしつこいので、やっぱり最終的には「たまにしか会えない、それでいいなら」と私が引く事に。この人は去年の夏から今まで、私の別れたい希望を全く聞き入れない。どんなに私が嫌って時には傷つくような言葉を吐いても、必ず「まゆじゃなきゃダメなんだよ」と返す。恋愛はどちらも気持ちがあれば最高だが、片方が熱を上げすぎたり片方が冷めてバランスが一度崩れたら目も当てられない。私が仕方なくダイキに従っているのは、もはや逆上して刺されない為に仕方なく、でしかない。ただ同時に心の奥底で、私もまた彼を捨て切れない気持ちもある。美人でもない私をここまで好いてくれる事を思うと、最後の最後にはいつも振りきる事が出来ないでいる。
まさに腐れ縁と呼ぶに相応しい関係。
そんなやりとりから遡りGWの事。従姉妹が泊まりに来て夜は二人で宅飲みをしたが、テレビに以前不倫報道の出たタレントが映ると「ああ、こいつも不倫してたよね。全く、私の職場の奴らもママ友も、誰も彼も不倫してるの。それを自慢気に話して来るから嫌になる」と顔を歪めて話し出した。そう話して聞かせてる目の前に居る私も不倫してるけど。と思いつつ缶ビールを飲みながら彼女の話に耳を傾ける。
私は不倫なんて愛する息子に顔向け出来ないような最低な事はしない、私は拓ちゃん(旦那)が大好きだし、旦那と息子に尽くして、二人からも愛されて幸せなの。それを不倫なんて汚い事して偽りの満足しか得られない連中は、ほんっと可哀想!
そう語る、彼女が拓ちゃんと呼び新婚から同居を強要し給料は生活費しか渡さず義父母の面倒も生まれた息子の面倒も押し付け、彼女が辛い不妊治療中には浮気していた旦那に、彼女は30年従い続けてきた。にも関わらず、これらの振る舞いは直らず旦那は彼女を一向に愛さず、命より大事と執着に近い愛情を注いできた一人息子も恋人の独り暮らしのアパートに入り浸り帰らない。それでも何の魅力も無いように見える旦那を捨てもせず別の男に走りもせず、ただひたすら慕って尽くす彼女はある意味妻の鏡だ。彼女は決して醜女ではなく、むしろ歳の割には若く可愛い方だ。その彼女が浮気を一切咎めず認知症を発症し失禁を繰り返す義父の面倒を見て、食事は全て手作り無添加を心掛け必死に機嫌を取るのは、全て旦那に好かれたい一心が故。それなのにそこまでしても、彼女の旦那は彼女を見ない。これもこれで残忍で、不倫する奴らなんて可哀想!と叫ぶ彼女自身こそが時々可哀想になる。
そして話すついでに初めて知ったが、彼女は旦那一人しか経験人数が無いという。頭の中で(私は何人だっけ)と数えるも、一度寝ただけの男も多くて思い出しきれない。だが「まゆは?」と聞き返され反射的に「私は二人」などと返してしまった。中年まで不倫などして来なかった私を、従姉妹はまだ自分と同じくクズ旦那の顔色を窺い恋慕う良妻と思っており
「私達は旦那一筋よね!周りは不倫女ばかりだから、真面目なまゆと話すとホッとする」
と返された。誰が旦那一筋だって?笑わせないで欲しい、悪いがうちのもあんたの旦那も最低で、良い部分が一つも無い。若気の至りで一緒になったが、あんなのが人生で最高の男なわけが無いだろう。誰があれの為に1から100まで言う事を聞いて操立てするんだ、私はあんなやつの為に自分を押し殺して我慢なんかしない。そう思い吹き出しそうになったが「まあ私は旦那は好きではないけどね、そこまで」とだけ返す。途端にサレ妻である彼女の目尻が上がった。「え、旦那を好きじゃないなら、まゆも不倫した経験あったりするの?」と問われ、はいと答えたら飲んでいるビールを頭から掛けられかねない雰囲気の中「浮気になるかも、但し恋愛ゲームのアプリね」と答えた。「やだぁ、そんなのあるの?でもそれはちょっと興味あるかも」と笑う彼女にすっかり飽きてやらなくなった恋愛ゲームアプリを起動して見せる。その最中「アプリじゃなくダイキが撮った接写の中出し動画を見せて『アレをぶっ刺されて中に射精されてるのは私よ、相手は旦那じゃない』なんて言ったら彼女はどんなに驚き、私を憎悪するかな…」などと考え口の端が思わず上がってしまった。万一にでも他人が見るような事が無いよう、該当の動画はセキュリティフォルダの中に厳重保管してあるが。
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