元鞘

まゆ

公開日｜2022.11.15

更新日｜2022.11.15

些細な事でヘソを曲げるのも怒りっぽくなるのも、全て私が原因と何となく分かって来た。「旦那にされる時も潮吹きしてたの？」と聞いてきたのはダイキの方からなのに、「まあそうだね、体質だから」と答えるとみるみる機嫌が悪くなる。そんな一面も面倒ながらも可愛いと感じていたが、度が過ぎればこちらも付き合いきれなくなる。

私が何もしない旦那に代わり一人で息子達や友達を連れショッピングモールに出掛けている時、ダイキからLINEが入った。今日は私はどうしても会えない、子供の面倒を見ないとならないからと言っておいたのに。子供達に昼食を食べさせている間少しその場を離れ、子供達の前では開く事など出来ない内容の『まゆを抱きたい、一人で家に居るのは寂しい』というLINEに『してあげたいけど今日は我慢ね、次会ったらたくさんしよう』と返すと

『もうまゆが嫌いになった、本当に嫌い』

と来た。仕事は割と良い会社に勤めているからそれなりに優秀なんだろうけど、プライベートのこういうやりとりはまるで小学生のよう。毎回の事だけど私にも蓄積したストレスもあるので、この時ばかりは心から別れようと思った。LINEではなく電話を掛ける。「私が今日、子供連れて出掛けていて身動きが取れない事は分かってたはずだよ？ならもう別れてよ」そう言うとダイキが「分かったよ！お前も二度と連絡して来るな！全部のSNSブロックしろよ！俺もするから！」と怒鳴って来た。付き合いきれない、そう思い全てのSNSをブロックして気持ちが晴れる。

その日の夜、ダイキから携帯に電話が入った。メッセージツールは全てブロックにしたが、着信拒否は忘れていた。何度も鳴るので仕方なく出ると「ごめん、ブロック解除して、お願い」と泣きそうな声が返る。ここで止めておいた方が絶対良い…でも多少の情も残ってる。その情のせいでブロックを解除すると、途端に積み重なるようにメッセージが次々届いた。

『ごめん、絶対別れたくない。愛してる、お願いだから離れないで』

『いつも会えなくて寂しいとか、焼きもちから辛く当たってしまうんだ。まゆが居ないと生きていけない』

『頼むから側にいて、まゆは俺のもの、絶対離したくない』

放っておくと、メッセージは15通も入りなおも止まない。さすがにここに来て、私はまずい相手とくっ付いてしまったのかも知れないと思うように。いつもダイキは「心も伴う交際だよ」「彼氏彼女って認識して付き合おう」「俺達は一生、ずっと一緒に居るんだよ」と言うが、私は話半分で聞いていた。なにしろ互いに家庭がある中の不倫なのだから独身同士のような真剣交際の認識にはならないし、いつか必ず別れる事にもなる。でもダイキは本気で私を一生離さないつもりだったんだ…。結局この日も私が根負けし、元の鞘に戻った。

幸いまだ、ダイキ自身も自分の家庭を壊してまで私を選ぶという気は無いようだ。そこまで入れあげられたらこちらの家庭までも入り込まれ壊される。それは絶対避けたい。けれどいずれにしろ私を手離すつもりはなく、ストーカーじみた発言までするようにもなり、怖いと感じるように。

初めてチャットで話した日、ダイキより前に入室してくれた人がいたけど私の操作ミスで話せなくなり、直後ダイキが入室し今に至る。ダイキはそれを「運命だよ！あの時ズレたお陰で俺がまゆと話せて付き合えた！」と言う。私もある意味運命だとは思う。ただその運命がこれからどうなって行くんだろうという不安に苛まれてもいる。反面やっぱり可愛い、好きだという気持ちも拭えない。それでも私に罪悪感は芽生えていない。踏み込んだのも悩むのも自己責任だ。

ただ、これから私達はどうなって行くんだろう。

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