終焉

まゆ

公開日｜2022.12.11

更新日｜2022.12.11

私達はこれから、どうなって行くんだろう。そんな事を少し前に書いたが、終わりは案外あっけなく訪れた。師走、仕事が忙しいダイキは疲れ気味で「会いたい気持ちはあるのに、疲れて会えない」と言う。そして代わりに「動画撮影して送ってよ、顔も映して。それ見て抜きたい」とも。一人の処理にすら私を求めてくれるのは嬉しいが、私が顔まで映す動画を撮影し送る事のリスクを、彼はまるで理解していない。

旦那と子供が二人いる私が、ダイキに顔まで映した卑猥な動画を送るリスク。リベンジポルノのタネを自ら送りたいはずがない。そんな事すら理解せず、ダイキは送れとしつこい。はっきり理由を言って断れば「俺がそんな事すると思ってるの！？そんなに信用無いの？」と激怒するはず。

季節柄もあるが、子供が「サンタクロースが来るまで寝ないで起きてる！実物見てやる。ママも隣にずっといて！一緒に来るとこ見て」と騒いでいるのを困りながら見ている時と同じ気持ちになった。サンタは私なの、あなたに起きていられたら私がサンタになって枕元にプレゼントを置けない。でも理由が言えない。

そんな事を思いながら誤魔化していたが、ダイキは我が儘なので自分の要求は100％飲むまでしつこい。あまりにしつこいので私も苛立ち「別れた時、腹いせにあなたにばら蒔かれたくないから撮らないの。それくらい分かって」と言ってしまった。想定していた通りの激昂、想定していた通りの罵倒が返り、やがて「そんなに俺が信用出来ないならもういい」という言葉を最後にLINEが途絶えた。

いつもなら一時間も持たず「お前は最低」「むかつく」「消えろ」と小学生のようなLINEが来るが、二日音沙汰がない。こんな事は初めてで、ああ、私達は別れたんだと段々実感した。いつも好きになり過ぎないよう意識していたし、嫌な部分も多くてのめり込む事もそもそも無かった。第一ダイキは自分の妻に気を使い、不倫が発覚するのを何より恐れていた。互いに自分の家庭が一番だから、別れる時もあっさりしたもの。

ただ、実際別れてみると寂しい。何度もセックスを重ねれば情が沸くし仲の良い時もあったから。今は必死に「以前の普通の生活に戻るだけ、これが普通」と自分に言い聞かせている。これでもう、朝も夜ものべつまくなしに電話で話させられ、あっちの都合の良い時に呼び出され、機嫌の悪い向こうの気が済むまで喧嘩に付き合う、一人増えた子供の世話から解放される。そう思うように努めている。

ダイキと別れても、私は次の人を求めない。私は常に男が側に居ないと居られないタイプじゃない、自分を女とも認識しなくなった旦那に囲われたまま死にたくなかっただけ。一生に一回、旦那以外に求めて貰い自分が“女”である自信が欲しくて、ダイキは私を強く求め母から女に戻してくれた。だから感謝しかない。そして自信を持てたし思い出も出来たので、もう生涯不倫はしない。私はダイキと短い間でも付き合った思い出だけを抱え、残りの人生を生きて行けるから。ズルズル付き合い続けて発覚するより、これで良かったのだとも思う。

加齢で太り始めたたるんだ体、何の魅力もない私を激しく求めてくれて、自分が絶対する事が無いと思っていた不倫という冒険に連れ出してくれたダイキに、私は一生感謝するし彼を忘れない。

ただ、ダイキと付き合うようになり私は幾分綺麗になった。肌や髪のケアをし服装も気を使い、ダイエットして痩せた。不倫をして得られたものは女としての自信もだけど、自分を綺麗に保とうという気持ちを再び持てた事。今後は誰からも愛される事が無いこの体だけど、磨いて行きたい。

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