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線引き
なみ 女性
公開日|2023.11.17
更新日|2023.11.17
私の不安をよそに、その後もシュウからは毎日、朝昼晩の連絡がきた。
「大好き」なんて送ってくることはなくなったし、「おやすみ」もほとんど無くなって「おはよう、寝落ちしてた…」みたいな事が大半になったけど。
数ヶ月、毎日やりとりしているわけだし、少しトーンダウンしても不思議では無いし、1泊の前から実際に仕事は忙しくなっている様子だったけど…
あの1泊の後での変化に、多少警戒されているんだろうな…とは感じた。
私達は、あくまでも都合のいい関係。
大好きだけど、線引きはある。
相手の妻や彼に影響がないようにすることが、私達の関係が始まる時の、最初の約束。
勿論、そこは私もブレていないけど。
「愛してる」なんてうっかり言ってしまった私が暴走して「離婚して!」「私と結婚して!」などと無茶を言い出したりしないか、不安なのだろう。
かつての浮気相手にそうやって度々追い詰められたことも、実際にあったらしいし。
もし逆の立場なら、私も不安になると思う。
今の生活を壊したくない気持ち、それはお互い様なのだ。
生活のパートナーを好きとか好きじゃないとか……そんな簡単な話ではない。
結婚しているシュウも、14年も同棲している私も。
だから、私もLINEで「大好き」なんて打たないようにした。
シュウを愛しているけど、シュウに私だけを愛してもらえなきゃ嫌なわけじゃない。
シュウが私と一緒に居る時間を幸せだなと思えて、私の存在がシュウの生活の張りになれるなら、続けたい。
そうじゃなくなったら、私は好きでも、もう終わらなきゃ……
そう思った。
1泊をする前から「この日は午後からフリーだから、都合がつくなら会いたい」と伝えていた日も、シュウは忙しそうで疲れている様子だったし、無理かなと半分諦めてたけど、都合つけて会いに来てくれた。
お昼を食べに行ったお店で「コロッケそばがメニューに書いてない、食べたかったのに…」とガッカリしたり「あ!トッピングでつけれるんだ!食べれるじゃん!やったー!」と喜んだりする私を見て、ケタケタ笑ってて。
食べてる間も、ニコニコ、いつもの幸せそうな目で見つめてきた。
ご飯を済ませてホテルに行って、お酒を呑みながら話して、笑って、くっついて、触れ合って…見つめ合って、何度も口づけて。
「大好き」と囁き合って、じっくりねっとり抱き合う時間はいつもと変わらなかったし、ホテルを出る時に「飯食いに行った時、なみ、すっげー喜んでたな」て思い出し笑いしながら、キスしてくれて。
私と会う時間、セックス以外も含めて楽しく感じてくれるんだな…と嬉しかった。
翌週、急に彼氏から「呑んで泊まるから今夜は帰らない」と連絡がきた日があった。
急に言われても会えないだろうし…ちょっと迷ったけど、ダメ元でシュウにそれを伝えると「今、出張から帰るところだし、呑みたい!」と会いに来てくれた。
居酒屋で閉店まで呑んで、沢山話して。
店を出て、駅の方に歩きながら「シュウ、今日は何時までいいの?」と尋ねた。
「俺は何時まででも大丈夫、何なら泊まりでも」
「泊まりでもいいの?本当に?」
「うん。…どうする?」
「…じゃあ、泊まろ」
「いいよ」
全然そんなつもりはなかったから、1泊するような用意は何もしていなかったけど…
せっかくのチャンスを逃したくなくて。
「ホテル行く前に、ちょっと買い物しよっか」
閉店前のスーパーで軽くお酒とおつまみを買って、ホテルまで手を繋いで歩く。
こんなささやかな事が「幸せだな」と思えるのは、相手がシュウだから。
ホテルでまったり呑んでいたら酔いが回ってきて「眠くなってきたぁ」と寝ころんだ私に「まだ寝ちゃダメ、せっかく会ってるんだから」って乗っかってきて。
「いっぱい会いたい」って甘えた声で言うから「私も」って答えてキスした。
シュウの「会いたい」が性欲処理だけだとしても、構わない。
こんなに「女に生まれて良かったな」と思えることがあるんだな……と自分でも驚くほど、シュウに抱かれる事が幸せ。
出張帰りで疲れていることはわかっているし、「たっぷりゆっくり寝かせてあげたい」と思いつつも…シュウは1泊できることに盛り上がっていたようで、ソファーでも、お風呂でも、ベッドでも…じっくりねっとり愛してくれて。
私もついつい、いつも以上に求めてしまって…
夜更かしした上に、朝から2回も抱き合って、お互いすっかり寝不足に陥った。
「ごめんね、疲れてるしゆっくり寝かせてあげたいのに…また寝不足にさせちゃった」
「いいんだ、気持ちよかったし、朝からできたし…幸せ♡」
「うん…私も幸せだった♡」
そんなLINEのやり取りをしながら、シュウとの時間を反芻する。
シュウはきっともう気持ちを切り替えて、仕事や家族の事を考えているだろう。
それでいい。
シュウが毎日を過ごしていく中で、私との時間が時折味わえる癒しだったりスパイスだったりになれているなら、私達はまだ続けていけるような気がするから。
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