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Arrogance
まゆ
公開日|2024.01.10
更新日|2024.01.14
車内で一度関係を持った翌日から、トモアキから来るLINEはかなり横柄な口調になった。「すげえ感じてたな」「また欲しくなってるんじゃない?」など自分のテクニックの自慢も山と来る。少し鬱陶しいと感じながらも適当に返答する一方、やすからのメッセージも入りはするが会わない日々は続行中。次会うのは再来週のどこか…と非常に曖昧な約束はしてあるが、それもどうなるかは分からない。「異動後の職場はストレスが半減されてるよ」というメッセージに「ストレス発散に私と付き合ってたんだから、ならもう私がいる必要無いね」一旦そう打ち送信し、すぐ消す。が、消す前に通知をプルダウンして見ていたのかすぐに「まゆに会いたくて仕方ない」と慌てるように即返った。会う時間なら一ヶ月半もの間に二時間くらいは作れたはず。その時間も割いて貰えず、こちらの気持ちが離れかけているのも伝わってしまった。もう、クリスマス辺りの幸せな交際には戻れないだろう。
本気で好きになったのに、持ったのは半年。ダイキとは一年。長続きしないのは私がきっと悪いのだろう。仕事中もため息が多くなり気分も更に落ちる中、トモアキからは「今夜会わない?」と誘うメッセージが来た。半ば自暴自棄で「いいよ」と返す。
以前も思ったが、トモアキは私服が派手め。EvisuのジーパンにSTUSSYのパーカー、赤のスニーカーに右の耳には二つのピアス、ツーブロックの髪型。顔そのものは若く見えるが、タトゥーもあり全体の印象がいかつく目立つので隣り合って歩くと人目に付きやすい。知り合いに一緒にいる所を見られたくないので「スタバでも寄る?」という誘いに「ドライブスルーなら」と返した。コールドブリューの入ったカップを持ちながらホテルに入り、カップを置くなりトモアキが私の履いていたマキシスカートをめくり上げた。「やだ」と苦笑するとスカートの中に手を伸ばしながら「だってもうすげぇ興奮してて、我慢出来ないから」と言い私の手を取り股関に誘導した。すでに硬くなっているのを確かめさせると、ジーパンを下ろして勃起したものを見せ付ける。私が触る間トモアキは私の着ている服を脱がせ、裸になったらベッドへ。
改めて見るトモアキのペニスは、去年の夏に会っていたアキと形が似ている。亀頭が大きく細長く、硬さが凄い。実は私はこの形のペニスが凄く相性が良い。長さがある分子宮近くの狭い場所にも容易に届くし、硬さがあるので突く力も強く、挿入時凄く気持ちいい。事実トモアキのペニスも騎乗位で下から突かれてもバックで突かれても、深く抉られるような強い快感が来て私はすぐに絶頂してしまった。そして私は、実は一番感じる体位は松葉崩し。なぜかアキもだったがトモアキも、こちらが言わずとも「松葉崩し好き?」と言い私に施す。体を捻った状態で激しく突かれると、我慢した末に失禁するような、痺れるような感覚が膣に広がりすぐに達する。トモアキはそれだけでなく、私が今までした事のない体位もしてきた。俗に言う“寝バック”という体位で、私をうつ伏せに寝かせ足を閉じさせ、トモアキが上に乗り挿入する。ペニスの長さがある程度なくては出来ない体位だがトモアキは難なくこなし、伏せる私の肩にキスをして「やっぱ濡れやすいんだな、音いやらしい」と煽った。
結局断りきれずに応じたが、寂しさは解消されない。好きな人に相手にされない寂しさは、好きな人でしか解消はされないのだ。分かっていたのに誘いに乗り体の欲求は解消されたが心は満たされぬまま、また経験人数が増えただけ。
射精後「ポルチオ、当たると痛がる女もいるけどまゆは痛がらないな」「痛くないどころか気持ちいいもん」など隣り合って寝転び会話し、きりの良い所でシャワーに行き身なりを整える。
