【ポリアモリー】同棲して激変した、彼の嫉妬心

きのコ

きのコ

公開日|2022.09.01

更新日|2022.09.01

マサと一緒に暮らしはじめた頃のお話。

九州と関東で、遠距離恋愛でお付き合いを始めた私たち。付き合い始めた当初から、マサは「東京に出たい。きのコさんと一緒に暮らしたい」と言っていた。
でも、正直私は、同棲というライフスタイルにはちょっと抵抗をもっていた。

「せっかくポリアモリーとして、オープンに他の人たちともデートしたり、幸せな毎日が始まったのに、一緒に暮らし始めたら他の人たちと会いづらくならないだろうか。マサくんから遊びに行くことを禁じられたり、束縛されたりしないかなぁ。そもそも同棲するなら、彼の仕事やお金の面がきちんとしていないといけないな…」

そう思った私は、一緒に住むにあたって彼に条件を出した。

「もし本当に一緒に暮らしたいなら、こちらでの転職先を見つけてから来て。ただし、正社員じゃないとダメ。こちらに来るまでの期限は1年。1年以内に転職できなかったら、関東に来るのはもちろん自由だけど、同棲はしない、ということにしたいの」

今思えば、関東には旅行でしか訪れたことがなく、転職に繋がる人脈もコネもない、そもそも転職活動をするのも初めてという彼にとって、厳しい条件だったかもしれない。

それからは、彼と一緒に転職サイトに登録して仕事を探したり、履歴書を添削したり、ビデオ通話で面接の練習相手になったりと、転職活動を応援する毎日が始まった。
彼は九州で働きつつ、多い時は毎月のように休日を使って関東に来て、転職のための面接を受ける日々。金銭的にも時間的にも、大変な苦労だったと思う。

結局、彼が転職先を見つけて私の家に引っ越してきたのは、お付き合いを始めてからあと数日で1年という、まさにギリギリのタイミングだった。
1年という期限を譲らなかった私のために、本当に頑張ってくれたマサ。

「この人なら信頼できる。2人暮らしも、きっとうまくいく…!」

そんな期待に胸が熱くなった。

そして、いよいよ始まった2人暮らし。
一緒に起きて、一緒に朝ごはんを食べて、お互いの会社に出勤。夜は2人でカレーを作ったり、お酒を飲みながら映画を観たり。

楽しい日々だったけど、一方で私は、少しずつ息苦しさを感じるようになっていた。
合意の上で始めた同棲生活とはいえ、自由気ままな1人暮らしが突然終わりを迎えてしまったことは事実。彼と過ごすのも楽しいけれど、時には自分だけの時間もほしいし、他の人たちとのデートもしたい、友達とも遊びたい。デートのあと「泊まりに来る?」と気軽に誘えなくなったことにもストレスがつのっていった。

時おり他の人とデートに出かけて、ハッピーなほろ酔い気分で家に帰ると、マサは不機嫌な顔をして待っている。「帰りが遅い」と文句を言われてケンカになることもあった。
この頃の彼にはまだ「一緒に暮らせばきのコさんは自分のものになるし、他の人と付き合うこともなくなるだろう」という気持ちがあったそうだ。
私は、マサのことは愛しているけれど、嫉妬や依存を向けられたり、自分の自由が制限されることはやはり苦しかった。
私が好意を寄せてよくデートを重ねていた知り合いの1人から、「同棲が1ヶ月続かない方にディナーを賭ける」と笑えない冗談を言われたのもこの頃。

「こんな窮屈な生活、いつまで続くのだろう。やっぱり、ポリアモリーの私には1人だけと同棲って向いてないのかなぁ…」

2人暮らしを始めて数週間後には、私はまるでマリッジブルーのように、憂鬱な溜息ばかりつくようになっていた。
今から思えば、彼は関東に来たばかりで私以外に知り合いもなく、九州にいた頃と同じように「私と過ごす以外に何もすることがない」状態にまた陥りかけていたのだ。

そんな息詰まる暮らしを少しずつ落ち着かせていくきっかけを作ってくれたのが、SNS上での彼と私の共通の知人たちだった。
ネット上でポリアモリーであることをカミングアウトしていた私にはポリアモリーの当事者やアライ(理解者)の知り合いも多く、彼らは私の考え方や気持ちをある程度理解してくれていた。彼はそんな「きのコ以外のポリアモリー当事者やアライ」の人々と話したり、ポリアモリーである私と付き合う上での悩みを相談したりしていく中で、次第に、自分の中にある嫉妬心や独占欲と向き合ったり、「恋愛ってこうあるべき」という価値観が唯一絶対の正しいものではない、と考えるようになっていったそうだ。

やがて、デートにイベントにとひっきりなしに出かけて飛び回っている私に、彼も時折ついて来るようになった。たとえば友人の住むシェアハウスでのカレーパーティーだったり、小さなお店を貸し切っての誕生日会だったり、LGBTフレンドリーなカフェでのオフ会だったり。
こういった場でポリアモリーだけでなくさまざまなセクシャリティをもつ人々と出会い、徐々に知り合いが増えていくにつれて、彼は私について来るばかりではなく、単独で私の友人たちとも会ったり遊んだりするようになっていった。そして、私がどれだけ他の人たちを好きになったりデートしたりしていても、マサから気持ちが離れていくわけではないことを、彼は私との生活の中で少しずつ実感して安心し、私との絆を深め、信頼関係を強くしていったのだ。

そうやって私と同じように彼も友達と飲みに出かけたり、終電で帰ったりと関東での生活を楽しむようになるにつれて、少しずつ言い争いも減り、生活は次第に平穏なものになっていった。
そんな中で、私にはマサ以外にも恋人ができたり、時に別れたり。一番多くて、4人の恋人ができたこともあった。「同棲が1ヶ月続かない方にディナーを賭ける」と知り合いに冗談を言われたあの頃から、気がつけば1年あまりが経っていた。

そんなある日、私はマサに「実は、僕にも他に恋人ができた」と打ち明けられたのだ。

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