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Birthday
まゆ
公開日|2024.07.20
更新日|2024.07.26
「まゆの誕生日はどこ行こうか」平日夜の逢瀬を終えた帰りの車で言われたが、アクティブな康弘と違い私はどちらかというと元来があまり遠出したがらない出不精。まして真夏は化粧は崩れるし息苦しいしで炎天下を歩くのはむしろ嫌いだ。なので「誕生日は平日夜だと時間が無くて行けない、ちょっと遠目のホテルにフリータイムで籠りたい。遠目って言ってもここから車で30分くらいだけど、お洒落なホテルがあって前から行きたかったの」と提案してみた。「やすも普段忙しいから、逆にフリータイム中うたた寝したりSwitchやったりのんびりして」そう付け加えると「俺あんまり『休みたい』とか『のんびりしたい』とか思わないんだよね」と返った。
「普段帰り遅いし研修とか会議もたくさん入ってるし、会社の野球チームの練習もあるから疲れてはいるでしょ?」「疲れは感じるんだけど、だからって空いた時間にずっと寝てたいなぁ、とか何もしたくない、とか思わないんだよ。だからまゆの誕生日は朝からどこか出掛けてもいいかな、と思ってたんだ。ちょっと遠いけど俺運転するし、袋田の滝とか見に行ったり。でも主役はあくまでまゆだからね、まゆが行きたいのがホテルならそうしよ」…こちらからリクエストせず黙っていたら、駐車場から山道を長々歩かされる滝に連れて行かれていたのか。と思わずホッとしてしまう(笑)
ただ、そうだったとしても嬉しい。私と過ごす為に一日休みを取ってくれる事自体が有難いといつも思う。
そして当日は、私が数回行った事のある値段の張らないイタリアンレストランに行き軽いランチを終えてからホテルへ向かった。プレゼントは事前に私のリクエストで指輪を買って貰っているしその上今日のホテルはラブホテルの中でも少し良いランク、フリータイムは18000円くらいの値段。これは彼に支払わせず自分が払いたかった。普段から私は彼の財布をアテにした事は無く、いつも払わせない彼に三回に一回は彼の顔を立てる為に甘えるが、他はホテル代などは数回分彼に奢って貰った分がたまると、彼がシャワーに行っている間などに彼のバッグのサイドポケットに紙幣をねじ込み返却している。後から気付いた彼に「また返したな?要らないよ」と後日返されるので結局支払いは私は全くしていないが、出来たら受け取って欲しかった。
何より彼が私に会いに来る時はガソリン代も掛かる。それも払った事が無いので今日くらいは持ちたい。私は彼からお手当てを頂いているパパ活相手でも愛人でもない。あくまで対等な付き合いでありたいから経済的な負担も一緒に負いたいのだ。
が、私が先に支払おうと意気込んでいたがそこのホテルはいつも使う先払いシステムのホテルと違い、自動精算の後払い式だった。支払い云々は後にし部屋に入ると、綺麗に手入れされた熱帯魚の泳ぐ大きな水槽が目に入る。インテリアも全てシックで奥には大きなテラスとジャグジーバスがあり、値段がそこそこするだけある造りだった。「綺麗ー!」と思わず感嘆しながら水槽の写真を撮っていると、やすに手を引かれベッドに座らされる。「まゆからのリクエストのプレゼントとは別に、俺から」と渡されたのは充電式の大人の玩具だった。「え、嬉しいけどお金使う事無かったのに。でもありがとう、さっそく充電しておいて後で使おう!」余計な出費をさせてしまい申し訳ないなと思う反面、価格はせいぜい2~3000円と分かる物なので、過剰な遠慮はせずに気軽にそう言って受け取った。
すると私の空いた方の手にも紙袋が提げられた。「?」と思っていると「こっちが本当に渡したかった方。喜んで貰えるか心配だけど」と彼が言う。紙袋の中の箱を開けると、中にはケイト・スペードの腕時計が入っていた。「え、嘘!」思っても見なかったサプライズに声が出てしまった。ケイト・スペードの腕時計も価格はピンキリだが、選んでくれたそれは雑誌で6万前後の価格帯で紹介されていたはず。結婚を前提にした真剣交際のカップル間ならやや安めのプレゼントかも知れないが、年増の不倫相手である私からしたら過ぎた贅沢な贈り物だ。「やだ、指輪ねだって買って貰った上にこんな良い物貰うの悪いよ」「めちゃめちゃ高価って物でもないよ、でも買う時は緊張した。この前研修で東京行ったじゃない?で、店舗があったから入ってはみたんだけど…見事に客が女性ばかりで俺なんて場違いでさ。冷や汗かいた。でも店員がプレゼント探してるって言ったらお薦め見せてくれて、なんとか買えたよ」
先日の出張で行ける範囲は銀座の店舗か、外観から女が好みそうな物を扱うブランドショップだと判断はしたろうが、ケイト・スペードのブランド自体彼はあまり詳しくないはず。入ったはいいが何を見ればいいか分からず狼狽したであろう姿が目に浮かぶ。それを想像すると少し可笑しいが、同時に私の為に行き慣れない店に飛び込み、プレゼントを選んでくれた事が心から有難いし嬉しい。
ダイキも旦那も、私の為にそんな事をする発想そのものから無いクズだっただけに、余計に嬉しくなる。
抱きついて「ねー凄く凄く嬉しい!箱も袋も全部大事に保管するし、本当はずっと大切に飾っておきたいけど、せっかく頂いたからお出かけの時に使わせて貰う!ありがとう!」とお礼を言い頬にキスした。彼は「喜んで貰えて良かった」と言いながら私を横抱きすると、ベッドに寝かせた。
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