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女側
まゆ
公開日|2023.07.16
更新日|2023.07.16
ダイキから一週間ぶりに電話が掛かって来た。取らずにおくが間髪置かずにしつこく着信が来て、5回目の着信でうんざりしながら出る事に。第一声は「そろそろ戻る気になった?」だった。もう戻る気は無い。月二回、電車でわざわざ出向いて行ってもやる事をやったら冷たく突き放され、また期間が空いたら「会いたい、抱きたくてたまらない」とLINEで連呼。こちらが用事があって都合が付かなければ機嫌が悪くなり罵倒され、挙げ句の果てにはスワッピングや3Pまでしつこく誘われる。嫌気がさす度半ば泣き脅しのようなしつこい復縁の要求に答えて来たが…もう限界だ。前の電話で怒鳴られた事も大きい。絶対そのうち手が出るようにもなるはず。「戻る気はありません、何もかも言う事聞いて来たけどもう本当に無理」そう返すと機嫌が悪くなったダイキから「まだ言ってるのかよ、いい加減にしろよ!じゃあいいんだな!?本当に別れても!だったら切れよもう!」と返った。お望み通りに、電話を切り大きくため息を付いた。
私達はセックスの相性は良かった、ダイキは私の中の具合を誰よりも絶賛してくれたし、私もまたダイキのサイズもテクも最高に感じ、何もかも吸い付くようにぴったりだった。ただ致命的に、私達は性格が合わなかった。旦那もモラハラ野郎だがダイキは下手したらそれ以上、相手にNOは絶対言わせず、少しでも思い通りにならなければ激怒と罵倒が返り付き合い当初から辟易していた。一年弱性欲処理に付き合ったのだから、充分尽くしたはず。もう言いなりになりたくない。
ダイキは私に、機嫌の良い時はとにかく好き、愛してると繰り返す。それに絆され私も一時期はダイキをかなり本気で好きだった。ただどんなに好いても冷酷な扱いや短気からの八つ当たりを繰り返され、今となっては好意もほぼ無くなった。女は一度本気で冷めると戻らない。原始の時代から一生に出産出来る子供の数に限りがある女は、より良い遺伝子を残す為に一度男を見限ると切り替えが早く出来るように本能に組み込まれているから。
ダイキに会う以外他に用も無かった町だし、もうあの駅で降りる事も無いな…そんな事を考え少し寂しいような気持ちになるが、付き合い続ける事の面倒さがはるかに上回り、別れて正解だったと自分に言い聞かせる。代わりに自分の中で、あきさんが気になる比重が大きくなっていた。
そうは言っても不倫の関係、本気になればロクな事が無い。そこは好きにはなり過ぎないようにセーブしながら。ただあきさんの場合あちらは独身、あちら側から発覚し、私が配偶者から慰謝料請求などをされる事が無いのはダイキとの大きな違い。関係を続けても私側が発覚しなければ問題は無い。
そして私側といえば…旦那は土日はパチンコか寝ているかのどちらか、息子二人は友達と遊びに出掛けており、誰も私を気に掛けない。どこで何をしようがどうでもいいと思われている事は、普通であれば耐え難い寂しさに苛まれるが、不倫している身であればこれ程有難い事はない。時期的にも旦那に「今までは子育てに追われていたし、子供達だけを置いて私だけ出掛けるわけには行かなかったから15年どこにも行かなかった。でも子供達が手が少し離れたから、女友達と遊ぶ時間を持ちたい」と言い本当に女友達とよく出掛けるようになった矢先に不倫が始まったので、男性に会う用を女友達との遊びの中にうまく紛れさせる事が出来ている。
旦那はモラハラ野郎だが行動を縛らない、私の事はどうでもいいので興味を示さないから束縛も無いのだ。今まで二度程、出掛けると言い玄関を出た後旦那がどんな行動をしているか見張った事がある。寝ている間に出掛けた時と土曜に。怪しんでいるなら寝たふりをして私を出掛けさせ、後を追ったりGPSを確認するはずだから。わざと確認しやすいようリビングの窓に薄いカーテンのみ引き、外からリビングのソファーで飲むだけ飲んで腹を出して寝る旦那をしばし見張ったが、起きる様子は一向に無かった。別日は旦那が起きている最中に出掛けたが、その時はテレビを見て笑っていた。見せかけかも知れない、しばらくしたら行動したりするかな…そう思いながら車の影に隠れるように時折通行人に怪しまれぬようスマホでメッセージを打つふりをしながらしばらく見ていたが、やがて旦那は冷蔵庫からビールを出してきたので私も出掛ける事に。やはり15年全く怪しい行動が無かった事と、急に色気付いてアクセサリーや服装を華やかにしたりの行動=子供の手が離れ、女同士の交流を再開したから。と取っている故だろう。
そして前にも書いたが、女側の不倫は男側の不倫よりはるかに発覚しにくい。嘘は女の方がより巧妙に上手に付けるし、どんな場面であろうが表情にも言動にも出さずしれっと振る舞えるから。そして男の数倍、振る舞いにも気を付ける。女側の不倫が発覚する時は、その女が迂闊な場合が多い。人目に付く近場で会ったり昼間に会ったり、ご近所や職場など狭いコミュニティの中で付き合ったり、ロックも掛けないスマホに証拠をたくさん残したり。
互いの家が会いたくてもすぐには会えない距離、既存の人間関係の中で付き合わない、会うのはせいぜい月二回、スマホの中身は常にクリアに。そんな自らに課したルールを守りながら、息子は彼女や友達と遊びに出掛け旦那はパチンコに出掛けた夜、私も夜の闇に紛れて家を出る。
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