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美しい人妻❤︎ vol.8 苦しさと寂しさが募るだけ
mucchi
公開日|2024.11.30
更新日|2024.12.02
転勤するか…
私たちの関係の将来についてM子と話したことがあります。M子は「すぐには無理かも知れないけど、もしかしたら、将来、状況が変わって上手くいくかも知れないと思っている。」と、想像できるでしょう?みたいな語調で、そんなことを言っていました。お互い家庭を持っていて、しかもM子には小さい子供がいて、一体どうやって?と、その時の私は想像出来ないでいました。要するに、いずれ私が離婚することを期待していて、子供はいずれ自立し、そうすればM子自身も離婚して、私との関係をしっかりとしたものにできると。そういうことを言いたかったのかも知れません。今ごろになって分かったような気がします。
M子と付き合い始めてから1年経ったころ、私は転勤の希望を出しました。ひと通りの業務に慣れ、物足りなさを感じていたからです。仕事でもっと上を目指すためには仕方ないと思いました。ただ、M子とのこともあり、通える範囲で希望したため、そうそう転勤とはならないのではないかとも思っていました。このことをM子に話すと、あり得ないくらいの勢いで責められました。実は、M子自身は勤務年数が長かったため、そろそろ転勤しなければならず、同一市内での希望を出していたのですが、それと同じようなものなのに、なぜ責められなければならないのか、意外な反応に戸惑いました。私が大した年数も経っていないのに、まさか自ら転勤の希望を出すとは思っていなかったのでしょう。お互い転勤したとしても、職場が変わるだけで会えない訳ではないということを訴えその場を収めましたが、M子は納得出来ない様子でした。
私にとってM子は、元々は高嶺の花のような存在だったため、若干の引け目を感じていましたし、また、私との関係を持ってしまっている事実があるだけに、どうしても、尻軽女的な不安を抱くこともありました。ただ、私の転勤話に、こんなにもショックを受けて、私がいなくなるかも知れないことに不安を抱くM子をの様子を見て、私への気持を感じ少し安心し、M子を悲しませたくない気持が湧いてきました。
私が悪いと思う
その後、意外にも私に転勤の打診がありました。ただ、市内ではなく、日常的にはM子と会えないくらい遠く離れた場所への転勤でした。上司からは「断っても構わないし、むしろ、出来れば断って残って欲しい」と言われました。そして、この打診のことをM子に話しました。「どうして?断るよね。別に受ける必要ないし、Tならもっと良いところに必ず転勤できる。それに、左遷のような場所だと思う。」とM子に転勤を断るよう迫られました。
少し田舎になるため、都会暮らしに拘る人は嫌かも知れませんが、明らかに格上の職場で、仕事のやり甲斐や、その後のキャリアを考えると悪い話ではないと思いました。一方で、M子の言うとおり、この打診を断っても1年後には、もっと格上の職場への転勤の可能性も十分にあると思ったのと、やはり、M子とこれまでのようには会えなくなることを考え悩みました。
その週末、私が個人的な用事のため列車に乗っている最中に、M子からメールが届きました。「妊娠した」と。この時点でほぼ嘘だと思いましたし、後日、M子の服装や持ち物を観察して生理が来たことを確信しました。でも否定はせずに話を合わせていました。
妊娠のこと、離婚を迫っていること。私がM子との関係を続けようとするその気持を確かめるのと同時に、私に裏切られたとの思いからくる仕返しの手段のつもりなのだろうと思いました。ただ、M子には、私に期待する気持があったのでしょう。それまでと同じように、私との時間を作り、体の関係も持ち続けました。
私は、自分の家庭を捨てる覚悟は全くできていませんでした。ただ、満たされない寂しさをずっと持ち続けていて、それを解決するのを半ば諦めていたところに、M子と気持が通じ合い、M子がその寂しさを埋めてくれていました。気持の上では、決してM子は、それだけの存在ではありませんが、第三者が見れば、現実の立場は寂しさを紛らす程度の存在でしかなく、転勤という不安定な要因により、M子は大きな不安を抱き、私に失望したのかも知れません。
転勤してから
転勤してからは、メール、電話、それから古典的ですが、職場宛に手紙を出してやり取りしました。転勤してから1ヶ月も経たないで、M子に会いました。M子は悩んでいるようでした。別れた方がいいのではないかと。でも、この時は私との関係を続けようと気持を強く持ち直したようで、久しぶりに体を求め合いました。
実は、この少し前に「おなかの子は流れてしまった」と連絡がありましたが、そもそも妊娠していないので、作り話だと思いながら話を合わせていました。そんなことがあった直後に、私とセックスをすること自体に無理がありますし、M子も私が気付いているのを分かっていて一緒に演じていたのだと思います。それから数週間後、「好きな人ができたの。」と、電話でM子が言ったことがありました。でも、あまりにも唐突で、ただ言ってみただけ感が伝わってきて、そんな風に言えば私と別れられるのではないかと思って言ったものの、M子自身、別れる決心がつかないでいる様子でした。遠く離れたまま、関係を続けるのが辛いと言っていたような記憶があります。その後のやり取りは忘れてしまいましたが、ある日、M子からの手紙が届き「もう別れたい」との内容が書かれていました。ショックでした。
苦しみは続く
1年間くらいはとても苦しみました。純粋に別れたショックと、他の男に走ったのではないかという嫉妬の気持や、そもそもこの期間、他の男のことを察しさせずに上手く私と別れようとしていたのではないかという殆ど根拠のない疑いの気持がない交ぜになり、普通の精神状態ではいられませんでした。時間がその気持を和らげてくれるのを待つしかありませんでした。寂しさを紛らせたい気持から、新しい職場の若い独身の女の子と親しくなったのですが、その子が、これ見よがしに妻の前で私と親しそうにしたことがあり、妻から釘をさされ、完全に気持が萎えてしまい、その子とは距離を置くようになってしまいました。気を紛らすことも出来ず、ただ悶え苦しみ、耐えるしかありませんでした。
別れて7年経ったくらいの頃だったと思いますが、M子が転勤していった職場の一室で催される会議に行くことが何度かありました。M子に会うことは避けましたが、2回ほどお菓子を入れた封筒を受付経由で渡したことがありました。「ありがとう」のひと言だったと思いますが、M子からメールが届き、まだ気持が繋がっているような気がして、一瞬嬉しく思い、その直後、堪らない寂しさを感じていました。
別れてちょうど10年経って「ごめん。さっき間違ってメール送ってしまった。」と、誤送信を装ってメールを送ったことがありました。「大丈夫です。」そんな返信だったと思います。無視はされないだろうと予想はしていましたが、本当に返信が来てホッとしました。そして、思い切って「会えないか?」と送ってみました。「10年も経って何故?10年前、あなたにとって私は必要ないんだと思った。あなたはきっと今、少し気持が弱っているだけだと思う。」それきり、受信拒否のリストに入れられたのか、アドレス変更してしまったのか、彼女へメールを送信出来なくなってしまいました。電話は通話可能かも知れませんが、話をする自信もなく掛けていません。目も耳も塞がれてしまったような孤独感に耐えるしかないと思い気が遠くなりました。
今でも、私がM子を思う気持はあまり変わっていないかも知れません。未だに、あの男との裏切り行為を疑い、苦しくなることがあります。夢の中では、彼女とかつてのように過ごすこともあります。今となっては、私が一方的に思っているだけで、M子は私のことなど思い出すことは無いのだろうと、寂しいですが、そう思っています。
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