ホテルを出ると空気が湿っていた。これから雨が来るらしい。「また会ってくれる?」運転するトモアキに言われたが「あまり深みにはまらない方がいいよ」とまた煮えきらぬ返事をしてしまった。体の相性は悪くはないが、継続して会う気はやっぱり無い。
「俺、担当エリアが変わってまゆの会社に行かなくなるんだよ。逆に会いやすくなるだろ?」
それを聞いた時、私に過ったのは『会いやすい』ではなく『切りやすい』だった。「だとしても、あまり頻繁には会わないよ」そう返すと「なんだよ、俺達もう付き合ってるのに?」と返り、正直うんざりしてしまった。
帰る途中、雨脚が強まりトモアキの車のフロントガラスに雪混じりの雨が当たり出す。代わりの男に抱かれようが、満たされない気持ちは埋まらない。トモアキも一般的に見て、悪い男ではない。ファッションも気を使っているし顔もやや童顔で可愛く、セックスも上手い。でも好きになれるかと言われたら…ピンと来ない。
そんな逢瀬の数日後、トモアキとのメッセージのやりとり中仕事に呼ばれ、戻って来てスマホを見ると
「俺、会話の最中いきなり返信無くなるの大嫌いなんだよ。離れます、くらい入れてから仕事戻って?嫌なら別れてもいいんだよ?」
などと、勘違いの極みのような内容のメッセージが入っていた。別れる?泣いて「捨てないで!」とでも返ると思ったのだろう。思惑と違って申し訳ないが縋らない。詳しい年齢は聞いていないが、私より若いのは確かで35歳くらいだとは思っていた。にしてはまるで高校生のような幼い内容だ。
「急に仕事に呼ばれる事くらいいくらでもあるはず、それにいつもはこれからお風呂とか寝るとか、離席の理由を必ず言ってる。たった一回言えなかっただけで怒るような人は嫌かな。終わりでいいよ」
そう返すと「本当にいいのかよ」とも。
「どうせもう会社で会う事無いもん」
「そりゃそうだけど」
そんなやりとりのついでに、嘘もつく。
「私も仕事変えるから、会いたくてこの会社に来ても居ないよ」
「は?今の会社辞めるの?」
「前から会社には伝えてたから」
「隠してたのかよ」
「もうすぐ立ち去る環境だからあなたと気軽に寝られたの。じゃなかったらしてない」
「会社変わっても付き合い続けてよ」
「小さい事で怒る人は嫌だから、さよなら」
トモアキの担当する運送エリアが変わりうちの会社に出入りしなくなる上、私が会社に居なくなるというハッタリを信じたトモアキは私を探さない。接点は無くなりすぐに諦めるはず。多少付き合いたい気持ちもあったのだろうけど、トモアキはハント(狩り)が好きな人間。車内で半ば強引にしただけでは飽き足りなかったが、一度ちゃんと抱いて征服出来たら満足し、あまりしつこくは追わないはず。容姿も悪くなく相手ならいくらでも見つかるだろうし本人もその自覚があるので、多分私に執着しない。
トモアキは切りやすかったが、やはりもう自分の生活圏で出会う人間との不倫は二度とすまい。周囲にバレるリスクが高過ぎる。これは単に私が下手だから。自分の性格上仕事場やPTAなどで顔を合わせる間柄の人間とは、周囲に露見する事なく関係を続ける自信が無い。だが、現行している人達の気持ちも痛い程分かる。誰とどこで出会い恋愛関係になってしまうか分からないのが不倫。むしろマッチングアプリが普及した今でも、出会いは近場な方が圧倒的に多いと思う。
それが遊びではなく双方に好意がある恋愛なら、自分も同罪を背負った者としてどうか露見する事なく続いて欲しい。略奪はお薦めしない、伴侶や子供など罪なき人達を悲しませるのはタブーだと思っているから。そうでないなら、あまりに嫌な事や辛い事が多すぎるこの日常に少しの秘密…月に一回か二回、数時間ほどの喜びのある生活をする事は人生の希望になる。ご家族、奥方様から奪うのではなく
お借りするだけ。
その恋は、ないよりある方が断然生きる張り合いになる。
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